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白面金毛九尾の狐、傾国の化け物は首輪を望む

「ガリッ、ゴリッ」

「ぶもぉぉぉぉ……」


 生きたまま牛が食われる様子ってのはなかなかにスプラッターだが、プラチナが嬉しそうなので気にならないな。すげえ硬そうだが美味いのかなあれ。


「な、なかなかえげつないことするねあのオリハル狐」

「そうか?」

「あの牛がいきなり現れたのも驚いたけど、そこそこ強いはずの牛を一撃で動けないようにさせてから死なないように食べるなんてのはなかなかできることじゃないよ?」


 そんな器用なことしてるのか、すごいじゃないか!!


「どんなに頭の良い獣でもあんなことしない、レヒト君の飼い狐じゃなきゃ絶対にろくなことにならないと思う。プラチナちゃんがプラチナちゃんで良かったと思うよ本当に」

「そこまで危険視しなくても……ティーアから見てもそんな風に思う感じなのか」

「うん、あれはたぶん放っておいたらかなり危険だと思う」


 慧眼だなマジで、確かにあれは放っておいたらおっそろしいボスモンスターになる奴だから。でもまあ今は違うルートに入ったっぽいから大丈夫だろう。大丈夫だよな? ダッキになったりしないよな?


「ナルホドネ、アノオリハルコンハ、インガカラヌケダスコタイナンダ、ダイジニシタホウガイイヨ、アレハオオイナルチカラヲカクトクスルカモシレナイ」

「言われなくても大事にするわ、俺がプラチナを粗末にするわけないだろ」


 あんなに可愛いのに。


「おぞましい、モンスター同士の共食いなんて見せられるとは思わなかった」

「ユーちゃんそんなこと言うものじゃありませんわ、あれはかなり貴重な光景なのですよ? オリハル狐の食事風景なんて世の学者から見たら希少性の塊の他の何物でもないのですから」

「それでも、です。イー姉様はあのようなものも受け入れられる懐の深さがありますから良いのでしょうけれど。私にはあれはただのおぞましい光景にしか見えません」


 あんだと? ユーホとは一回とことん決着がつくまでやり合うしかないみたいだな。殴り合いだと俺が負けるからできれば議論の場か法廷に持ち込みたいところだな。正々堂々と言葉のナイフで殴り合おうじゃねえか。


「けふっ」


 食い終わったみたいだな、跡形も残っちゃいねえ。あの小さな身体に牛が入ったのは不思議でしかないがまあそんなこともあるだろう。


『使い魔ケムダーがプラチナに捕食されました、条件の達成を確認したため強化を開始します』


 え? 強化ってなに?


『幼体から半成体へと強化されます、それに伴って存在強度の再定義と適正の強化を行いますがよろしいですか?』


 唐突がすぎるぞ、具体的にどうなるのかを教えてくれよ。流石にこの情報だけでOKは出せねえぞ?


『情報を開示します。強化は以下の通りです。

名前 プラチナ(半成体)

特殊スキル オリハル狐、固体鉱物操作、変身、愛狐の首輪、大変化(追加)、液体金属操作(追加)

汎用スキル 捕食、五感強化、追跡、近接格闘術、激怒、束縛、独占欲、知略(追加)、謀略(追加)


武器 オリハル狐の牙

防具 オリハル狐の毛皮


状態異常 【望んだ枷】【主への誓い】【災厄に至る道程(追加)】


 条件に合意されたなら、決定をお願いします。ちなみに、ここで強化を取りやめた場合は個体名プラチナに多大なる負荷がかかります』


 不穏すぎる状態異常が追加されるんだよなあ……でもここでやめると多大なる負荷がかかるって半分くらい脅しじゃねえか。プラチナを苦しめるのは本意じゃねえ、ここはOK出すしかねえか。しかたねえなOKだ、やってくれ。


『合意を確認、強化を開始します』


「コン?」


 プラチナの身体が光を放つ、だいたい進化するときには光るのがお約束だからまあこんなもんだろうな。あんまり急激に変わらなきゃいいけど。


「キュウウウウウウウウウウ!!!」


『プラチナの抵抗を確認、速やかに説得を行ってください、現状ではどうなるか分かりません。不慮の事態が起きる可能性があります』


「どうしたんだ、なんで嫌がる?」

「コンコン!!」

「流石に狐語は分からねえが、どうしても嫌だってのは分かったぞ。中止して欲しいんだな?」

「コン!!」


 本人がそんなに嫌がってるのに無理に強化する必要もねえか、中止するとプラチナに負荷がかかるならその分俺が負担するしかねえな。どうやれば良いか分からねえけどこういう時はだいたい触れて自分に流し込むのが相場だってユーイーから学んだぞ。


「上手くいってくれよ」

「コン!?」


 光ってるプラチナの身体に触れる、やっぱり良い毛並みだな。


「うおっ!?」

「コンコン!!」


 なんか、凄まじい何かがプラチナの中で荒れ狂っているのを感じる、これを内部に留めておくのは確かにまずいのは分かるぞ。


「う、ぐぁっ、あああああああああああ!!!!」


 腕を通してその何かが流れ込んでくる、これが俺にどんな影響があるのかは分からないが。できるだけ受け取ってやるしかない、それがプラチナの願いだ。全部いけるか? 


「う、ああ、くそっ、俺じゃあ、足りねえのか」


 意識が薄れていく、容量オーバーに伴って頭がスイッチ切ろうとしてやがる、でもまだ、プラチナは、


「もう大丈夫だよご主人様、あての愛しい人」


 頬に柔らかい感触があった気がするが、そこまでが俺の限界だった。


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