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前編

初めてハイファンタジーのジャンルに投稿します。

宜しくお願い致します。

※誤字は見つけ次第、訂正しております。

我がサリタン王国では魔物の氾濫が相次ぎ、神殿の神官達や冒険者に始まり魔法師団や騎士団を投入しても、その被害は防ぎ切れなくなっていた。

被害が拡大し疲弊していく一方の国内に危機感を抱いた陛下は、王立魔法師団の団長を筆頭に古い文献を掘り起こさせ150年振りとなる聖女召喚を行う事になる。

その立会人となったのが、第一王子である私ことアルフレッド・ザラ・サリタンだった。

王城の広間、20人以上の魔法師が魔法陣を囲み仰々しい呪文を唱えていく。

20分程経った頃だろうか、魔法師達に疲労が見え始めた辺りで大理石の床に大きく描かれた魔法陣が青白く輝き出す。


『おぉ…』


周囲に待機していた騎士達からも、驚きの声が上がる。

魔法陣からの青白い光が一際強く輝き広間に居る人間の視界を奪うと、やがて光は弱くなって消え去った。

眩しさで目が痛かったが何とか魔法陣を見やれば、その中心には長く黒い髪を低い位置で一つに結び、黒い足首までを隠す侍女服のようなワンピースを着た一人の女性が立っていた。


『わぁぁああぁぁ!!!』


私がその人を認識したと同時に、広間にも歓声が広がる。

あぁ…成功したのだと、私の体へも歓喜から震えが走った。

私が声を掛けようと一歩前に進み出れば、女性もニッコリとした笑みを浮かべ私の方へと体を向ける。


「おやおや、随分熱烈な歓迎を受けるものなんですねぇ。お初にお目に掛かります、わたくし聖女専門人材派遣会社ホーリースタッフ営業担当ヤマカワと申します。この度は弊社をご利用頂きまして、誠に有難う御座います。どういった聖女の方をご希望でしょうか?」


「…は?」


あまりの驚きで変な声が出た。

それも仕方ないではなかろうか…

彼女は私の目の前まで近付くと、キッチリ15度のお辞儀をしながら視線は私と合わせたままで、小さな長方形を紙を両手で差し出したのだから。

この女性、今何と言ったのだ…?

周りも、あまりにも場違いな程に冷静且つ事務的な彼女の姿と声に固まっている。


「おや?こちらはサリタン王国では?もしや、弊社の手違いでしょうか?それとも、御社の中で連絡が行き違いになっておりますか?」


彼女もこちらの反応に違和感を覚えたのか小さな紙を胸ポケットへ仕舞うと、代わりに眼鏡を取り出し手に持っていた分厚い紙束をペラペラと捲り出す。

そんな紙束、さっきまで持っていただろうか…?

だが、これ以上の動揺を見せる訳にはいかないと、私は呼吸を整えて女性の疑問に口を開く。


「いや、サリタン王国で合っている。連絡の行き違いとは…?」


「あぁ!合っていたなら何よりです。以前の聖女召喚ですが、150年前で御座いますね?その時は聖女の方と直接雇用契約を結ばれたと。わたくしは前任のサリタン王国担当より、聖女召喚にありがちなトラブルが発生したと伺っております。ですので、今回の召喚時は弊社をご利用頂く契約になっていたのですが…そのご様子では、ご存知ないようですねぇ。如何致しましょうか…?」


「ちょ、ちょっと待って頂けるだろうか!?直接雇用契約…?魔法師団長!その様な文献は残っていたか!?!?」


彼女の少し困ったような表情と事務的な淀みない声で語られる内容に、頭が余計に混乱する。

周りまで、ザワザワとし始めてしまった。

慌てて魔法師団長へ確認を取る。


「い、いえ!その様な文献は見ておりません、殿下。ただ、古い文献でしたので…その方が嘘を付いていると言う確証も…御座いません」


真っ青な顔で弱々しく答える魔法師団長を少し哀れに思ってしまう。

彼らは少ない文献で、ここまでの成果を挙げたではないかと。

藁にもすがる思いで命令を下したのは陛下なのだ。

ならば、その責任は息子であり王族の私が背負うべきではないか。


「相分かった。其方達魔法師団は、あの少ない文献から良くやってくれた。ここから先は、私が私の責任で話しを進めよう」


「えぇと、わたくしも『殿下』とお呼びしても?もしでしたら、ご確認頂いた上で再度わたくしから伺わせて頂く事も可能です。御社からしましたら、今のわたくしは得体の知れない人間でしょうから」


こちらの混乱を気遣うような彼女の言葉にハッとなる。

こちらの都合で召喚しておいて、意味が分からないから出直せ等言える訳がなく、こちらこそ彼女を気遣う側ではないかと!


「いや!気遣わせてすまない、ヤマカワ殿。それに、貴女は名乗ってくれたにも関わらず、私は名も名乗っておらなかった。私はアルフレッド・ザラ・サリタン、この国の第一王子だ。申し訳ないのだが、この国には当時の文献が殆ど残っていないのだ。貴女さえ良ければ、当時の記録を教えてはくれないか?」


「では、やはり殿下と。それと、わたくしの事はヤマカワで結構で御座います。御社にお時間を頂けるのでしたら、是非お話しをさせて頂きたく存じます」


ニッコリと笑う彼女から了承を得られ、まずはホッとした。

しかし、人材派遣会社とは何だろうか?

疑問ばかりが増え思考の渦に飲まれかけるが、そうではないと思い直す。

まずは皆を休ませ、彼女から話しを聞こうと。


「いや、頼むのはこちらの方だ。感謝する、ヤマカワ殿。まずは、ここに居る皆を休ませたい。その後、私の執務室へと移動して頂きたいのだが良いだろうか?」


「勿論で御座ます、殿下。では、わたくしは皆様が移動される間に資料を準備させて頂きますね」


彼女の返答を受けた私は、皆に労いの言葉を掛けて解散させる。

そうして、また何処からか増えた紙束を抱える彼女を私の執務室へと護衛騎士と共に案内した。

作者は、営業経験も派遣経験もないまま書いております。

おかしな所があれば教えて頂けると幸いです。

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