4.製作開始
いくらなんでも、チーズ一本は安すぎる。
わたしは頭にきたが、何も描かないで文句を言われるのも嫌なので、しょうがなく、らくがくちょうを取り出した。百均の安いやつである。
とにかく貞子はイケメン好きなのだろう。
かっこよければ何でもいいのだ。
そう思って、鉛筆を走らせた。
サラサラサラ~
これで良し。
次の日、ラウンジで休んでいると貞子がやって来た。
「出来た?」
「ほれ」
わたしは昨日描いた絵を渡した。
「うわっ! 何これ?」
「イケメンの絵だろ」
「げえ、どこが」
「どこがって、どう見てもイケメンだろ」
「目、大丈夫?」
くっ、ムカつく。
「ほら、想像してみろ、もしこれが、ちびまる子ちゃんに出て来たら、絶対にイケメンだって」
「はあ? わたしが頼んだのは、すとぷりでしょ」
「だから、すとぷりって何だよ」
「そんなの自分で調べてよ!」
何で逆ギレ!?
わたしがゴネてると、貞子はまるで印籠をかざすように、すとぷりのイラストを表示させたスマホを、わたしに見せた。
「いい! これ! これがジェル君! この人を描いて! 分かった!?」
そう言うと、貞子は風と共に去って行った。
自分で描いたイラストを見る。
貴重な休憩時間、わたしは何をやってるんだろう……
そう思う一方で、もしかして、これは小説のネタにできるのでは、と考えるのであった。
次回は「5.絵の修正」