7.プライド
絵を写すだけならコピー機でも出来る。
今どきAIだって絵を描く時代である。
写した絵をそのまま仕上げるなんて、人間としてのプライドがゆるさない。素人だって誇りがあるのだ。オリジナルの絵を描かねばならない。
その一方、貞子の好みから外れる訳にはいかない。
昨晩、貞子にどんな感じのイラストにしたいか、「イメージを描いてみろ」と言うと、彼女は、「描けないしー、全部夢学ちゃんにまかせる」と答えた。
これは危険である。
全部まかせると言ったら、絵の出来は全部わたしの責任になってしまう。
描いた絵が気に入らなければ、貞子は非難し放題できるのだ。
「下手でもいいから描けよ」
と言ったが、彼女は意地でも描かなかった。卑怯である。
面倒な仕事だ
それなのに実入りがない。
いきなり一枚の絵を仕上げにかかるのはリスクが大きい。
まず、彼女の細かな好みの傾向をつかみ、それから下描きをしていかねばならない。
昼休み、わたしは急いで飯を食うと、らくがきちょうにイラストを何枚か描き、それらを貞子に見せた。
「どんな感じがいい?」
彼女は目を輝かせて紙をめくっていった。
これらの中で、彼女がほくそ笑み、よだれを垂らしそうになった絵がこれである。
彼女の趣味が透けて見えてくる。
あだ名は貞子じゃなくて腐女子にすれば良かった。
と言うことで、これを元に絵を描いていく。
次回は「8.ペン入れ」