8.ペン入れ
まず、下絵をケント紙に写す。
トレーシングペーパーは使わない。あれは表裏二回線をなぞって、さらにこすって転写させるので、手間がかかるのである。
アクリル板を使う。ガラス板でもいい。
アクリル板の上に下絵をのせてからケント紙を重ねておく。下からライトで照らすと線が透けて見えるので、それを鉛筆でなぞればいい。これなら一回で済む。
下描きは丁寧にやらないと後が大変なので、しっかり描き込む。
モデルを見て描くのと見ないのでは、絵の出来に雲泥の差ができるので、しっかりモデルを観察したい。
てか、モデルなんていないので、自分でやらないといけない。
ラウンジでやると、周りの社員からの視線と陰口が痛いので、営業時間のひまな時、事務所で、ひとりでやった。
ガラスの前に立って、色々とポーズをとる。服のしわとか、一瞬で記憶できないものは自撮りする。
撮影中、来客がないかビクビクだった。
自分の姿を客観視して思う。
ああ、わたしは何をやっているのだ……
悲しくなってくる。
すべて貞子のせいだ。
ちくしょう……
手はメンドウだから出来るだけ描きたくないが、描かないと絵が安っぽくなるので、一応描く。リアル過ぎてもおかしいし、マンガチックでもおかしいので、ちょうどよくデフォルメする。
下描きを終えたら、水性ペンで輪郭をなぞっていく。今回はパイロットのドローイングペン01と、ステッドラーのピグメントライナー0.05を使用した。
線にメリハリをつけるために、線を重ねる。
貞子は自分で描いたことにしたがっているのだ。
素人臭さを出さないといけないので、定規はほとんど使わない。
サラサラサラ~
ちょっと描いては、おかしい所を修正液で直していく。ここでは、ぺんてるのパワコレと、ユニボールのシグノホワイトを使った。
ある程度描けたら、スキャナーでパソコンに取り込む。
この時、カラーでもグレースケールでもなく、モノクロで取り込むと良い。後で色塗りをするとき、色をバケツツールで一気に流し込めるので、楽ができる。
取り込んだら、汚れドットを消しゴムツールを使って消していく。アプリは無料ソフトのGIMPを使う。
ディスプレイで確認すると、視点が変わり、おかしい所が見えてくるので、また修正。
手の骨格の違和感を取りのぞき、口唇を左右対称に近づける。完全に対称だと面白みにかけるので、微妙に歪ませる。それから目の周りのシワを減らした。
最後に、モノクロで取り込んだ線はカクカクしているので、アンチエイリアスをかけて滑らかに変える。ついでに線の色合いを整えた。
これでどうだ。
これがジェル君・貞子バージョンの輪郭である。
さて、貞子のやつ、これを見たら何と言うだろうか。
次回は年明け「9.大事な話」
良いお年を!