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ブラッド・クライシス

「ぷはぁ、食ったなー」


 ジジイに連れてこられた食堂のような場所には既に料理が並べられていた、言っていたとおり野菜が中心で肉のない料理ばかりだったがそれでもなにか不足を感じるような料理ではなかったな。精進料理っていうかベジタリアン用の料理って感じ少しだけクセを感じるくらいで美味しくいただけた。まあ、強いて物足りなさを感じるとしたらティーアの料理にある爆発的な美味さはないというあたりか、でもあれは美味しい毒を使ってるから特例だろ。じんわりと染みるような美味さってのも良いもんだ。


「そこそこの品質ですね、ですがこれならまだ私の城のほうが上質です。そうは思いませんかイー姉様」

「そんなことを言うものではありませんよ? わたくし達が食していたものとは全く毛色が違うのですから食べ慣れれば城の料理に匹敵するかもしれませんもの」


 お姫様たちはたいそう舌が肥えているようで、こんなことをのたまいやがった。でもな、結構激しめにがっついていたのを俺は見逃してないぜ? 腹減ってたら何喰っても極上になるんだよ、ちょっとだけ涙ぐんでたのも見たからな。


「うずうず……わきわき」

「ティーア、お前が厨房に入るとしたらそれは最後の最後だから我慢してくれ」

「えー、料理したいよー」

「それは俺もお願いしたいんだが、とりあえず落ち着くまで待ってくれ。今はゆったりしたい気分なんだ」

「分かった……」


 そんでもって満足してないのが一人いるんだなあ。


「プラチナ、大丈夫か?」

「あては食べられないようで、なんだかしょんぼり」

「主食は鉱物だもんな」

「金属を含んだものならなんでも良いんですけど、ここのはちょっと少なくてあてにはちょっと」


 金属を含んだものならとなるとカルシウムとかでも良いのか? それとも生だったらいけるのかな、手が入りすぎたものは食えないとかだろうか。


「壁とか床を食えってわけにもな」

「流石にそれはあても嫌です、そうだご主人様良いことを思いつきました」

「なんだ、言ってみろ」


 なーんか嫌な予感がそこはかとなくしてるな、いやいやプラチナを信じよう。きっと何か妙案を思いついたに違いない。きっとそうだ、そうだよね?


「ご主人様の血をくださいな」

「え? 吸血狐だっけお前」

「きゅうけつこ? そんな種族は知りませんがご主人様の血なら良い糧になるんじゃないかと思って」


 俺も吸血狐ってのは知らないけどな、血液か。確かに鉄は入ってるが、どれくらい飲まれるかによっては俺の生死に関わるぞ。というか呪いの塊みたいな俺の血を飲んで大丈夫なのかっていう懸念も捨てきれない。プラチナに害があったら俺結構へこむわ、ご主人様の血まずーいとか言われたらかなりのダメージが入る。


「ずるい!! 私もレヒト君の血が欲しいのに!!」

「ティーアさんや、あなたヴァンパイアじゃないですよね?」

「違うけど、毒に慣れた人の血ってたぶん毒性があると思うんだ、味わってみたくて。自分の血はまずいけどレヒト君ならきっと」


 毒中毒ポイズンジャンキーがいるぞ、ていうか毒性あったらプラチナに飲ませられないんだけど。これ本当に大丈夫か。


「それはおすすめしませんわ、わたくしの騎士にはなにかと集まりやすいようで。その血液にはどんな効果があるかわかりません。ですかたむやみに飲んだりしたら最悪死ぬかもしれませんわ」

「そう、だよな。やっぱり無理そうだ」

「ですから」

「ん?」


 ですから?


「わたくしが調べつくしてからの方が良いでしょうね、ここには最先端の技術が息づいていますし。きっと何から何まで検査できましょう。ですからわたくしに血をくださいな、大丈夫ですわ瀉血なら得意ですし」


 さらっと瀉血が得意とか怖いこと言わないでくれませんかね、瀉血なんて悪い血を抜けば病気なんて治っちまうぜヒャッハーっていう恐ろしい民間療法みたいなもんだろ。まさかユーイーまで俺の血を欲しがるとは。まずいぞ、俺がミイラになるルートが見えてきた。


「さあ、さあ、さあ、血をくださいな」

「待て待て、ナイフを焼いて消毒しながら近づいてくるな」


 注射器なんてあるわけもないし、たぶんユーホはユーイーを止めないし、かなりまずい状況になったぞ。なんだよあの顔、流石イー姉様どんなことにも興味を持つ私の天使、みたいな顔しやがって。止めろよ姉の暴挙を。


「ご主人様!!」

「レヒト君!!」

「わたくしの騎士!!」


 やっべえ、解決策が思いつかねえ。このままでと本気で死ぬ寸前まで血を抜かれるぞ。どうしたら良い、どうしたらこの吸血姫どもから俺の血を守れる。


「ジジイ助けて!!」

「無理じゃ、生者が死者に助けを求めるでない。ぷぷ、修羅場じゃの」

「おのれジジイ!! 強制的に成仏させてやろうか!!」


 あんの野郎、なんて楽しそうな顔で笑いやがる。


「はぁ……無理か」


 諦めるしかないのか、俺はミイラになってしまうのか。


「なんてな、諦めるかよ!!」


 全力ダッシュだ、とりあえず逃げてから考えよう。いまはちょっと八方ふさがりすぎ。


「えいっ」

「え?」


 あれ、世界が回る?


「いってえ!?」

「もう、逃げないでよ。おいて行かれるとすごく悲しいんだよ」


 待って、いつの間にティーアに腕をつかまれていたんだ。全然気づかなかったぞ。


「ご主人さまごめんなさい」

「え?」


 金属の手枷と足枷、プラチナが俺に? 


「さあ行きましょうか、どうぞ安心なさって。優しくして差し上げますわ」


 あ、詰んだわ。


「覚悟を決めるか……」


 








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