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手紙

作者: 黒土 計

夕暮れに黄昏る部屋で1人。親子3人で暮したアノ頃を懐かしみながら母親として。愛する息子に向けて書く手紙。どうぞ私の気持ちがアノ子に伝わりますように。

隆さんに、こんなに長い手紙を書くのは初めての事ですね。


お父さんが亡くなって


早いもので、もう8年です。


今は1人で住むには広く感じるこの家の


柱の線をアナタは憶えてますか?


5月5日の日に毎年付けたあなたの成長の記録。


あれは3歳の頃


お父さんに無理やり立たされて。


嫌がり怒って泣いて


中々測らせてくれなかったアナタの泣き顔が目に浮かびます。


小学1年の冬


書いてくれとせがまれて


色を変えて測ったアナタの背が


数ヶ月の間に3cmも伸びている事に驚かされたりした事も


まるで昨日の事のように思い出します。


反抗期を迎え、小学6年生を最後に止まった柱の線。


ストップしていた成長の記録が続いたのは


アナタが成人した年のお正月。


一気に伸びた背に届かず


イスに乗って測った時の事は覚えてますか?


私の目から涙が出ていた理由。


目にゴミが入っただけと誤魔化しましたが、


本当はアナタの成長が嬉しかったからです。


立派な社会人に成長したアナタの姿。


お父さんに見せて上げられなかったのが本当に残念ですが、


きっとお父さんの事だから


天国からアナタを見て喜んでくれている事でしょう。


もし、お父さんが心配しているとしたら


誰にでも優しいアナタの事でしょうか。


悪い女に騙されてるアナタを見てるのがきっと辛いと思います。


何も知らないアナタを誑かして。


アノ女は悪い女です。


調査会社に依頼をして洗いざらい調べたのでお母さんは判ってます。


会社の上司と不倫をして退職した事


イヤらしい店でも働いていた事


不特定多数の男性と肉体関係になって


2度も堕胎した事。


アナタと出会って心入れ替わったのかも知れませんが


所詮は単なる阿婆擦れ。


生まれ持った本質は変わらないのが女なのです。


きっと一緒になっても


近かれ遅かれ苦労するのはアナタ。


お腹の子も本当にアナタの子かどうか


きっと優しいアナタを利用してるだけの女狐です。


ただ信じて欲しいのですが、


アナタが結婚の報告をしに来た時は嬉しかったんですよ?


気が早いかもしれませんが、


孫の顔が見れる日を心待ちにして。


お正月のセールの際に、ベビー服まで購入してね。


笑われちゃいますよね。フフフ。


ただ、コノ女だけは認められません。


だからと言ってアナタが


後の事を心配しないで大丈夫です。


優しい隆のことだから


自分から終らせる事は無理でしょう。


この手紙が届く頃には全て


お母さんが解決しておきますので


仕事に遊びに


新しい恋にと人生を横臥し楽しんで下さい。


今夜アノ女も道連れにして行きます。


別れを促してアナタが激怒した日。


お母さんは決心しました。


私がどうにかしてあげなくちゃってね。


でも、自分の事は責めないで


あなたは優しいままでいて下さい。


優しいあなたがお母さんは大好きです!


全部アノ女が悪いんだからね。


あっ!そうそう。


事故に見せかけますので。


私を助けようと一緒に転げ落ちていったというシナリオが出来てます。


上手く行くか自信はありませんが、


愛するアナタの為にお母さん頑張りますからね!


どうぞご安心をば。


では、長々と書き綴りましたが


お母さんから伝えたい事もコレで最後になります。


アナタが出張先でお土産に買って来てくれた鈴。


これを持って私は逝きます。


もし、何処からか鈴の音がしたら


空耳だと思わずに、お母さんだと思って下さい。


これからは、いつだって


お母さんがアナタの事を見守っていますからね。


どんな時も


側にちゃんと着いてますから安心して下さい。



お母より

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― 新着の感想 ―
[一言] 狂気とか優しさとか理不尽さとかが巧妙に混ざっててぞわぞわしました。怖くて買えません。家に置いておきたくないです。 この手紙を読んだ時の出張先の隆の心情を思うと余計に・・・。
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