婚約・狐約・魂約
「あらあら、そんなことも知らないで魔法を使うだなんてはずかしいと思わないんですか」
「思わん、知らんもんは知らんからな」
ユーホが魔法マウントをとってくるのは別にどうでもいい、問題は俺が知らない種類の魔法ありすぎじゃねって事なんだよな。設定上あったけど実装されてない魔法なのか?
「はぁ、婚約魔法もしくはマリッジと呼ばれる魔法は合体魔法です。相手と自分の共通点、つながりを利用して二人分の力を同時に使うことで二倍以上の効果を発揮するものとされますね」
「え? もしかして解説してくれてるのか」
「それ以外の何に聞こえているんでしょうね」
ユーホは思ったより親切かもしれん、ちょっと見直したぞ。
「でも先ほどのものはあなたが一方的に吸い上げられて利用されたようなものですけど」
「確かにそんな感じするわ、なんかめちゃくちゃ疲れたし」
「そうでしょうとも、魔力の流れを見る限りあなたの魔力は自らの内にしか向かない方向づけがされていますから。量だけはそこそこあるようですが、自分では使えません。それこそ先ほどみたいに無理やり引っ張り出されでもしない限りはね」
マジか、魔法の専門家に直々に自力じゃ魔法使えないって言われちゃったよ。薄々おかしいなー、おかしいなーとは思っていたけれど。面と向かって言われるとなんか凹むわ。
「二人がいきなりマリッジを使うとは思いませんでしたけど、こそこそと仕込みはしてたようですからそこまで驚くことでもありませんね。ああそうだ、左の薬指を見てみなさいな」
「薬指?」
手袋を外すと、紫と白の刺青のようなものが指輪のように薬指に刻まれていた。こんなもん入れた覚えないんだが?
「それがマリッジの使用者の証、きっと二人にも一個ずつ同じように刻まれているでしょうね。二つもあるのは少し特殊ですが怪しまれるほどでもないですし、その手を直接晒すことも控えるようですから大丈夫でしょう」
「そっか、お前が言うならそうなんだろう。ありがとな」
「あなたのお礼なんていりません」
「へいへい」
魔法方面の知識じゃとても太刀打ちできないからな、知ってる奴に逆らう理由もない。
「じーっ」
「どうしたティーア」
「なんか、イチャイチャの波動を感じたから。それと婚約魔法の説明を取られた」
「そんなもんねえから安心しろ、ユーホは見ての通りユーイー一筋だから。あと多分説明はユーホの方が上手い」
「そんなことないよ? こうね、ぎゅーっとしてズギャーンてなると使えるんだよ」
「OK、感覚派ってことがよーく分かった」
説明系はユーホに任せることにしよう。うん。
「これでもうクリフォトには用がないってことで良いのか?」
「うん、これで良いと思うよ。後は僕が責任もって守るから」
「そうか……お前はここで」
「うん、僕はここまで。というか、多分裏切り者ってことで僕は抹殺対象なうえに居場所は元聖人だから筒抜けだからね。ここで陣取っていた方がまだ生き残る可能性が高いんだよ」
「マジか、セフィロトつぶしてもバレてんのかよ」
「流石に聖人クラスになるとね」
それじゃあ連れて行くのには危険が多すぎるってことになるな。これがこいつの嘘なのかを見極める目を持っていないのが口惜しいがこの耳触りの良い言葉をわざわざ否定する理由もない。
「分かった、任せたぞ。全部終わったらお前は本当に自由になれる。だから待っていてくれよ、絶対にその時は来る。それまでの辛抱だからな」
「はは、楽しみだなあ。その時が来るのをいつまでも待つことにするよ。できれば終わったら迎えにきて欲しいな、生憎僕の身体はあんまり言うことを聞かないんだ」
「分かった、必ず迎えに来る」
約束がまた増えたな、だけどそれで良い。背負うものの重さに立ち向かうのに約束は必要だ。
「じゃあまた」
「うん、またね」
グリンを残してクリフォトを後にする。振り向くのはやめておいた。
「ネエ」
「うわっ、びっくりした。なんだよメタル、もう俺はお前に用はねえぞ?」
「ヨウハコッチニアルンダヨネ」
「なんだ? お前らのお願いはだいたいロクなもんじゃないと思い始めてるぞ」
「ウーントネー、ハイコレ」
「なんだよこれ」
「コレハネ、セフィロトノタネダヨ」
ただの木の実にしか見えないんだけどな。つーかセフィロトって種で増えんの?
「ノンデ」
「なんでだよ、食いもんじゃないだろこれ。埋めるんじゃないのか?」
「チガウ、コレハセイサンダヨ。クリフォトヲフヤシタラセフィロトモフヤスンダヨ」
「俺が飲んだら増えないじゃんか、消化しちまうぞ?」
できるのかどうかっていう疑問は今は棚上げしよう。
「チガウ、フヤスノハインシ、キニナラナクテモイイ。カンタンニイウトナエドコニナッテホシイ」
増やすのは因子? 木じゃなくてもいい、そんで苗床になれと。
「それって内側から木が生えて最後には木になれって意味か?」
「チガウ、セフィロトノヨウソガイッテイリョウアレババランスハトレル」
セフィロトの要素とバランスねえ、今一分かんないがこういう時はだいたい逃げ道塞いであるんだよな。
「断ったらどうなる」
「コトワル? アリエナイ、ダッテソレシナイトミンナシヌ」
「どういう風に死ぬんだ」
「コンナフウニ」
「っ!?」
頭にイメージが叩き込まれた、恐ろしい滅びのイメージ。何もかもめちゃくちゃの御破算状態になる光景。一切の区別なく生き物は蹂躙されている。
「これが起こるのか?」
「オコルヨ」
「分かった、飲むよ」
「アリガトウ、コロサズニスンデヨカッタ」
もしかして結構危機的状況だったの今。




