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#5 / 二度目の方が恥ずかしかった模様


カラオケボックスの中の湿度を測ったらまずい事になっているかもしれない。

僕は教室の中であんなことをされた、してしまったにも関わらず緊張していた。

「恵も一緒に居たら捗るかしら。」

「何が!?」

「私たちが行為に及んでいるところを彼女に観察させて、彼女をいじめるような行為よ。」

ただのAVだそれは。

「そんな下品なことを考えていたのか。ある意味馬鹿だったんだな。」

「それはそうだけれど。恵しか居なさそうだもの。」

「それって、どう言う意味だ?」

「朝倉立夏ハーレムのことよ。」

「そんなのを作ってどうするつもりなんだ。最終的に僕は殺されそうだろ。」

「そうね。」

と言うより、彼女は気が乗らないのか椅子に座ったまま考えごとをしていた。

外から見たら、カラオケボックスの中にいるのに雑談だけしている人たちに見える。いや、実際にその通りだが。

「恵と立夏がどうしたら、上手く事に及べるかしら。」

「何言ってんだ?」

普通に何言ってんだこの人は。

成績がいいはずなのに頭がおかしい。

「大体、女の子としてそんな状況に至る事に抵抗を感じないのか?」

て言うか、ヒロインの一人がハーレムを推奨する時点でおかしいのだが。

「人口の心配とかしている割に、考えていることは低俗的なんだな。」

「そうね。」

「・・・なぁ。梓ってもしかして別に日本の人口がどうなっても興味なかったりするか?」

「よく分かったわね。その高い知能指数に称賛を感じるわ。」

今日はやけに嫌味・・と言うかあまり変な気を起こす気配がなかった。

「えっと。一つ聞いていいか?」

「何かしら。」

「どうして、教室で。突然キスをしたのか。」

「言わなかったかしら。」

「本当の理由は・・?」

「・・・それは分からないわね。」

適当に誤魔化そうとしていないだろうか。

「ハーレムの可能性だって。どっちにしろ主人公によるものね。突然女の子が目の前でスカートをめくったり、あるいは裸を見られた後に決闘を持ちかけたり、あるいは東大合格の約束をしてみたり、あるいは魔法先生という理由で女子寮に同居してみたり。」

もしかして梓はハーレムものが好きなんだろうか。

「えっと。つまり?」

「・・・・・でも、あれは性欲を健全な意味で追求しただけで・・。別に恋愛なんてあまりしていないじゃない。」

一部ちゃんと恋愛結婚してるんだが!?

「もし他のヒロインが他の男性にとられたら。私は燃えるけど他人は分からないわね。貴方はどうかしら。」

「こんな場所でそんな質問に答えたくない・・。カラオケにきた理由がそんな後ろめたい話を僕とすることだったのか?」

「私、歌を歌うのが下手なのよ。」

「・・・・・。」

「貴方が歌っているところならみてみたいわね。」

「・・・・・。」

「そうね。ここにアニソンの特選があるけれど。どれにしたい?」

「それ一部歌うのが恥ずかしいのないか?というか話をずらすな。」

「カラオケ、したくないの?」

「梓が先にやってくれ。」

「嫌よ。」

「ハーレムは容認するのに歌うのは嫌なのか・・。というか、他の男性にヒロイン取られた妄想をしたことあるのか。」

「そうね。同人誌として書き起こしてみようかしら。」

「お前は鬼か・・。」

「特に男性に人気のあるヒロインを、一番絡んで欲しくない男にやらせたくなる・・。」

「気持ちわるっ!?恵がなんでお前のことが好きなのか分からないぞそれ・・!?」

「そうやって他の男性ファンに嫌がらせするのが、当時中学生の崇高な趣味だった。」

「最悪だ!」

「ハーレム物の妄想なんてまだマシな方じゃない?あんなご都合展開で編成されたハーレム要員にそこまで感情移入できないもの。」

「ハーレム好きなくせに自分で全否定するな・・。」

「だから・・そこで私は矛先を変えてみたいのだけれど。」

「矛先?」

「だから。女の子しかいないような世界とか・・?」

「妄想としてはハーレムの方がひどくないか・・?で、お前はなにをしたいんだ?」

「そうね。単純に言えば、他人が恋愛をしたがる理由がわからないから。こうして実験的に他人を弄んでいることかしら。」

ラスボスが最後のステージで自白するような、そんなメッセージを聞かなくてはいけない僕はなんだろうか。

「他人が恋愛をしたがる。でも恋愛なんてできない。できない理由は人それぞれだけれど。結局誰もできないのだから夢なんて見ない方がいいじゃない?」

「僕にあんなことをしたのは、嫌がらせのためか?」

「いいえ。純粋に、男の子に詰め寄ってキスしたらどうなるか試したかっただけよ。思いのほかうまくいったけれど・・。」

「恋愛感情はなかったのか。」

「男と一緒よ。性欲は満たせたけど、恋愛感情はまだわからないわね。」

「・・・。」

それはある意味、喜んでいいことなんだろうか。

「じゃぁ、僕じゃなくてもいい事になるな。」

「突然なにを言っているのかしらね。貴方はそこまで仲の良い男友達がいなかったから、そこまで拡散されにくいと思っただけだし。何より・・。」

「何より?」

「何でもないわ。しゃべることが無くなってきて、変なことを言ったわね。」

いや、最初から十分に変だと思う。変態という意味で変だ。



その後、僕は梓になんとか歌わせることに成功した。

まさか、本当に音痴だとは思わなかったが。音がずれるというか、ジャイアンとは違う意味で絶望的だった。

テンポがまず合ってない。その絶望的に合ってない歌は、そもそも歌にすらなっていないのだった。

ジャイアンとか、一線越えればある意味デスボイスに聞こえるからな。

「さて。どうしましょうか。」

「疲れた・・。」

テンポがズレまくるという意味での音痴を修復する方法は分からなかったため、カラオケはしばらく行かない事にした。

「もう夜だからな。妹が待っている。」

「そう。」

「えぇと。他に何かあるのか?」

「貴方は、本当は私に何かしたいことはあるんでしょう?」

「・・・・。」

「そういうのも、私は確かめたい。」

「恋愛がしてみたいのなら、最初からそう言えばいいんじゃないか。」

「本当なら、恵も巻き込んでみたかったけれど。」

だからなんでそんなに恵を巻き込みたがるんだろうか。

恵から吐きそうになったとか、もしまた教室でやったら本当に階段から叩き落とすとか言われているのに。

「お別れ、程度でいいんだな。」

「そうね。むしろ逆に恥ずかしいけれど。」

突っ込みどころの多い言動は無視したほうがいいだろう。

僕は雨の中、梓とキスをした。

確かに、梓のいう通り別の意味で恥ずかしい行為に感じたが。

梓に取っても、実際のところは前より緊張しているのかもしれない。

「また明日ね。」

そう言って、梓は自分が帰る方向へ去っていった。


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