自然とは自ずから然るべきようになるものである
「てことは何か? 別にだれの味方でもないのかお前らは」
「ソウダヨ、イマハウエニイルソンザイガツカッテルケドネ」
「そうなんだ、てっきり君らは神の手先かと」
「チガウ、スクナクトモ、メタルハチガウ」
メタル、こいつの名前か?
「で、メタルが協力してくれるって言ってるがそれでも消すか?」
「んーん、それじゃあ消さなくても良いね。僕の負担もぐっと減るから助かったよ」
そう言いながらグリンはゆっくりと根っこから腕を引き抜いた、その肘から先を置き去りにして。
「おま、え、その腕は」
「ああ気にしないで、流石に神ならぬ僕がセフィロトに干渉するには少しの無理は必要になるってだけだから」
「でもそれじゃあこれからどうするんだよ」
「僕はここでセフィロトを守るよ、せっかく奪ったのにすぐに奪い返されたら嫌だもんね」
「そんなこと一言も」
「言わないよそんなこと、これは僕がやりたくてやることなんだから」
こいつも一緒か、ウンターもそうだった。一番肝心なところは勝手にやりやがる。一言も俺には言っちゃくれねえんだ。
「じゃあメタル君、この木の操作盤を出してくれるかな?」
「ハイドウゾ」
「うんうん、ありがとう」
水で象った腕を使って器用に何かを打ち込んでいく球体の操作盤に何が書いてあるのか俺には全く分からない。
「仕上げに君が触れればこのセフィロトは僕たちのものになるよ。さあ早く、時間があまりないみたいだからね」
「分かった」
俺が操作盤に触れた瞬間に色が一気に変化する、白っぽい球体は瞬く間に黒く染まりそして姿を失った。
「これでどうなるんだ?」
「ふふ、見なよセフィロトを」
「こ、れは……!?」
俺が見慣れた大樹セフィロトは見る影もなく変質していた。幹は黒く染まり、葉は紫、そして黒いオーラのようなものまで纏う始末だ。
「これがクリフォト、君の力で反転した呪いの大樹だよ。かっこいいよねえ」
「クリフォト……それが名前か」
「違うよ?」
「違うのかよ!?」
「クリフォトはクリフォトだけど、個別に名前があるはずなんだよね」
「個体名があるのか、そんなの分かるわけ」
『おめでとうございます。隠しコンテンツ、クリフォトの解放を確認しました。クリフォト【アドラメレク】の使用権を解放いたします』
「うわっびっくりした、UMAの時以来だなシステムメッセージ」
「どうかした?」
「いや、ちょっと驚いただけだ。この樹はアドラメレクと言うらしいぞ」
「アドラメレク、聞いたこともないね」
『アドラメレク解放につきまして、ボーナスが進呈されます。以下の三つのうちからお選び下さい。
①使い魔ケムダー
②尽きぬ富を産む指輪
③八番目の鍵
なお、一定カウントを超えても選ばれない場合は自動的に選ばれますのでご注意ください」
いや、文面だけじゃ何にも分からないよね。ケムダーも指輪もあれだし。何より八番目の鍵って何だよ。アバウトすぎませんかね。
『使い魔ケムダー』
ー 牛型の使い魔。金色の牛は貪欲である、欲しいと思ったものはたとえ壊してでも手に入れようとするだろう。高い戦闘力と低い知能を併せ持つがために主人の度量が必要になる。力をつけすぎたケムダーはいずれ世界を欲する ー
『尽きぬ富を産む指輪』
ー おお、幸運な者よ。この指輪が有れば全ての貧しさはお前から消え去るだろう。代償? そんなものはない、好きなだけ使い、そして豪遊するといい。一つ言っておくことがあるとすればタダより高いものはないという妄言を忘れることだ ー
『八番目の鍵』
ー ∞と書かれた鍵。それ以上に説明のしようがない。なんの変哲もない鍵だ、それこそどこにでもあるような、どこにでも合うような、そんな鍵だ ー
「あー、これは確定ですわ。鍵一択」
名前だけじゃピンと来なかったがこれってあれだわ。マスターキーです。ありとあらゆる扉も宝箱も問答無用で開け放つチートアイテムだ。八番目の理由も分かった、確か有ったわファーストキーからセブンスキーまで。数字分好きなもの開けられる鍵が。あんなのキャラの部屋行って日記覗くくらいにしか使えなかったが、今となっては話が違うぜ?
「使用回数無限の万能鍵とか、攻略が捗るとかそういうレベルじゃないぞ。今この瞬間において俺に入れない部屋はなくなったということになる」
一歩間違えば普通に窃盗犯だが、まあそんなことを気にしている場合でもないだろうし。思う存分宝物庫に忍び込めるってもんよ。
『時間切れです、自動選択開始』
え? 10カウントとか数えないタイプか!? 鍵くれよ鍵!! 他の厄ネタなんて絶対いらないしクーリングオフだから。
『使い魔ケムダーを獲得しました』
うっそだろ。
「ぶもおおおおおおおおお!!」
「ただの暴れ牛じゃねえか!?」
目の前に出現した金色のメタリック牛が襲いかかってきやがった!?近すぎる!?
「下品な牛が、あてのご主人様から離れろ」
「ぶもっ!?」
「プラチナすまん、ありがとう」
「ご主人様、この牛食べても良いですか?」
「え? 食えるの?」
「ええまあ、肉と鉱石みたいなものなので」
蹴り飛ばした牛を見ながら舌舐めずりしてるの見ると、やっぱ獣なんだなあと改めて思う。
「良いぞ、あんなのいらねえ。お前だけいれば十分だ」
「えへへ、あてだけいればか……嬉しいな」
うわっ、なんか今ぞくっとした。一瞬だけプラチナがものすごい妖艶に見えたぞ。
「じゃあいただきますね。コーン!!」
あ、良かった。食うのは狐状態だったか。




