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狐が鳥を狩る事もある


 白い大カラスのヤタが厄介なのは狡猾なところだ。まるで中に人が入っているかのように嫌らしい攻撃をしてくる。


「あっ、やりやがったな!!」


 だから今の状況もあり得る話だ。


「矢筒持っていきやがった」


 一瞬の出来事だった、俺がヤタを確認してから弓を射ろうとした時にはすでに奴のクチバシが矢筒をもぎ取った後だった。


「このクソ鳥が、一本しかねえじゃねえか」


 俺が確認したヤタは虚像だったようだ、本体は後ろから忍び寄って攻撃手段を奪ったってわけだ。ヤタが設置するおとりの分身はぶっちゃけ攻撃するまで偽物とは分からない超性能だから仕方ないとはいえまさか初手からやってくるとはな。


「この一本でお前を落とすしかねえよなあ、良いぜやってやるよ」


 俺の矢はほぼ必中だ、ヤタの羽に叩き落とされない限りは確実に当たる。だが、それで叩き落とされたらそれで終わり。ゴクウの時と一緒で矢自体を壊されても駄目だ。


「あいつを攻撃するタイミングは知ってる、問題はイレギュラー形態が確実にあるって事だよな」


 ジロタローにゴリラと今まで例外無く強化形態になってやがったからな、このヤタだけが違うなんてことはないだろう。


「できればそれまでは矢は温存するべきだ、となるとだ」


 別の攻撃手段が必要になるな。プラチナに矢を作ってもらうか? いや駄目だ、そんな器用な真似はプラチナにはできない。


「コン!!」

「ん? どうしたプラチナ」


 わちゃわちゃしている、可愛い、じゃなくて。


「もしかして人型になりたいのか?」

「コンコン!」


 まあ別に問題はないが、的が大きくなってヤタに狙われやすくなるのは問題と言えば問題だな。プラチナに攻撃が通じるとはとてもとても思えないけどな。


「一瞬だけ手を放す、回収は頼んだぞ」

「コン!!」


 この状況で手を放すのは結構キツい決断になるが今の俺には一発限りの攻撃しかねえから別に良い、落ちきって死ぬようなことにならなければむしと良い判断だ。


「いくぞっ」


 手を放す、身体が重力に従って落ち始めた。


「クケケケケケ!!」


 な、嘘だろ、ヤタがなんでまたこんな近くにいやがる、いつの間に入れ替わったんだよ。分身がゲームの時の数倍厄介になってやがる。あとスピードも桁違い、瞬間速度もそうだが通常移動も想定よりずっと速いぞ。


「やっべ、体勢も崩れてる、攻撃もできねえ、詰んだ」


 一発射るにも想定外すぎて動きが間に合わねえ、クチバシが俺の身体を貫くのが速い。プラチナも今は変身中だから対応は間に合わねえ。


「うおっ!?」


 身体が勝手に動きやがった、腕に引っ張られるようにして勝手に動いて、攻撃を躱した?


「ぬおおお!?」


 ゴクウの呪いの効果か!! 腕が勝手に反撃までしやがった。


「クケッ!?」

「驚いたかヤタ、俺もだよ!!」


 クチバシに一撃入れることに成功した瞬間に俺の身体は自由を取り戻した、それは即ち俺が重力に支配されたことを意味する。


「プラチナ、もう良いか!?」

「はいご主人様、後はあてがやるよ」


 腕が掴まれる、小さい手だがそれでも俺よりも力強い。ああ、心強いな、これでなんの不安もない。


「あてのご主人様に手を出したことを後悔させてやる」

「プラチナ?」


 なんか非常にお怒りモードだね、そんなに犬歯をむき出しにすると可愛い顔が非常に物騒になってしまうな。それはそれで良いとは思うけども。


「ぺっちゃんこにしてやる」


 プラチナが手をかざす、金属を生成して押しつぶすつもりか。鳥は軽くて速い代わりに防御力は低い、まともに当たれば一撃でかたがつく。


「あれ?」

「どうしたプラチナ?」

「ご主人様変です、この空にはあてが操作できるものがない」


 まあ空だしな、地上から離れてるってことは土属性っぽい金属操作は相性最悪ってことになるだろう。あれ?てことは攻撃手段が肉弾戦のみってことになるのか?


「きっついなあ」

「うう……ごめんなさい」


 耳がペタンと垂れてしまった、そんなしょんぼりされるとこっちまで悲しくなってくるが今はちょっと悲しんでる場合じゃないよな。


「あのう、ご主人様、あてに血をください」

「え? 血?」


 巨大化する気か? それこそ良い的になって大変なことになるぞ。


「ご主人様の血を使って操作できるものを呼び出します、それでもできることは多くないけど」

「ああそういう」


 血を触媒にして無理矢理金属を使おうっていうのか、そのために俺の血が欲しいと。


「……襲われない?」

「が、我慢します」


 プラチナには前科があるからなあ、血とかで興奮されて襲われると俺には抵抗できない。色んな意味で喰われそうだ。


「それ以外に手がないのも事実だしな、良いぞ。持ってけ」

「コン!! ありがとうございます!!」


 プラチナが俺の手に噛みつく、甘噛み程度だが鋭い歯によって皮膚が裂かれる。痛みとしてはそこまででもない。


「んくっ、んくっ、はぁ……あはっ」

「身体メキメキしてるけど大丈夫か」

「だいっ、んっ、じょうぶ、あっ、です」


 目の前で急激に成長されるとなんか面白いな、成長記録の早回しって感じ。


「クケケケケ!!!!」

「来たぞっ!!」


 ヤタがまた迫ってきてやがる、それが本物かどうかは俺には判断がつかないが。今までの経験を踏まえるとこれは分身で本物は別の所で奇襲を狙っていると見た。


「すんすん、鳥臭い」


 うおっ!? なんかぶつかった音がしたぞ。


「ク、ケ!?」

「こちらが本命ですね、来る場所に壁を置いておくだけで落ちるなんて。たかが鳥があてとご主人様に勝てるわけないのに」


 空中に浮いた金属塊にヤタがぶつかったようだ、流石のヤタも瞬間的に現れた金属には対応しきれなかったみたいだな。プラチナには本体が判別できるのも良かった。


「さて、問題はここからだ」


 自分の速度がそのまま自分に返ってきた現状ではとりあえず無事とは思えない、だがイレギュラーは確実に起こる。何かと融合するかもしれないし、筋肉が膨張するかもしれない。さあどうなる。


「クカァアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


 落ちつつあったヤタの身体が光を放った、その光は太陽のような明るさでもって視界を埋め尽くす。


「ま、俺にゃあ関係ない」


 明るいのは分かるが別に目で見てるわけじゃあねえ、だから今のヤタがどうなっているかもきっちり見えている。


「燃えさかるカラスと来たか、不死鳥って言うには少しばかり攻撃的すぎるな」


 なんかこうトゲトゲしてる、再生の炎とかって感じじゃねえぞ。全部焼き尽くして灰も残さないタイプの炎だもん。


「クカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 しかもうるさいときたか、早めに黙らせるしかねえな。


「底が見えた、が、燃えてる奴に矢がちゃんと刺さるかを確かめねえといけねえな」

 

 




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