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おにのこうせいようそはうしとら


「い、ってえ」


 落ちた先でぐちゃっといくかと思ったがまあなんとかなったみたいだな。生きてるならそれでいい、全身痛いけど折れたり砕けたり取れたりしてるわけじゃなさそうだ。


「プラチナ、無事か?」


 返事はない、ティーアと同じパターンか。倒し終わったら消えるっていう謎の流れ。まあそういうシステムだと思うしかないけどな。


「あいてて」


 身体を起こす、痛いは痛いが動けるくらいだ。


「ああ、今回はこれか」


 ヤタに飲まれたらしい矢筒がなんかふさふさしてる、これはヤタの羽か?


白烏(はくう)の矢筒』

ー むかぁしむかしのことじゃった、世にも珍しい白いカラスがおったそうな。そのカラスは大層珍しかったもんで四六時中追いかけ回されておったんじゃ。とうとう耐えかねて飛ぶことをやめて落ちた先はお侍様の頭の上じゃった。お侍様はカラスから話を聞くと不憫に思って八咫という名前をつけてお供にしたんじゃ。八咫はすくすく大きく育ちお侍様の助けをしたそうな。嘘に立ち向かう時にはお侍様を背に乗せて縦横無尽に飛び回ったんじゃ。じゃがその白い身体はやがて傷つき赤く染まっていった、最後には全身を燃え上がらせながらも嘘の攻撃からお侍様を逃がしたんじゃ。心を痛めたお侍様は八咫の白い羽根をいつまでも持っていたそうな ー


 おう……やっぱりずっしりくるな、五獣の塔にこんなバックボーンがあったならゲーム中でも説明してくれれば良いのによ。衝撃を受けっぱなしだぜまったく。


【白烏の躊躇ちゅうちょ 逃走時移動速度ダウン 大(反転)】

ー 僕でなければもっと巴様を速く逃がせたんだ、僕は迷ってしまった、巴様がまだだと言ったから。でもどう見てももう駄目だった。巴様はもう戦えなかった、でも、それでも巴様なら本当にできるんじゃないかと思ったんだ。その迷いが巴様にさらなる傷をつけたんだ、ああ、もっと速く、もっと強く、なりたかったなあ、僕をすくい上げてくれた巴様の為なら僕はどこまでもいける、筈だったのに ー


【白烏の二枚羽根】

ー 分かたれし白烏の羽根を持つ矢は全く同じ軌道に二本連なって存在する、一本を防ごうとも全く同じ軌道の二の矢が相手を貫く。白烏の分身能力は初めからあったものではない、足りぬ身体を、足りぬ心を補うために編み出した力だった。全ては救ってくれた主のために、しかし分かたれるほどに薄れる自我はやがて主の事さえ忘れてしまうだろう。それを恐れた白烏は二体以上の分身を行うことは無かったが、主を逃がすために初めて身を八つに分けた。しかし恐れていた事態は起こらなかった、たとえ八つに分かれようとも主への思いは微塵も揺らがなかったのだ。墜ちようとも、その羽根は白く美しい ー


「常時二連射ってことか? 火力二倍になるってことで良いのか」


 今矢筒に入っている矢は全部白い羽がついているが、これに入れた矢は全部これになるって事で良いのか? そうなるなら安価な矢を大量に仕入れて運用できるようになるな。


「これなら次の牛もなんとかなりそうだ」


 次は牛の間、タフネス、パワー、そしてガッツ、みたいな肉体性能の権化とのガチンコになるからな。火力があるにこしたことはない。


「この感じだと次はユーホかユーイーか、もしかしたらどっちも居るってこともあり得るな」


 痛みを訴える身体にむち打って足を進める、おあつらえ向きに目の前に門がありやがるからな。今までとは違ってもう開いてるのが不穏だが、行くしかねえ。


「いてて、さあ相手になってやるぜ牛さんよう」


 「魔法使いウシキュア」「肉体と魔法が合わさって最強に見える」「ガチムチなのにインテリ、そのうえ声が良い」と言われるクダンだが、攻略法は知ってる。だがなあ、今までもイレギュラーがありすぎて俺の知ってる攻略とはかけ離れてるんだよなあ。


「ステージはコロッセオ風なのは変わらないな」


 この中で真っ黒でごっつい角が生えたクダンが待ち構えているはずだ、もしかしたらティーアの時みたいに誰かもう戦ってるかもな。音が聞こえないからそれはないか。


「マジか」


 コロッセオ風の闘技場の中心には思った通りクダン、だがもう既にイレギュラーが二つ。


「ユーホとユーイーは既にいるが、もう倒された後か」


 壁にめり込んでるユーホとそれに寄り添うように倒れてるユーイー、致命傷ではなく意識が飛んだだけみたいだがもう戦力として数えることはできないだろうな。クダンにも相応に傷がついてるから結構良い勝負をしたみたいだが流石に勝つところまではいかなかったか。


「んで、大問題がもう一個の方だな。なんでさらに次の階の白虎がこんなところにいやがる?」


 五獣の塔最後の刺客の白虎だ、「強い、ただ強い」「敵キャラの集大成」「こいつを倒せればこのゲームで倒せない敵は存在しない」なんていう物々しい言われ方をするほどの化物がなんでクダンと一緒に居やがんだよ。名前はリチョウだが、人間性の欠片もねえし詩も読まない。


「クダンとリチョウを同時に相手取るのは無理だろ……無理ゲーにも程があるぞこんなの」


 


















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