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#3 / 恵は悪いとは思っていない模様


夢を見ている。教室の中、薄暗い場所で僕と梓は二人っきりだった。

「ねぇ、エロいことしよう?」

椅子に座っている僕の前で、梓は制服を脱ぎ出す。

あらわになった肌が近くまで近づいてくる。

理由とか理屈など関係なしに、僕と梓はキスをしていた。僕は彼女の柔らかい胸に触っていて、梓の手が僕の下半身に伸びていた。

こんな状況があっていいはずがないのに、こうしたことを考えていいのだろうか。

教室の中でだらしない行為を行う光景を、僕は幻視していた。

明らかに普通ではない光景。公然猥褻的なそのビジュアルを朝、どういうわけか考えてしまっていた。

それこそ意味がわからない。

そんな卑猥な行為を思いついた時点で、僕もまた頭の悪い人間の一人なんだと思う。


校門の前、僕は梓と出会った。

流石に緊張するが、そもそもあんなことをして噂になったりしないんだろうか。

「お、おはよう。」

「おはよう。立夏くん。」

「えぇと。」

なんて喋った方がいいのか分からない。

朝あんな夢を見たせいで、まともに見れる状況ではなかった。

「梓ちゃん。おはよう。」

「恵。今日は早いのね。」

「毎朝遅刻してられないものね。」

「そう。」

「・・・・」

その恵は、僕と一瞬目があった。

「えぇと。」

「まぁいいか。何も話題ないし。」

そんなことを突然言って、彼女はすぐに去っていった。

「僕を、睨んでいたように見えたけど。何かしたかな。」

「別にいいんじゃないかしら。」

何がいいんだろうか。


昼、僕は自動販売機のところまで移動していた。

何を買おうとしていたか考えているところで、その恵とばったり出会う。

「あ。」

「ゲッ・・・・」

妖怪を見たかのような表情だった。

「えっと。取り込み中だったか?」

「別に。悩んでいただけだし。」

「・・・・・。」

「先に買ったら?」

「レディーファーストは?」

「中にゴキブリが入ってたら困るじゃない。」

「うーん?」

まぁ、そういう事故は発生する可能性はなくもないけど。

とりあえず、僕は先にジュースを買う事にした。

そして。

「うわっ、いた!?」

「え、いやぁ!!?」

「なんて。」

「は、はぁ!?馬鹿にしてるわけ!?」

ふむ。効果はあったようだ。

「全く。・・・ねぇ、貴方。」

「え?」

「・・・・・教室の中で梓とやってたでしょう?」

「・・・・・。」

「いつから付き合ってたの?」

難しい問題になってしまった。

「まぁ、えぇと。それは企業秘密という事で。」

「梓が前から男と付き合ってたなんて思えないし。貴方にそんな魅力があると思えないし。」

「悪かったな。」

「貴方、梓に何かしたんじゃないでしょうね。」

「何もしていない。」

「そう?気持ち悪いと思わないのかしらね。全く。」

「・・・・。」

「・・・・もう一度聞くけど、付き合ってるの?」

「それは、分からない。」

「はぁ?」

「梓に直接聞いた方がいいと思う。」

「・・・それは無理よ。」

「なんで。」

「だ、だって。まるで私が未練あるみたいじゃない。」

「未練って、誰に?」

「そうね。いっそのこと梓を奪った責任を取ってもら会うかしら。」

「だ、誰から誰を?」

「そ、それは・・だから。私が中学生時代に、梓に告ったのに返事されてないの知らないでしょう?」

衝撃的な発言を口にしたが、そもそも中学は別なので知っているわけがない。

「なんで、よりにもよって貴方なんかと。私を差し置いて・・!」

「・・・・・・。」

「い、いい?もし梓を泣かしたら私が貴方を線路に突き落とすんだから!!」

その地獄みたいな発言をして、彼女は逃げて去っていった。

「うーん。」

難しすぎる。

というか、なぜ梓は告白の返事をしていないのだろうか。それはそれで謎ではあった。



梓は部活なので、帰宅部である僕は適当にうろついていた。

適当にうろついているところで、また九条恵と出会ってしまうのは何かの間違いだと思いたかったが。

「・・・何よ。」

「コンビニの雑誌を長時間見ているのが気になって。」

「新手のナンパ?警察呼ぶわよ。」

「いやいや。そもそもクラスメイトだよね。」

「クラスメイトだからって気安くしないでくれる?」

明らかに警戒している様子だった。

「どうせ、梓とエッチなことできたから私もハーレム要因に入れられるって思ってるんじゃない?」

「お前は僕の妹か・・・・。」

「はぁ?」

自信過剰な発言も大概にしないとかなり痛い目を見そうだった。

「実際のところお互いに暇そうだし。」

「ゲームとかしていれば?」

「残念だが、ゲームは妹が独占している最中だからな。大体、家が狭いから微妙なものしか遊べないんだよ。」

「それは残念ね。」

「・・・・。」

「一人暮らしになったら適当にPS5なり遊べるんじゃない?」

未発売のゲーム機をよくも語れるなこいつは。実はものすごくやりたがってるんじゃないか?

「あれもかなり見た目がでかいから、置くところに困るな。」

「縦置きにしてテレビの隅に置けばいいでしょう?」

「それだと暑くなりすぎじゃないか?」

「なるほど。そういう住宅だから分からないのか。」

嫌味な言い方だった。

「・・・・なぁ。一つ聞いていいか?」

「ナンパ以外ならね。」

「お前は女の子が好きなのか?」

「どういう意味?」

「つまり、れずなのか?」

「違うわ。」

意味が分からない。

「梓のことが好きだったのよ。」

「・・・・・。」

そして恥ずかしくなってきた。これは流石に脳が痒い!

「梓のことが好きだったのに、返事はなし。つまり振られたってことかしら。残念な人生ね。私。」

「中学生には愛が重すぎる。」

いや、高校生にもだけど。流石に梓に同情してしまう。

「いっそのこと、あの光景を見た後に貴方を後ろから刺し殺そうかと思っていたわ。」

「・・・・・。」

「でも、梓があんたなんかとキスしているところを見て、ものすごく気持ち悪かった。」

雑誌を読みながら喋っているので、目はそもそも合っていない。

ただ、彼女の胸中が分からないほど僕は馬鹿じゃない。

「僕が逆の立場だったら同じことを思うよ。」

「そうね。私の一方的な逆恨みと憎悪で貴方を殺したら、世界中の男を殺して回らないといけなくなるし。」

「なんでやねん。」

「でも、仕方がないじゃない。気持ち悪いもの。」

「ん?」

この場合どういう意味なのかよく分からない。僕が梓にキスされたところを見て、どっちを気持ち悪いと思っていたのか。僕と梓の両方を気持ち悪いと思っていたのか。

「えっと。もしかして潔癖症だったりするのか?」

「違うわ。」

「生理的に僕が無理ならいいんだけど。」

「突然リアルで他人があんなことをしているところを見たらこうなるじゃない。」

14歳の女の子かこいつは。精神年齢が美亜とほぼ同じなんじゃないか。

「女の子同士だったらお前は、大丈夫だったのか?」

「え?それは・・・わか、らないけど。」

こいつは純粋に恋愛に対して夢を見すぎるタイプだった。

ある一種の、動物的な嫌悪感に耐えられない心の弱さというか。そんな女の子特有の虚弱さを今もまだ持っている感じ。

むしろ僕と今まで会話できていたのが不思議なレベルで彼女は不安定だった。

「・・・・。」

ここはまず、離れた方がいいんだろうか。

そう思っていたとき、二人ほどの女子高生が突然現れる。

「あー恵っち発見。ここで油売ってたんだ。」

派手な格好をした女子高生だった。

「げ、なんで来るのよ!」

「暇そうにしてるんだから一緒に遊ぼうよ。もしかしてこっちのは彼氏?

「「違います」」

ハモってしまった。

「そう。別に仲良さそうでもないし。とりあえず、美亜、これからカラオケ行こうよ。」

「なんでよ。」

「中学の友達なのか?」

「そうでーす。とりあえず、美亜のこと借りていい?」

「そうだな。もうそろそろ限界だったから好きにしていいよ。」

「はぁ!?なんでいきなり見捨てるわけ!?」

「そんなことだろうと思ったわ。美亜、とりあえず10曲歌おう。」

「私は別にそんな歌唱力いらないわよ!誰か助けてー!」

突然現れた恵の中学生時代の友人たちによって拉致された事で僕は助かった。

「しかし・・。」

そんなことだろうと思ったわって、一体どういう意味なんだろうか。

「ということは、梓のことも知ってそうだけど。」

恵の中学生時代の友人のことは置いておいて、僕は揚げ鶏を買って帰宅する事にした。

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