表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/126

ティーアの真の姿

「……ティーアさんにお願いがあります」

「なに……そんなに改まって」


 料理にあんな特殊な効果が出るようになってるならもうなりふり構っていられねえ……多少不審に思われても良いから行動するしかない。


「俺のこと大嫌いって思いながら料理作ってくれませんか」

「え?」


 ……だって仕方ねえじゃんよ……デバフを無効化する効果が愛情で出るって言うのなら嫌われた状態ならでないんじゃないかと思ったんだが……駄目か?


「無理……無理だよ……そんなこと」

「そこを何とかなりませんか……!?」

「え……ええ……?」

「とりあえずは1回で良いのでお願いします!!」

「そんなあ……思えないよそんなこと……レヒト君のこと好きだもん」

「それが問題なんだよなあ……」

「もしかして……迷惑? 私がしてることって……レヒト君の負担になってる……?」


 やっぱこうなるよなあ……ティーアがいなくなるのは論外だけど愛情込められてデバフが無効化されるのも問題なんだよなあ……どうすっかなあ……このままだと決別イベントが起こるし。


「そうじゃないんだ……えっと実はお前の料理で俺に加護がかかるんだけど、それが俺には毒になってしまうというか……逆効果になるというか……」


 ある程度正直に話さないとな、二度とイベント起きなくなるのは困る。決別イベントはよほどの事がないと起こらないはずだけど起こってしまうとどうにもならないからな……


「私の料理でそんな……」

「今までずっと黙っててごめん……料理が上手くなればなるほどその逆効果が大きくなってきてな、このままだとティーアの料理が食えなくなるかもしれないんだ」

「ええっ……!?」


 世界の終わりみたいな顔してるな……俺に料理食わせるのがそんなに重大な意味を持つとは思えないが……それくらい好かれているということで良いのか……? ティーアの情報でまだ忘れてることがあったような気もするんだが……


「それじゃあ……もう無理しなくてもいいの……?」

「ん?」

「私が美味しいと思うとおりの味付けでも良いの?」

「んん?」


 なんだ……無理しなくても良い? 美味しいと思う味付けでも良い? どういうことだ……?


「……ちょっと話が見えない。もしかして今まで俺に合わせた味付けをしてたのか?」

「当たり前だよ、色んなところから分析してレヒト君以外の舌も実験台にしてようやくたどり着いたんだから」

「ちなみにティーア的には今の自分の料理って美味しいと思ってるのか?」

「全然?」

「……マジで?」

「マジで」


 これは、良い流れじゃないか? 


「そんなことをしなくて良い、ティーアが美味しいと思うものを作ってくれれば良いよ。その方が俺は嬉しいな」

「本当に? それで良いの? 1回忘れたらもう戻せないよ? それでも良いの?」


 4つしか技を覚えられないモンスターみたいなこと言うな……でも俺的には全然問題ないな。昔のままでもメシ自体は美味かったし。


「良いよ、それで。その方がずっと良い。無理なんてしないで良いんだ」

「レヒト君……!」


 なんか感動の展開みたいになってるけど……俺の都合を押しつけてるだけなんだよな……後で埋め合わせしないと……


「それじゃあまた作るね……これからは私のやりたいように作るから」

「おお、そうしてくれ」


 あれ? なんでいきなりティーアの身体から黒いオーラが立ち上って……なにあのオーラ? あんなもの出る状態ってあったっけ?


「ふふふふふ……あははははははははははははは!!!」

「ひぃ……!?」


 え?


「楽しい!! 楽しいわ!! 自由に料理するのってこんなに楽しかったのね!!」


 ……今まで抑圧してきたメシマズ力が臨界点に達してスパークしている、まるで魔女……いや違うな……これは凱旋だ……王の帰還だ……!! メシマズを極めし者……メシマズ女王が帰って来たんだ!!


「これが今の私の全力……全部出しきったわ……」

「す……すげえ……!!」

「ふふ……こんな私もレヒト君は受け入れてくれるんだ……嬉しい……!!」


 言わばクッキングハッピーみたいな状態だったな……テンションがおかしなことになってたけど別に気になる程でもない。もっとクレイジーでマッドなサイエンティストもこのゲームの中には居たしな。


「……見てみるか」


 見た目はまともに見えるのがすげえ……これは進歩なんだろうな、前は見た目も真緑とか真っ赤とかだったから。さてさて……どんなもんか……


『トキシックランチ』

― これは人類には早すぎる味覚である。しかし、万が一これを味わえるのならばそれは最上級の幸運であろう。毒も過ぎれば薬になる……こともあるかもしれないが、挑むのならばあらゆる解毒の手段を用意することが望ましい。それが気休めであると知っていてもあるとないのでは大きな違いだ ―


「いやほんとすげえな……こんなもん最初の村で作れていいのかよ……」

「食べてみて?」

「あ、うん。喜んで」


 さあ……俺に大いなるデバフを……!!


「う、」

「う?」

「うまあああああああああああああああああああああい!!」


 なんだこれ!? なんだこれ!? こんな美味いもんあるのかよ!? 信じらんねえ!? 今まで食ってたもんが全部過去になったぞ!?


「えへへ……でしょ? 毒って美味しいんだよ?」

「え? 毒?」

「うん、毒」


 いやいや落ち着け……大丈夫だ……きっと大丈夫な毒だ……死んだりしない奴……まさかティーアが即死料理なんてつくるわけない……


「これって他の奴が食ったらどうなるの?」

「死ぬよ? だから私とレヒト君しか食べられないの。少しずつ身体を慣らした甲斐があったよ、普通の毒なんかもう効かないね」

「……え?」

「少しずつ量を増やして耐性をつけたから気がつかなかったかもしれないけど……上手くいって良かったよ」


 ……ステータス


【肉体改造・毒免疫】


 ……マジか






















 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ