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黄泉がえり

「なんだその顔は、死人が起きたような顔して。ま、見えちゃいないし実際に死人が起き上がってるんだけどな」


 あれ? 渾身のギャグを飛ばしたはずなんだが笑い声が聞こえねえぞ、気配だけじゃ限界があるがこれはもしや怒っているのではないだろうか、いやいやまさかな、感動の抱擁はあってもまさか攻撃なんてされるわけが。


「うおおおおお!!? 全力で逃げろと本能が叫ぶ!!」


 とりあえずこの場に居るともう一回死ぬという予感がする。


「なんかすげえ音したんだけど!?」


 音だけだと何が飛んできたのかまでは分からないが、確実に俺が居た場所が砕けたぞ。多分これは拳だからティーアか。


「なんで殴りかかってくるんだよ!!」

「うるさーい!! 一発くらい殴らせなさーい!! うわーん!!」

「泣きながらする攻撃の鋭さじゃねえ!!」


 なんか勘で避けれてるけどこれの威力八つ当たりとかっていうレベルじゃ収まらないからな!! 確実に骨が逝く。


「ええい、少し大人しくしろ!!」


 反撃を試みる、なんか知らんが。なにかできる気がするんだ。


「え? これって!?」

「俺もよく分からん!!」


 多分俺の身体から何かが漏れ出ている、きっと呪いの塊と化した俺の意思に沿って呪いが形になってるんじゃねえかな。


「そんな、私!?」

「そうか、ティーアの呪いか。これはちょうど良いな」


 多分、真っ黒なティーア型の呪いが自律行動してると見た。これができるならきっと他のもいける筈だよな。きっと一回に一人ずつなんていうケチな仕様じゃねえだろう。まとめてみんな出してみようじゃねえか、なんか楽しくなってきたぞ。


「はっはぁ!! 名付けて呪軍団レギオンだ!!」


 ずるりと何かが抜け出ていく感覚が五度あった、五回? てことはウンターも出てきたのか? マジで? テンション上がるなあ!!


「あ、やべ、死ぬわ、これ」


 呪いで蘇ったのに、全部出したらそりゃ死ぬわ、意識が遠く、なっていく、


「戻れ戻れ!!」


 あっぶねえ、こんな速攻でまた死んだら今度こそ死んじまうな。


「ふぅ、危なかった」

「もう終わりかなレヒト君」

「ん?」

「じゃあ、皆から一発ずつね」

「ゑ?」


 はい、恐らく全員から一発ずつもらいました、特に殺意があったのはユーホと思いきやティーアでしたとさ。あんまり痛みも感じねえのはやっぱり俺の身体自体は普通に死んでるんだなあと実感することになったな。


「はは、なんか戻ってこれちゃった。心配かけたな」

「その身体でよくもまあヌケヌケと蘇生なんてできたものですね、どう頑張っても死んでるはずですけどどうやって戻って来たって言うんです。神に喧嘩売っといて奇跡だなんて言ったりはしませんよねえ?」

「みんなの思いが届いて超パワーで復活したんだ」

「馬鹿にしてます?」


 実際そうなんだがユーホはこの説明じゃあ納得しないみたいだな、さてどうやって説明したもんかなあ。


「問い詰めるのはやめていただけますか、レヒト様が生き返ったのですから。これ以上するようなら手前が相手になりましょう」

「見ない間に随分と懐かれたものですね、飼い狐に飽き足らず飼い犬まで拾ったようですね」

「今なんと? 手前のことを畜生風情に喩えましたか」

「そう聞こえたならごめんあそばせ、むやみに吠えない分だけ飼い犬の方が上等でしょうね」

「先に抜いたのは貴様だぞ……」

「あら怖い、怖すぎて手加減を忘れてしまいそう」


 バッチバチじゃねえか、これは流石に止めねえとまずいな。でもなあ、魔法最強のユーホと物理最強のシラヌイのガチンコとか見物なんだよな。まあ見えねえけど。


「やめろって、今お前らがやりあって得するのは敵だけだぞ。俺も目が見えれば得するところだが、あいにく今はちょっと見えねえからやめてくれ」

「見えてない? さっきあんなに走り回っていたのに?」

「手前もにわかには信じられませぬ、盲者はあのようには動けませぬが」

「いやほらあれだよ、匂いとか音とか気配とかでなんとなくな」


 見えない分鋭くなってるんだろうきっと、本当なら鋭くなるまでかなりかかるんだろうけどそこはまあ呪い補正ということだな。


「コン!!(あても聞きたいことがあります!!)」

「なんだプラチナ」

「コン!?(分かるの!?)」

「まあ、なんとなくな。これもまあ耳が良くなった利点だな」

「コンコン(ご主人様の身体はまだ死臭がします、蘇ったというよりも無理矢理動いてる感じです)」

「おっ、鋭いなプラチナ。褒めてやるぞ、うりうり~」

「コ~ン(ああっ、なんという撫で、これは駄目になる~)」


 プラチナの鳴き声にここまで多様な意味があったとは驚きだが、なにより普通に勘づいてやがるのがすげえな。やっぱり特別製のオリハル狐は別格か。


「プラチナの言うとおり、俺の身体はたぶん死んだままだ。今はそこに燃料代わりの呪いをぶち込んで無理矢理動かしてるってところだろうな」

「それはつまり呪いが切れたら死体に逆戻りということでよろしいのでしょうか? わたくし達の影のようなものも呪いの産物ということですか?」

「良い質問だぜユーイー、俺の身体には今お前らの呪いが入ってる。だからそれを外部に出した時にお前らの姿をとったんだ」

「わたくし達の呪い? わたくしの騎士を呪った覚えなど少ししかありませんわ」


 少しはあるんだな……


「いやいや、色んなもんがまざった呪いを平らげさせてもらったぜ。皆結構俺のこと好きじゃん」


 あれ? なんかブリザード吹いてね? そんなに寒いこと言った?













 











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