呪いカスタマイズ
『呪いのカスタマイズを開始します』
見覚えのある画面が出てきたぞ、これあれだわ。魔法をカスタマイズしていく奴だわ。なんで呪いでそんなことになってんだこれ。
『現在所持している呪いは全て呪いの玉座によって統合され呪いのスキルツリーへと変化いたします』
え、ちょま、そんなことしたら色んな効果消えちまうんじゃ。
『統合しない場合は許容範囲を超えた呪いによって身体が爆発します』
死ぬんか!? 嘘だろぉ……でも今まで獲得してきたもん全部ポイじゃねえか……
『消えるわけではありません、形と出力が変わるだけです』
形も出方も変わったらそれもう別物じゃなーい?
『いいえ、本質は変わりません。何より対となる存在になるためにはこの手順が不可欠です』
今なんつった、対になるって言ったか? 何とだ、何と対になるんだよ?
『魔王殺しの宿命を負った少女と、です』
ニケか、たしかにあいつの魔法カスタマイズによって至る境地は半端ねえ位置にある。あれを止めると考えりゃ同じようなシステムにして強くならにゃどうしようもないってことか。
『ご理解いただけましたか、それとも爆発いたしますか?』
爆発なんかするか、それでそのスキルツリーとやらはどうなってんだよ?
『こうなっています』
壱
弍
特例
で? これをどうしろと?
『ポイントを割り振っていただきます』
割り振るって言ったってよお、そのポイントとやらは一体どこにあるんですかね。
『ポイントは今まであなたがその身に宿した呪いの数にボーナスを加えます』
使用可能ポイント 20
このポイントが多いのか少ないのかもよう分からんなあ。それに何ポイントやったら技覚えるとか分からないのかよ。
『何が手に入るかはあなた次第ですが、その予測くらいはつくでしょう。何を持って壱と弍ができたのかを考えると良いと思われます』
壱はサバトグランで手に入れたし、弍は五獣の塔だよな。そこで関係してた奴らの能力を呪いから引き出せるのか? じゃあ特例ってなんだよ?
『特例に全部入れて』
判んねえ時は突貫しろって誰か偉い人が言っていたような気がする。
『特例に20ポイント加算いたします。それによって特例の能力が解放されます』
特例【ジン】
ー 管理者の一人であるジンの力を振るうことができる。その能力は願いの成就と代価の徴収、願われねば動けぬが、叶えてしまえばその代価を奪わねばならない ー
お前かー!!? 特例のところってお前のスキルツリーだったのか!! また微妙なスキルを習得させてくれたなあ!! 自分から使える能力じゃねえよこんなもん!!
『ジンの解放に伴いステータス減少が付与されます』
せめてこっちが強くあれ!! そうすれば残念能力の帳消しになる。なってくれよ?
【精霊の呪い 運命力ダウン(反転)】
運命力ってなんだよ!? 一体何に作用してるんですかねえ!! あー、もうダメだ。呪いの補正がほぼゼロになった今はステータス上げてごり押す以外の戦術が取れなくなった。戦闘力ガタ落ちじゃねえか。
『以上で設定を終了します』
終わりやがった、弱体化しただけだったぞ今回は。
「終わりはったようやねえ? じゃあそろそろ限界やし外に出しても良いねえ」
限界?
「一時でも戻れて楽しかったわあ、ほなな」
引っ張られる感覚、これは、来た時と同じ奴か!?
「それと、上はなんだか騒がしくなっとるようやから気をつけてな?」
騒がしく、ってなんだよ!? なにが起こってるか説明しやがれ!?
「最後にれひとはん、自分みたいになったらあきまへんよ」
くそ、言いたいだけ言って弾き出しやがるのかよ。せめて情報か装備を。
「いって!?」
もうちょっと優しく出してくれりゃあ良いのによ。尻餅ついたぞ全く。
「なんだ、これ」
燃えている、サムライの村が、何もかも巻き込んで燃えている。なんだよこれ、なんでこんなことになってんだよ。ここにいるのは最強の戦闘民族サムライだろうが!!
「これは驚きましたね、翼が消息を絶ったので来てみればそこには隠れ里があるばかりか標的まで。これはまさに奇跡と言わざるを得ません。そうは思いませんか?」
見覚えがある姿、こいつは確か一番目だ。最強の聖人【奇跡】だ。よりによって今、よりによってこっちが一番弱い時に一番強い奴が来やがった。神父のような格好の金髪イケメンだな腹立たしい。
「奇跡か、これを奇跡っていうんなら随分と自分本位な神様が起こした奇跡なんだろうな」
「威勢が良いですね。素晴らしい、それでこそ我が主の敵です」
今戦うっていう選択肢はねえ、それはここで死ぬことを意味する。
「クソッ」
「当然逃しませんよ? ですが我が主は寛大です、最悪貴方の身体に埋まっている物だけ取り出して来いとの仰せです。良かったですね、見せ物にならずに済みますよ」
「そ、れは、お優しい、ことだな」
腕が胸を貫通してやがる、反応も出来なきゃ見えもしねえ、これが頂点の力かよ。
「これですか」
胸から腕が引き抜かれた、奴の手の中で拍動を続けるそれは間違いなく俺のものだ。
「ああ、違いますね。これはただの心臓でした」
「うぐぁっ!?」
「これですか? それともこれ? こっちでしょうか?」
叫ぶのを堪えるのが精一杯だ、次々と俺の身体から必要なパーツが抜き取られていく。
「アレイルヤ!! これですね」
最後に俺から取り出したものは黒い玉としか表現できない異物だった。
「もう用済みです。あとは少ない人生を楽しんでください。あなたに神の愛がありますように」
消え、やがった。帰った、んだな、まさか、こんな、ことに、なりやがる、とは、思いも、しなかった、ぞ




