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食えないジジイは嫌いだ


 俺が切れる最強のカードは今の所【物質化】だ。今ある呪いの何が消費されるかは分からないが、それを気にして切らないなんて選択はしねえ。


「消えやがれ亡霊」

「お、良い感じじゃの。じゃあリリース」


 解放、しただと?


「なんのつもりだ」

「力を示されたからにはもう人質を取る理由はないじゃろう? だってお主が戦う力を見せないで終わるなんてあり得ないからのう。ちょっと張り切っちゃったんだよねワシ」

「そうか」


 人質がいないならべつに有限の切り札を切る必要はないな、それじゃあ。


「ユーホ、分かってるな?」

「奇遇ね、私も多分同じ事考えてると思う」

「「二回死にやがれクソジジイ」」

「ぎゃー!? 解放したのに!?」


 一度でも仲間に刃を向けてそれでただで済むわけねえだろうが。消滅させないだけ優しいと思え。


「お主らこんな老人を虐めて心は痛くないのか!?」

「ああん? 大切な仲間を人質に取るようなジジイはいくら痛めつけても心なんか痛まねえよ」

「この○○が!! イー姉様に百万回土下座して死ね!! お前、ごときが、軽々しく、近寄って良い存在じゃないんだからな!!」


 おっと、ユーホがバーサークモードに入ってるな。まあ良いか、一応俺を巻き込まない範囲の魔法に収まってるようだし。


「大切な、仲間、なんだ。へへ……なんか嬉しいな、置いていかれるような気がしてたから。そんな風に思ってくれてるんだ」

「コンコン!!」

「プラチナちゃんも嬉しいんだ、一緒だね」

「ユーちゃんはあれがなければと思うけれど、それを嬉しく思うわたくしもいるのが悩ましいところですわ」


 人質勢もなんかほっこりしてきたようだし、ジジイが原型留めてるうちにそろそろストップかけないとまずいか。


「ユーホ、そろそろ良いか?」

「はぁ、はぁ、少しだけスッキリしました。今はこれだけで許しましょうか」

「ワシこの子怖い……」

「じゃあ二度と怒らせないことだな」


 一度は許してやるが、二回目は何言われても消滅までやってやるよ。俺の生命線に手をかける愚かさを魂の底までたたき込んでやる。


「ここまでやれるなら、ワシの心配は要らなそうじゃな。覚悟も資格もあると認めよう」

「そりゃどうも、それじゃあさっさとセフィロトに連れてってくれ」

「ああ、ちょっと待つのじゃ」


 いつの間に移動したんだ、いつのまに俺の肩に手を置いてた。


「大いなる呪いを、大いなる願いを、そして、サバトグランの黄金を持っていけ」

「意味深なこと言ってまたなんか仕掛けるつもりじゃないだろうな」

「残念ながら今回はマジじゃ」

「え?」


 なんか、頭が揺れる、グラグラと、世界が、揺れる、


「あ、なんだ、これ」

「負荷に耐えられないということはないじゃろう、さあ体験するんじゃ。そして見据えるが良い、反逆者が戦うべき相手を」


 ああ、曖昧になる、俺は、なんだ、いや、俺? 違うだろう、()()()誰だ、ワシは。


「くそっ!? いつの間に入り込まれた!? 守りは鉄壁のはず、空間魔法はどうした!?」

「ご報告します我が王よ!! 聖人です、聖人が突如として街の中心に出現しました!!」

「聖人だと!? 今あいつらがここに攻め込んでくる理由などないはずだ!!」

「それが、あいつらは国王の首を寄越せとのたまっていまして。理由は王が知っていると……」

「理由、まさか気取られたか!?」

「そうとしか思えません。王よ決断の時です」

「いつか来るとは思っていたがまさか今とはな。良かろう、戦いはもう始まっているのだ」

「であれば、すぐに知らせを。全ての戦力を投入して聖人を討ちます」

「ああ、見せてやるぞ。これが人の力だと神を名乗る支配者に見せつけてやる。全兵器の使用を許可、ワシも出るぞ」

「はっ!!」


 腹心のネーガルが走っていった、あいつは最後までやるきる男だ。きっと全ての知らせは正しく伝わるだろう。だが許せ、ワシはお前に伝えていないことが一つだけあるのだ。


「ナックル、最初はワシの所だったぞ」

「そうか、寂しくなるな」

「待て待て、まだ死んでおらんわ」

「だが死ぬ、十三聖人が全てお前のところにいる。奇襲された時点で終わりだ」

「はっ、言いおるわ。それでも反逆者のリーダーか。助けを寄越すくらいのことは言わんか」

「無理だ、各個撃破が一番まずい。お前の遺志は余が継ぐ、だから安心して滅べ」

「全く、お前じゃなかったら殴り込みに行く発言じゃぞ」

「悪いな、あまり気は使えないんだ」

「良い。今はそれが言い、いつも通りが良い」

「そろそろ時間だ、これ以上は気づかれる」

「ああ、さらばだ。盟友よ」

「さらばだ、金剛のごとき王よ。その輝きを余は忘れぬ」


 まったく、これから死ぬというのに。なんでワシは一切の恐怖を感じなんだか。後に続く者がいるというのはこれほどまでに心を安らげるというのか。


「ま、それ以外の後継ぎも仕込んでおくんじゃがな。我が技術の粋を結集した最強兵器、黄金の勝利(ビクトリア)がきっと奴らを根こそぎにしてくれるじゃろうし」


 あれが起動するには時間がかかるが、その分起動したら誰にも止められぬ。あれはそういう風に作ったものなのだ。


「価値無き運命に、自由なき支配に、抗ってみせようではないか。人は本来縛られた家畜ではない、何よりも輝く金のごとき存在なのじゃから」


 ああ、その大望の成就が見られないのは残念じゃ。音が聞こえる、それは悲鳴、全てが壊れる最後の声。聖人という動く災害によって引き起こされた天罰がそれを成している。


「民の悲鳴を止めに行くのが王の仕事じゃ、さあ行くぞタロス」


 ワシが仕上げた最強の鎧、これを着ているかぎりそう易々と討ち滅ぼせると思うなよ聖人、最低でも三人は道連れにしてくれるわ。


「陛下、お目通り願います。私は【奇跡】と申します、畏れ多くも一番の数字を戴いております。どうか短い間ですがお見知りおきを」

「ほほう、最初から豪勢じゃな。まさか伝説がいの一番にワシに会いに来てくれるとは」


 一番か、よりによってこやつが最初とは。他の奴ならばいくらでもやりようがあったというのに。これが来てしまってはもう切るしかないではないか。


「起動せよ!!」

「ああ、駄目ですよ。あなたの天命はもう尽きたのですから」

「あ、が!?」


 何が起きた、ワシは、今、何を、された、どうして、ワシは、ワシを見上げている、ワシの鎧を?


「終わりです、さようなら」


 視界が暗転する、そこで終わり、命の終わり。物語は閉じ、登場人物は舞台を降りた。ワシは、俺に戻っていく。


「なん、てもの見せやがる……!!」

「ほほ、面白かったじゃろ?」

「最悪の気分だ、一回死んでんだぞ!?」

「あれがワシの最後の記憶、手も足も出ずに道半ばで死んだ愚か者の思いじゃよ」

「愚か? あの状況であれ以上のことができる奴なんかいねえだろ。すげえと思ったよ、きっちり次につなげてんじゃねえか」

「……そんな風に言われると泣いちゃいそうだからやめて欲しいんじゃが?」

「幽霊が泣けるのかよ?」

「はっ、言いおるわ。そら、用が終わったからセフィロトに行くぞい」


 俺の勘違いであって欲しいんだが、サバトグランのビクトリアってもしかして……

























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