狗、猿ときたら次は
「見てらんねえな」
ゴクウにトドメを刺してやるか。いくらなんでもこのまま苦しみ抜いて死ぬこともないだろう。
「よっと」
狙いは頭、即死させてやるのがせめてもの情けというものだろうな。脳幹ぶち抜いて痛みもなく逝かせてやるよ。
「これで良し、と」
ゴクウが完全に動かなくなったのを確認して弓を下ろす。あいつなら死ぬ間際に一回くらい動くかと思ったがそれはなかったみたいだ。
「さて、ティーアには聞きたいことが」
あれ? 居ねえな? さっきまで横にいたのに。
「ティーア?」
消えた? それともどっか行っちまったか?
「もともとティーアがいる事がイレギュラーだったからな、いきなり居なくなるのも不思議じゃない。のか?」
まあ居ないものは仕方がないので先に進むしかないわけだがゴクウの分の呪いがどうなるかだな。
「弓に変化はなし、となると俺自身が呪われたか? いや、その割には特に変化は感じないな。もしかして呪われてないのか?」
まさかそんな、ゴクウを倒した時も例外無く呪いはかかるはずだが。
「あ、こっちか」
弦から指を保護する手袋的な奴があるんだが、それがなんか変な感じになってるな。まさしく猿の手みたいになってる。
『達猿の弓懸』
ー むかぁしむかしの事じゃった。あるところにとても手がつけられない暴れ猿がおったそうな、耐えかねた村の者たちがお侍様に縋ってその暴れ猿を退治してもらおうとしたんじゃと。そのお侍様は大層強いお方でいとも簡単に暴れ猿をやっつけてしまい、それどころか自分で反省させると引き取ってしまったんじゃ。
その後暴れ猿は悟空の名前を与えられお侍様のお供として嘘に立ち向かったんだそうな。最期の一瞬まで悟空はお侍様の側で立ち続けて支えておったんじゃ ー
また昔話っぽい奴になったな、つーかこれあれだな。トモエの記録だろこれ。五獣の塔の獣共はトモエの仲間だったっぽいな。
「なかなか重い記録を見ることになりそうだな」
聖痕も大いなる呪いも重いぜ全く。
【達猿の慟哭 クリティカル率ダウン 大(反転)】
ー 主様よう、どうしてこうなっちまったかなあ、でもどうしようもねえよなあ。せめて主様の意思だけでも全うしなけりゃいけねえなあ、それで他の奴から殺されようとこれが悟空の忠義って奴だぜ ー
【達猿の武芸・猿廻し】
ー 一度の戦闘で一度だけ拳の間合いに入った敵の攻撃に対してあたかも知っていたかの如く捌きを行い反撃に転じる、これは悟空の積みあげた武芸の一部である。例え呪いに堕ちようともこの技の冴えは失われない、染み付いたものは落ちぬものだ。否、落ちぬからこそ染み付いたのだ ー
「今回はすんなり見せてくれたな、クリティカル率は分かりやすいから良いな。問題は矢が迎撃されると何の効果もなくなるってところだな」
とりあえずはここでやることはもうない、ゴクウを倒した時点で次の階への道は開けたはずだ。
「犬、猿ときたらもう次はこいつしかいねえよな。もちろん三階はキジ、いや鳥の間だよ」
キジではねえんだよな流石に、鳥の間に出てくるのはカラスだし。でかい白カラスがここの主人だが、問題はカラスよりフィールドの方だ。
「空だもんなあ」
そう、ここは鳥相手に空中戦をすることを強いられるんだ。「二回目のドッグファイト」「攻撃ヘリ持ってこい」「空の魔王の再来」等々言われるクソマップだからな。自分も飛べる状態になるがむしろ戦いにくくて仕方がなかった覚えがある。
「ここにも誰かまた居たりしてな」
「コン」
足に何か感触があるな。しかもこの感じは覚えがあるぞ。この、懐かしい毛並みは。
「プラチナじゃねえか!!」
「コンコーン!!」
今度はプラチナが居るのか、何がなんだか分からんがソロ専用っていう縛りはなくなってるのは確定らしい。
「お前がいれば百人力だな、さあ行こうぜ」
「コーン!!」
門を破壊して中に入る、当然足場なんてない。門を潜ったらもう空に放り出されるからな。
「コーン!?」
「落ち着けよ、大丈夫だ。ここは皆空が飛べるんだからな」
ほーら身体が風に乗って飛ぶぞう、ふわりふわりと、身体が、浮いて、
「浮いてねええええええ!?」
「コーン!?」
普通に落ちてやがるぞこれ!? もしかしてあの飛んでるのバフ扱いだったのか!? じゃあ俺はむしろ落ちていくしかねえじゃねえか!?
「このステージに底はねえはずだが、今はどうなってるか分からねえぞ。まずいまずいまずい!!」
焦るな、落ち着け、俺は今の状況をなんとかできるはずだ。俺はできるはずだ。できる、できるぞ。
「プラチナ!! 飛べ!!」
「コン!?」
プラチナは普通に飛べるはずだ、それにつかまって時間を確保しよう。早くしねえと白いカラスが襲ってきやがる。
「コーン!!!」
「でかしたぞプラチナ!!」
思った通りプラチナは飛べる、それにつかまることでなんとか体勢を整える事ができた。
「よし、これで少しはマシになったな。そしてもう来てるのが見えてるぜ。お前を撃ち落しに来たんだ」
白い大カラス、その名もヤタが今まさに俺の正面からこちらに向かってきていた。




