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そびえるばかりが塔じゃない

 地面にボコボコ穴ができちまってる、相当威力が高い技だったのがうかがえるがおいそれとつかったら被害も相応に大きそうだ。でもな、サムライの技だから敵にホーミングとか平気でしそうなんだよな。これでホーミングレーザーだった日にゃもうお手上げだ。


「ん? なんか見えるな」

「温泉でも掘り当てましたか」

「そんなわけあるか、なんか地下に空間があるような……」

「地下の空間? それならきっと五獣の塔の一部ではありませんか」

「え? なんて?」


 五獣の塔? あれはクリア後に出現するソロ専用チャレンジモードのはずだが。もしかして座標的にはこの場所の地下に設定されていたってことになるのか。流石に解析データまでは知らねえが、内部の構造的にそうなっていた可能性はある。それをそのまま再現した結果として地下に塔があるとかいう矛盾が発生したのか。


「五獣の塔は手前の曾祖母であるトモエが作りあげた塔だと伝え聞いております」

「……そりゃ作った奴はいるだろうけど」


 なんか変な感じにつじつまを合わせるようになってんなあ。ここの奴ってことはサムライかゲイシャだと思うんだがなんで塔なんか作ったんだよ。しかもソロ用の訓練施設みたいな。


「聖域ゆえ挑むことは禁じられていますが、話によると五獣の塔での経験は普通よりも遙かに濃密かつ効果的だと伝わっています」

「そりゃな、経験にはなるだろうよ」

「……五獣の塔を御存知なのですか?」 


 やっべ、聖域とか言ってたから門外不出系のやつか。それを知ってたとなれば下手すればこの場で手打ちにされてもおかしくないぞ。サムライはそういうことする、二秒前に笑顔で握手しててもそこからノータイムで首を落としにかかれるいかれた連中だ。


「いや、その、知ってるというか、うちの古文書にそんなこと書いてあったのを覚えていたというか」

「……」


 まずい、疑いの目を向けられている。フラグが立ったとはいえまだ会ってから日が浅い、普通に斬りかかられる可能性も残っている。なによりドーピングデバフかけてない状態じゃ俺なんてシラヌイの影も踏めねえ。この距離だと抵抗もできずに首が落ちる。


「レヒト様、真実を。これを言うのはこの一回だけです」

「分かった、本当のことを話そう」


 命には代えられねえよな。問題はどこまで話すべきかということだ。つーか、よく考えたら俺のゲーム世界知識のことを誰かに話すことでペナルティあったことないし全部洗いざらい話してもなんの問題もない気がしてきたぞ。


「あーあ、もう見てられへんねぇ。さっさと塔にお入り、時間がぎょうさんある訳やないんやから」

「うおっ!?」

「きゃっ!?」


 なんだ!? 吸われる!? 無理矢理引っ張られているような、そんな感じがする!!


「れひとはん、あんたの事試させてもらいますわ。自分は巴いいます、ずいぶんまえに神さんと戦争させてもらった老骨ですわ。これでも隻腕とか言われて恐れられとったんですよ」


 柔らかい声音の奥になにか迫力を感じる声だ、老獪というか年季の籠もった声。恐らく女性、神と戦争してたってことはナックルとかの仲間か、ここでも大いなる呪いがあるってことだな。


「さあ、楽しませてもらいましょうねえ」


 そう言われて数秒後、俺の身体は地面に空いた穴に吸い込まれた。逃げようがない裏ダンジョン、「地獄巡り」「この塔を上るものは一切の希望を捨てよ」「本編よりもこっちをクリアするほうが時間がかかる」とまで言われた五獣の塔へ。


「シラヌイも吸い込まれたみたいだが、ソロ専用じゃなかったのか……?」


 目の前には木製の大きな門、其処に付いている看板には大きく犬と書かれている。そう、これは五獣の塔の一番最初の階の入り口。


「俺の武装は弓と持ち込んでたティーアのスープ二本分か、不足とか言うレベルじゃねえな。矢にも限りがあるのを考えると絶望的とさえ言えるか」


 まあ、それは俺がここに来るのが初見だったらっていう話だ。五獣の塔もきっちり攻略済みなんだよこちとら。どんなギミックがあってどんな敵がでてくるか分かればこんなものはただのアトラクションに成り下がる。


「やってやろうじゃねえかよ、ノーダメノーミスクリアだ」


 門に手をかける、さあ始まりだ。


「ふんっ」


 待って、びくともしないんだけど。


「落ち着け、落ち着けよ、いとも簡単に開けてたよな。だからここの門が重すぎて開かないなんてことはないはずなんだ。まだスープは温存しておきたい、良いね?」


 もう一度力を込める。


「……ちくしょおおおおお!!」


 二本しかないスープをこんなところで使う羽目になるのかよ!! くそが!! 俺の上半身強化されたんじゃねえのかよ!! 


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 波があるデバフの効果を見切って一気に押し開けてやった、くそ忌々しい扉だぜまったく。これがあと五つもあると思うとここでもたつく訳にはいかなくなった。


「RTA勢ではなかったんだけどな」


 最短で攻略してやるよ五獣の塔。

 







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