最弱スキル・外れスキルが無双しようとする世界でスキル「勇者」「聖剣使い」の俺は「ざまぁ」に狙われる
「やばい!『外れ』の【アイテムボックス】持ちだ!逃げるぞ!」
「ま・待つのじゃ!置いていくな!」
大量の水がアイテムボックスから引き出され、
洪水が押し寄せてくるダンジョンの通路を駆け下りる。
「おおお・おぬし!【勇者】なんじゃろ!?【聖剣】でどうにかならんのかっ!」
「聖剣で大量の水をどうしろってんだよぉ!切っても流されるだけだ!お前こそ凍らせたりできないのか!?」
「そそそ・そうじゃな!――青から白へ眠り繋げよ!【氷結】!!」
ピキピキピキッ!
角の生えた褐色の肌を持つ少女が魔法を唱えると、押し寄せてきた水が凍っていき道すべてを覆う氷によって封鎖され、押し寄せてきた水を止める事に成功する。
「短縮魔法でこれか!流石は【魔王】さまの【大魔法】だな!」
「ふ…ふはっふははは!どうじゃっ!これが妾の力なのじゃ!崇めるがいい!褒めるがいい!頭撫でるがよい!」
少女は平たい胸をこれでもかとのけぞらせて氷の壁に向かって高笑いをした。
「ふはーっはっはっは!妾にかかればこの…」
そして目の前の氷の壁が一瞬にして消え去り目の前には大量の水、水、水
「…程度のわあああああがぼごもがぼも!」
「あの野郎!氷の壁を【アイテムボックス】に収納しやがったのか!?反則だろ!?」
少女が水に飲まれ、波に翻弄される無人島の砂浜のまな板のように水流にもみくちゃにされ、スカートはひっくり返りリボンとフリルの付いた三角形の白い布が褐色とのコントラストを生み出していたが見てる暇は無い。
「はぁっ!【聖剣】っ【乱撃】!」
坂になっているダンジョンの通路を駆け下りつつ道中の魔物を細切れにしていく、
そのままだと濁流に巻き込んだ巨大な質量が少女に当たるからだ。
「あびゃぁ!臓物が口に!ごぼがぼがも!!」
……巨大な質量が少女に当たるからだ。
「……見えたっ…9層」
魔物を切り裂きつつ9層に飛び込み、
ダンジョンの奥であるのに空が広がる草原地帯の丘に駆け上る。
ここなら水の勢いも分散される、走ってきていたのはここに向かっていたのだ。
決して水の来ない方に逃げていただけではない。
「のじゃぁぁぁ!」
草原の大地から生えた門から大量の水が草原に流れ込んでくると同時に少女も門から吐き出された。
「のじゃぁぁ…」
臓物まみれで目が死んでる少女が水に浮かび流されてやってくる。
外見は整っている美少女なのであるが臓物まみれの美少女はただのホラーである。
ホラー少女は臓物を角に刺したまま流されてきた。
「狭い所での【アイテムボックス】は凶悪すぎるな……ここで迎え撃つしかないぞ、早く戦闘準備をするんだ!」
「わかっておるのじゃ……目が回って……うごぁっ!?」
バシャバシャと立ち上がろうと水面を叩いていた少女だったが、
草原地帯に流れ込んだ水が一瞬にして消え、浮いていた体が落下し運悪くそこにあった石に後頭部を打ち付けて悶絶していた。
―――――――――――――――――――――
「スキル」
それは個人個人が持つ特別な力。
【治癒力向上】なら自然治癒力が上がり、傷や病気の回復も早く、
【怪力】なら少女であっても大人の戦士よりも力強く、
【猫の寵愛】なら猫に好かれる等である。
そんなスキルにて人々はスキルを使い魔物と戦い、開拓し、ダンジョンに潜り繁栄してきたが、人々はスキルだけに頼っては生きては居なかった。
【猫の寵愛】持ちだからといって人々に好かれる王になれない事もなく、
【怪力】持ちであろうが文字を教える教師として尊敬されたり、
【治癒力向上】だからと冬の町を全裸で走り回っていた男は風邪を引いて死んだ。
そんな世界である時、人々は世界が震える感覚を味わった、
地震でもなく火山の噴火でも無いが世界が何かの世界とぶつかった感覚を世界の人々は感じたのだった。
だが天変地異もなく年月が立つ頃には皆気にしなくなっていった。
そして唐突に『最弱スキル』『外れスキル』と、
自分のスキルを卑下する者達が世界中に現れたのだ。
自ら最弱・外れと卑下する者達に周囲の人々は困惑した。
使えないと思えば使わなければいいのだ、卑下する意味が分からなかったのである。
だが自ら『最弱』『外れ』と言い出した者達はそのままでは終わらなかった。
【錬金術】のスキル持ちは自らハズレスキルと言いながら危険なまでに効力の強いポーションを作り出し、大怪我をしても治癒ポーションで即座に回復、能力向上ポーションで戦い、爆破ポーションで大爆発を起こして鉱山ごと魔物の巣を崩壊させてレベルを上げた。
【テイマー】のスキル持ちは自ら最弱スキルと言いながら、魔物を大量にテイムして戦った。
テイムする魔物は日々増え続け、移動するだけで森の資源を食い荒らすほどの集団を作り出しレベルを上げた。
【アイテムボックス】のスキル持ちは自ら最弱の外れスキルと言いながら桁違いの物資をアイテムボックスに収納できるが為に税を払わずに大量の物資の運搬・密輸による販売を行い金を荒稼ぎしては多くの商人を廃業に追い込んだ。
敵対者の武器を収納することで戦闘力を奪い、大量の池の水を収納し池の生物を皆殺しにして収穫、大岩を収納し相手の頭上に取り出して潰すなどの環境・質量攻撃で大暴れしレベルを上げた。
それら『最弱』『外れ』と言い出した者達は加減を知らずに暴れ続けた。
ダンジョンや森での乱獲による食物連鎖の破壊や資源の枯渇を引き起こしたり、
力を誇示して作った異種族ハーレムにより大量に産まれた子孫達はハーフによる種族問題に財産を奪い合う骨肉の争いによって戦乱を引き起こしていた。
冒険者ギルドや国家は『最弱』『外れ』スキルと言う無法者を「モンスター認定」することになった。
人類でありながらも力に魅入られ【最弱外れ】と呼ばれるモンスター人類。
「モンスター認定」された【最弱外れ】達は多くの犠牲を払いつつも討伐されていったが、【最弱外れ】も自らが狩られない様に隠れることを始めたのだった。
時はさらに流れ……
【最弱外れ】になりやすい者は特定の行動を取る事が分かったのであった……
―――――――――――――――――――――
水の無くなったダンジョン9層の草原の門から1人の男が現れる。
ダンジョンアタックでは動きの鈍るロングコートを着ており、ベルトが大量にロングコートに付いているがロングコートを開いたままなのでベルトがブラブラと大量に垂れ下がっている。機動力と防御力下がるんじゃないかと言う装備である。
(ファッションは……ありえないな……おそらく魔法付与された装備だろう……)
(…………ファッションじゃないよな?)
肌がピリピリするほどの悪意を向けられている為、聖剣を構えたまま一挙一投足を見逃さない様に集中しようとしたが…
「おごぉぉぉ……なのじゃぁぁ……」
少女が頭を抱えて白い三角形と褐色のおヘソを丸見えにしながらブリッジ悶絶してビクンビクンしていたので集中はブチブチと切られていた。
ズンッ!!
一瞬にして自分の周囲に影がさし、上を確認することなく影の無い場所に走り込むと先程までに居た場所に巨大な氷の柱が地響きを鳴らし落ちていた。
(さっき凍らせた通路の氷かっ!)
回避後にも複数の質量を頭上に感じ素早く回避すると、巨大な岩、建物、瓦礫
巨大な筋肉石像、巨大な筋肉石像、巨大な筋肉石像って筋肉多いなっ!
ズドン!ズドン!と連続して落ちてくる物体を回避していくが、
少女との距離を離した所で質量攻撃は止まり、ロングコートの男が口を開く。
「さすが最強スキルの【勇者】!早い早い!逃げる姿は滑稽だけどな!聖剣は…収納できないか……おっとっ危ない」
パチパチと手を叩きながら称賛を口にしてはいるが、
目は見下しているロングコートの男が話を続けようとした所…
横から現れた巨大な炎の竜がロングコートの男を焼き尽くそうと迫る。
だが男の目の前で炎の竜が熱の残滓もなく消えた。
「ちぃ…なのじゃ……炎も収納できるとはチートもいいとこじゃの……」
三角へそ出しブリッジから復活した少女が忌々しげにロングコートの男を睨む。
「お転婆だな魔王の娘ちゃんはー!襲われたのをボコって返り討ちからの強い!子種ください!でのハーレム入りはお約束だからいいんだけどね!」
「襲ってきてるのはお前さんの方じゃのうに…キモいのぅ…【最弱外れ】は魔王や娘に執着するというのは本当なのじゃなぁ……」
少女はやれやれと首を振ってため息をはく、
なんてことなく会話しているようだが握った拳が震えているのが遠目にも分かる。
「ところで勇者はレベルはいくつなんだい?」
「……」
「あっ言わなくて結構だ、俺は『最弱』スキルの【鑑定】もあるからな」
じゃあ聞くなよと言いたいのを我慢する【最弱外れ】は自分が絶対だ。
年長者だろうと師匠だろうと貴族だろうが王族でも空気読まないで問題になる事が
【最弱外れ】に多数見られたらしい。そして……
「レベル60!!凄い凄い!高いな!さすがは勇者様だ!魔王ちゃんは40なんだね!だけどな…」
ロングコートの男がニヤリと口元を歪めて両腕を広げて言う。
「俺はレベル99なんだよ!」
少女が目を見開く、顔色がどんどん悪くなっていく。
レベル差が30以上になると勝ち目がほぼ無いと知っているのだ。
ロングコートの男は何もかも楽しそうに【最弱外れ】の特定の行動の一つを言う。
「ねえ、どんな気持ち?勇者様!?『最強』のスキル【勇者】が『外れ』スキルに負ける気分は!?」
「お前が連れている魔王ちゃんは俺のハーレムに入るんだぜ!ざまぁ!ざまぁ!」
何が楽しいのかロングコートの男は高らかに笑う、これが特定の行動の一つ。
『勇者』を見つけると攻撃性がさらに上がり凶悪になるという
そして「ざまぁ!」と勇者に言う強迫観念に囚われる。
―――――――――――――――――――――
研究者達は
「それまでの歴史に存在していない単語・言い回しが突然使われるようになった」
「チートの元の意味が分からないがチートという言葉が何故か理解出来る」
「のじゃロリ狐ババアいいよね!」「いい…」「ロリって意味わからんがわかる」
「その事から異世界と衝突し概念が流れ込んで来ている可能性が高い」
「言葉の概念や悪意の概念がこちらの世界に流れたと考えられる」
「混ざった結果が『最弱』『外れ』と言いながら強力なスキルを行使する矛盾だ」
「勇者への執着は異常だ」「"ざまぁ"とはスッキリするという概念のはず」
「異世界では勇者は倒すべき悪の一つという概念があるかもしれない」
「この世界ではスキルは個人を決める者ではないのだがな……」
「だから相反する理と理で捻じれしまい人ならざるモンスターになるのだろう」
―――――――――――――――――――――
「お前が連れている魔王ちゃんは俺のハーレムに入るんだぜ!ざまぁ!ざまぁ!」
「に・逃げよ勇者!妾の事は大丈夫じゃ!!」
少女が叫ぶ、涙目で震えながらもこちらを心配する余裕なんてないのに。
このダンジョン探索中に偶然出会い【勇者】だから【魔王】であると感じ取れた、それは少女の方もそうなんだろう。
お互いの興味心と警戒心で共に行動しただけの数時間しかたってない関係だ。
「魔王」とこちらが呼んで、あちらが「勇者」と呼ぶ、
まだ名前も名乗り合ってない関係だ。
だけれど心配してくれる姿だけで決意が決まる自分はちょろいのだろう。
「悪いがざまぁはさせねぇよ!【勇者】だからな!俺は!」
グンッ!と宣言後に回避した時の速度を超える速さで飛ぶ
一瞬でロングコートの男に肉薄し聖剣を横薙ぎに一閃。
【アイテムボックス】から瞬時に取り出した剣を握っている、
ロングコートの男は余裕の笑みを浮かべ同じ体勢を取り一閃。
「勇者ざまぁ!」
…―――――ドサッ
少女は目が合う、地面に倒れる半身だけとなったモノとではなく。
聖剣を持ったまさしく【勇者】と―――
「まさかあのレベル差で勝つとは思わんかったのじゃぁ…あんな余裕があるなら最初からやって欲しいのじゃがー!じゃがー!」
少女がジト目で文句を言う、自分はいいから逃げろと覚悟決めて自己犠牲を見せたのにアッサリ倒してしまったのだ。少女は詐欺にあった気分である。
「あー、俺のレベルは60だから実際にあのままでは勝ち目は無かったんだよ…」
「なぬっ!?」「も・もしかして愛の力とかそういうヤツかの!?」
少女が体をクネらせながら頬に手を当てて冗談めかして笑う。
「愛の力かなぁ?あー、そういうのでもあるのか?」
「ふわーっふ!?」
少女は謎の奇声を出して固まった、顔が赤く染まっていくのが分かる。
おかしい、この勇者と出会ってまだ数時間である。愛とかなんとかこれが一目惚れというやつなのだろうか?少女は こ ん ら ん している
「お前も関係者になったから言うが【勇者】スキルは発動条件がある」
「ふみっ!?」
「俺は『親愛してる姫を救う為にのみ発動可能』で効果は『レベルの倍加』だ」
「親愛……姫……救う……」
「お前が俺を救おうとした事、俺がお前のその行動に親しみを感じた事、魔王の娘である姫である事、救おうと思った事があの時点で【勇者】の発動トリガーだったんだ。」
少女はそれを聞き物凄く複雑な心境らしく顔をして言う。
「なんともメチャクチャな発動条件じゃのう……いや、レベル倍加というトンでも能力ならそれもまた有りかの……?いやいやっ条件さえ分かってるなら……?」
「そして救えなければ肉体が爆発四散して死ぬ」
「はぇ?」
「爆発四散して死ぬ」
「ばくはつ しさん」
「爆発四散」
「…」
「………」
「…………………」
「………なななななんじゃのそりゃーーーーーーーーーーー!!!」
少女は平たい胸をのけぞり大声でダンジョンの草原で空に吠えた。
「ぜぇ…ぜぇ…なのじゃ…ぜぇ…」
吠えるだけ吠えて肩で息をする少女の肩に自分の上着を脱いで着せる。
「な・なんじゃ?妾は別に寒くないぞ?水も全部収納されていたようじゃしの」
「気づいて無かったか……知ってて気にしないタイプなのかと思いたかった……」
視線は下げず少女に向かって指を下に向ける、少女は下を向く…
そこには信じられないことに…
スカートが有るべき場所に無く、白い三角形の布だけが見えていた。
ブリッジしたり自己犠牲を見せてカッコつけてた時にはもう無かったのだ。
「のじゃーーーーーーーーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
少女は平たい胸をのけぞり大声でダンジョンの草原で空に再度吠えた。
―――――――――――――――――――――
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシ
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシ
ゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシゲシ
魔王に足を蹴られている。
「レベル差あるからそんなに痛くないけど、そろそろ許してくれないか?」
ゲシ…ゲシゲシ…ゲシ…ゲシ…
回数が減った。陳情を聞いてくれる魔王様だ。圧政しない良い魔王だ。
あの後はスカートが平原にポツンとあったので魔王が履こうとしたら、
【最弱外れ】の【アイテムボックス】から今まで溜め込んだものがどんどん溢れ出てきてしまい。炎の竜やらマグマやら各種武器や危険なものが連鎖大爆発したりしたので全力でダンジョンを脱出したのだ。
スカートはく前の魔王様をお姫様だっこしてである。
上着と腕でガードしていたから道中の冒険者には見えてないと説明したが、宿に入ってスカート履き直して出てきた後からはずっとこれだ。
「……わかっておるのじゃがな……じゃがな~~…うう……」
ゲシ…… ゲシ……
「ギルドにも事情は説明して通ったから明日には報酬金が入るだろう。ダンジョン9層付近にはしばらく入れないだろうけどな」
空気を変えようと話題をそらす、冒険者ギルドは【最弱外れ】の事で色々と騒ぎになっていた。
貯水池の水の消滅や宿屋や宝石店の建物ごと消滅、山のない場所での土砂崩れや、神殿の大石像が全て盗まれた等の被害が続いていたらしい。
「……ううむ、そうかのぅ他の冒険者達には悪い気もするが……」
「悪いのは襲ってきたアイツであり手当り次第に収納してた【アイテムボックス】のせいだから気にするな」
白い三角形の事も気にするなと心の中で思う。
ゲシッ!
すみません。
「…」
「…」
お互いに何も言わずに街の噴水前に付く、ふと少女の纏う魔力が消えたと思ったら、少女は姿勢を整えてスカートをつまみ小さな礼をする。
「此度は私を助けて頂きありがとうございました勇者様、魔王グラディアスが娘クーレリア・メギネウス・ラ・マクギネが心からの感謝を」
勇者はクーレリアの前に騎士のように片膝をつき言葉を繋げる。
「勇者クロウ・リシッツァ、光栄の極みであります」
「…」
「………」
「………ぷっ」
「………くっ」
「「あはははははっ!」」
魔王クーレリアは平たい胸をそらしながら笑う。
勇者クロウは膝を突きながら笑う。
「世話になったの!さらばじゃ!」
クーレリアは腰まである美しい銀髪をバサリときらめかせ後ろを向き去っていく。
【召喚】スキルを持つ【最弱外れ】に魔族の領地とは最も離れた土地に召喚されてしまった自分は強制契約されかけた…。
召喚した【最弱外れ】の股間を即座に蹴り飛ばして「ロリコンがおるのじゃー!」と叫んだ所、冒険者や衛兵がなだれ込んで来てロリコンがボコボコにされている隙に逃げてきた。
衛兵は「いつかやるんじゃないかと思っていたんだ!ロリコン死すべし!慈悲はなし!」と叫んでいた。マークされていたようだ。
そして魔族の領地である暗黒大陸に帰る為の路銀を集めるためにダンジョンに潜った所【勇者】と【最弱外れ】に遭遇してしまった。
【魔王】を持つ自分と一緒にいては【勇者】を持つクロウも多く狙われる事になる。ここで分かれるのが懸命だ、出会ったばかりなのだ。赤の他人なのだと振り向く事はない。
たった一日の勇者と魔王の小さな出会いと別れの冒険であった。
―――――――――――――――――――――
「…」
「暗黒大陸に向かうにはまずここの大陸最北端に向かわないと行けない」
「………」
「報酬金があるから最北端までは困らないが、どこかでダンジョンに行って船の代金を稼ぐ必要があるな」
「…………………」
「レベルも多少上げておいた方がいいな、レベル99は例外過ぎたがレベル50の【魔王】ならば殆どの【最弱外れ】からはなんとか逃げられるだろうし」
「……………………………………のぅお主や」
「なんだ?」
「さらば言うたじゃろ?」
クーレリアはなんとも言えない複雑な気持ちでクロウに問う。
別れの挨拶した翌日にこんにちわである。しかも付いてくる。カッコつけたのにまたカッコつかなかったのである。
「そうは言ってもな、俺も爆発四散はしたくないわけだ」
「うぬ?」
「『親愛してる姫を救う為にのみ発動』だからな、クーレリアはまだ救われてないだろう?暗黒大陸で親御さんに出会って安心して心から救われたとでも思わなければ…」
「ばくはつしさんするのじゃ?」
「そうだ、爆発四散する」
しかめっ面になったクーレリアは思う。
恩人を爆発四散させるわけにもいかない。
クロウとこのまま一緒に暗黒大陸へ向かうしかないのだ。
しかめっ面を維持しようとするがニヤけ付く口元が止まらない。
「くふふっ、しかたがないのう勇者さまは」
「ああ、しかたがないんだ魔王さま」
――――勇者と魔王は暗黒大陸へと向けて歩きだす。
――――道中、悪徳商人を成敗したり。盗賊のアジトを潰したり。
――――【最弱外れ】にならないように苦しむ中二病の少女を助けたり。
――――筋肉神殿の像のモデル(筋肉を盛られる)にならないかと誘われたり。
――――魔王(父)と勇者が殴り合ったりする。
――――『勇者と魔王の物語』
クロウ・リシッツァ:18歳 スキルの制限が問題有りすぎて、【勇者】を使わなくていいように黙々とレベルを上げていた。クーレリアが色々巻き込まれるせいでいつか爆発四散しそうで怖い。
クーレリア・メギネウス・ラ・マクギネ:13歳 魔王の娘だが魔族の王であって親は【魔王】を持っていない、別大陸で1人ぼっちなので安全の為に【魔王】を常時発動させているが、【魔王】パッシブ効果「のじゃ喋り(無自覚)」になってる事は気づいていない。悪運。
スキル【勇者】:世界に数人は持つスキル、勇気あるもの、発動するとレベル倍加。親愛してる真に困窮している姫を救う為にのみ発動可能、発動して救えなければ爆発四散するデメリットが付く。
(救う対象・制限は勇者によって異なる)
スキル【聖剣使い】:聖剣を作り出し聖剣技を使う事が出来る、聖剣は本人の手から生えてるので奪えないし落とさない。聖剣はほのかに光ってるので夜は非常に目立つ的になるが光の軌道がカッコイイと評判はいい。
スキル【魔王】:世界に数人は持つスキル、魔を纏うもの、発動中【大魔法】が付く、発動中は耐久が超上昇(防御力ではない)、喋り方が魔王らしく威厳がつく(無自覚)、発動制限無し。
(能力・制限は魔王によって異なる)
スキル【大魔法】:魔法の威力が全て大出力魔法になる【魔王】発動中に自動発動するが、全てであるので生活魔法で家が燃える、身体強化は常にアクセル全開で吹っ飛ぶ。
魔王に手加減という言葉は無いのだ、手加減できないという言葉は有る。
最終手段は身体強化と結界による『魔王ちゃんひき逃げアタック』あいては死ぬ。魔王は壁に埋まる。
勇者が活躍するお話とのじゃロリ書きたかったのです。
ざまぁ作品も最弱からの成り上がりも好きですがこういう世界もあるかもしれない、メタにメタな世界があるかもしれませんな異世界で頑張る勇者。