どうもゾンビです
時系列は変わらずレヒト視点となります。
ああ、暗いなあ、これが死ぬってことなのか。てっきり目の前にゲームオーバーとでも出るのかと思ってたがそんな演出もないようだ。
暗いと言えばナックルに持っていかれた俺の目はどうなったんだろうな、俺が死んだらもう見えなくなっちまうんだろうな。
「いや、いや、いや、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ティーアか、ああ、そんなに声を上げるもんじゃないぜ? 喉が潰れちまうだろ。ごめんな、責任取るつもりだったがそれは無理そうだ。
『セーブデータのロードを開始します』
……何言ってんの?
『蘇生の条件が満たされました、早く起きてください』
いやいや無理だろそんなの、がっつり殺されたぞ俺。
『玉座はなくともすでに二つも王冠を所持しています。肉体はすでに呪いそのもの、いくら破損しようが蘇生は可能です』
マジで?
『マジです、ですから早く呪いを平らげて起き上がってください』
へいへいっと、呪いを平らげるって言ってもなそんな形のないもんをどうやって平らげろって、
『こちらになります』
おいおいおいおい、限度ってものを知らねえのか? なんだこの馬鹿でかい盃に並々と注がれた泥は。
『これが後五個あります』
正気か?
『正気でこれが出せるとお思いですか?』
正気じゃねえってか。しかたねえ、飲んでやるよ全部。
『後がつかえてますからお早くお願いします」
くそ、飲むよ、飲めば良いんだろ!!
『如何ですか』
うへえ、ゲロ甘なんだけどこの泥。どうやったらこんなに甘いものができるんだよ。
『それは個体名ティーアの呪いです』
ティーアのなら美味い毒になるはずだろうに、こんな甘味の暴力みたいなもんができたんだよ。意味が分からねえ。
【生の呪い・ティーア】
ー こんなことになるのは分かってた、いつかこの人は死んでしまうというのは知っていた。でも、それはもっと先のことでもっとゆっくりとしたものだと思いたかった。でも、違かったんだね。私は甘かったんだ、もう取り返しはつかないけれど。もし、やり直せるなら私はなりふり構うのをやめよう、二度目はないけれど。生きてくれるというのなら全てをかけてこの人を守ろう、この覚悟は無意味だけれど ー
うーん、心を覗いてるみたいでなんか罪悪感があるな、とりあえず決意と後悔が波みたいに襲ってきてるのは分かったぞ。
『次です』
なんだよ、余韻にも浸らせてくれねえのかよ。
『次、です』
へいへい、っと今度はなんだ、随分としょっぱいぞ。これ普通に飲んだら高血圧で死にそうだな。
【生の呪い・プラチナ】
ー これを何と呼ぶのかあてには分からない、ただの獣のままだったらこんな気持ちには一生ならなかったんだろうな。でもそれはきっと良いことじゃないだろうな、少しの間でも名前を貰った。ただの獣にはないものをたくさんもらった。一つも返せてない、あては間に合わなかったんだ。自分の奥の方から声がする。許すなって叫んでる、奪われたものを取り戻せって何かが暴れてる。胸が痛い、今にも壊れそうなくらい、でも助けてくれる人はもう動かないんだ ー
プラチナにも随分とまあ、ショックをを与えちまったみたいだな。それもそうか、いきなり死ぬとは思ってないもんな。
『次です』
あーはいはい、分かりましたよ。今度は誰だ? 味はまあ、特にしないな。
【生の呪い・ユーイー】
ー 憧れがありましたの、囚われの姫と騎士の物語。閉じ込められた姫を騎士が颯爽と現れて助けていく何の変哲もない物語。その憧れは叶いました、颯爽とは言いがたいわたくしの騎士でしたが。それでも夢のようでしたわ、ただ代わりとして生きるのみだったわたくしの生に意味が生まれた。そして、夢はいずれ終わるもの。終わりがやってきたのですわ、当然のことです。でもどうしてでしょうね、どうしてこんなに空虚なのでしょう。何もなかったのが当たり前だったはずですのに、もう何もできないと分かっているのにどうして治癒の方法ばかりを考えているのでしょう ー
いやこんなのどうやったって治んないよなあ、治そうとしてくれてんのはありがたいけど。そこまで思い詰められるとは。
『次です』
まあ次はユーホだろうな、見ろよこのぐっつぐつの泥。クソ程熱そうだな。案の定熱いし辛いな、一番飲むのキツいかもしれん。
【怒りの呪い・ユーホ】
ー 勝手に死んでんじゃねえよ、イー姉様の騎士なんだろうが ー
ほらもうこいつだけ短いし。しかも見て、怒りの呪いだよ。全く持ってブレねえなお前は。ん? なんかまだ続きがあるぞ。
ーこんな風に死ぬんだったら、生きてる間はもう少し優しくしてやってもよかったかもな ー
で、デレた……だと!? そんなことがあり得るのか、信じられねえ。
『次です』
今度は、っと。なんかもったりしてるな。より粘度があるっていうか、後ほのかに苦い。
【生の呪い・シラヌイ】
ー 嗚呼、何がなにやらとんと分からない。手前は何が間違ったのだろうか、家は焼け一族の場所は消え去り、そして光とも言える理解者を喪った。死出の旅時に赴くのなら手前も連れて行ってくれれば良かったのに。手前が振るう扇はもはやあなたの為の扇だったのに、何も見えぬ、何も感じぬ、この苦しみは愉しくない、貴方のくれた苦しみは何と甘美だったことか、どうしてこのようなことになったのだろう、分からない、その両手で首を掴み同じ場所へと向かわせてもらえるならどれだけ良いことか ー
一番精神状態やばいのシラヌイじゃね? 下手したら後追いまでやりかねねえぞこれ。
『これで最後です』
ちょっと待て、最後って今度は誰のだよ? もう仲間はいないはずだけどな。まあ良い、とりあえずいくしかねえもんな。ほぼ液体だな今回は、味は、ほのかに旨味がするような……?
【友の呪い・ウンター】
ー 半ばで死ぬなど我が許さぬ ー
おま、え、なんで、いや、どこで、居るのかお前は俺の近くに、まだ居るっていうのかよ!?
『蘇生を開始します』
待て!! ウンターがどこに居るかだけでも教えやがれ!!
『探すまでもないでしょう』
くそ、身体の感覚が戻ってきやがった。探すまでもないってどういうことだ!!
『では、もう一度などありませぬよう』
くそが、戻っても俺の目はナックルのところにあるから探せねえじゃねえか!!
「ああああああああああああ!!」
近くで絶叫に近い声が何重奏かで響いてやがるな。何事だまったく。
「なんだ……うるせえな、なんかあったのか……?」
あ、俺が死んでたのか。




