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我らは誇り高く滅んだのだ、貴様にそれを継ぐ資格はあるか?

「王様だって言うんならなんであんな場所でウロウロしてたんだよ、初めからここに居れば良かっただろ」

「それがのう、あそこに居る間はとんと歩き方を忘れてしもうおってな。これも神の封印の一種じゃったのかのう」


王様っぽい話し方忘れてんぞ、こっちが素でさっきのは演技か。


「まあそれも今はどうでも良い話、反逆者よ。滅びしこの都に何を求める」

「とりあえずセフィロト折らせてくれ、あと物資とかあれば欲しい」

「ほう、セフィロトの機能に気づいておるのか。察しが良いというよりもそっちの聖人からの入れ知恵か」

「はは、元を付けて欲しいな。僕にはもう神威を振るうことはできないよ」

「それもまたどうでも良い、お主の物語はもう終わりじゃ。あまり大きく動くと掴んだはずの普通もこぼれ落ちるぞ?」

「こりゃ手厳しいね、それでも僕は協力を惜しまないよ。それがせめてもの罪滅ぼしさ」


 物語はもう終わり? なんのことを話しているんだ、いや今気をとられるべきじゃないな。とりあえずはセフィロトだ。


「で、セフィロトに行かせてもらえるのか?」

「うむ、それは許可しよう。むしろそれをして貰わねば困るというもの。あとは物資という話じゃったがここにあるものは全て使って構わんぞ、一つだけ条件があるがの」

「条件? なんだ?」


 なんか悪い顔してんな、交換条件ふっかけられるんじゃねえのこれ。交渉スキルはそこまで自信ないな、上手く損を避けられれば良いが。


「ここの物資を使うということはサバトグランの系譜であると言うようなもの、資格なき者にそれを許すことはできん。サバトグランの全てを受け止めろとは言わん、それは傲慢だ。だが、最低限の力は示してもらわねばな」


 あ、戦闘ですねこれ。話し合い(物理)とは思いもしませんでしたわ。でも見えるようになっただけの幽霊に戦闘ができるのか?


「ふふん、お前が戦うのかという顔じゃな。違うわ、戦うのはこっちじゃ。出でよ神殺しの蜘蛛(ライン・ヤーガ)

「ちっさ」


 小指の先みたいな蜘蛛出てきてこいつと戦えとか言われても、そんなもん踏んだら終わりだろ。これを倒せば終わりなら楽勝すぎじゃん。


「じゃあ踏みつぶすわ」


 せーの。


「わたくしの騎士、それ以上近づくと死にますわ」

「うわっ!?」


 ユーイーに首掴まれた、そういえばお前に掴まれたら俺は力負けするんだったな。でもこんな小さい蜘蛛に警戒もクソもないように思うが。


「あれが小さいのは見かけだけ、言い換えるなら見た目しか小さくないってことですわ。あれは空間魔法の影響下にある、本来はもっとずっと大きいでしょう」

「ほぉ、優秀じゃのう。空間魔法はサバトグランと一緒に滅んだと思ったが」


 じゃあ何か、正確な大きさの分からない大蜘蛛とバトルしろっていうのか。しかもその蜘蛛は空間魔法を使うと。


「キツいな、俺は今こいつと殴り合える気がしない。というか、薄々気づいてると思うが少し特殊な手順を踏まないと俺は戦えない。ティーアの料理を食べるとかな」

「ごめんレヒト君、もう残って……」

「ああ、それは良い。俺のせいだからティーアが責任を感じる必要は無い」


 ないものを求めても仕方がない、補給を考えなかった俺が悪い。ここはあるものを使ってやるしかない、それもまたRPGだろう。とりあえずは新加入したメンバーの能力を見せてもらいたいところだ。


「さてと、それじゃあ何を使おうか。俺としては背中にいる奴に期待してるんだけどな」

「え? 僕?」

「戦う力を全部失ったわけじゃないんだろ? 見せてくれないか」

「うーん、無限じゃなくなった力を使うのはもったいない気がするけど。信用の為なら仕方ないかな、僕にできるのはこれくらいだよ」


 そう言ってグリンが俺の背中から降りる、全然普通に立つのね。短時間なら問題ないっていう話は本当らしい。つーか今さらっと無限って言った? 聖人って力使いたい放題なのか。


「湧き上がれ」


 なんで室内で水の柱ができるんだとか言ってはいけない、これは魔法なんだ。しかし、水の柱なんか作って何をしようって言うんだ。攻撃目的じゃないのか。


「散れ」

「ぶわっ!?」

「あ、ごめんね。細かい調整は苦手で」

 一気に水が弾けた、近くに居た俺はまともに水を浴びたわけだ。ずぶ濡れだぜ、だけど何をしたいかはよく分かった。霧だ、霧が出たことによって何がどこにあるかがよく分かる。つまり蜘蛛の輪郭が見えてきた。


「いや、でかいな」

「大きさに驚いてる場合かのう、そろそろ動きだすと思うぞ」


 突風が吹いた、いや、蜘蛛が動いたのか。さっきまで見えていた輪郭はすっかり消えてしまった。え? これホントに倒せるやつ? 思った以上にキツいぞ。


「上!!」


 ユーホの声で上に視線を向ける、でも見えねえよ。霧でかろうじて見えてたのが動いちまったらもう紛れちまって分かんない。


「水が既に大量にあるのは楽ね、凍りなさい」

「うっへえ、規模がすげえな」


 天井までの空間を氷で埋め尽くしやがった、これなら見えようが見えまいが関係ないな。あとはこれを砕けば終わりか。


「待って、お姫様達はその位置で、ティーアちゃんは半歩後ろ、プラチナちゃんは狐に戻って、君は一歩前へ」

「え?」

「早く!!」

「お、おう」


 グリンの言葉に従って動いた瞬間に俺の目の前を赤い光が通った。それが通った場所ははっきりと赤くなっており焦げ臭い匂いがする。


「レーザーかよ!?」

「ほっほっほ、空間魔法と巨体以外の武装がないなんて一言も言っておらんぞ?」

「クソジジイめ!!」


 あっぶねえ、氷も貫通してぶちかましてきやがった、当然氷は割れて蜘蛛は自由の身になっている。また見失ったか。


「あんなん即死攻撃だろ、当たったら終わりだ」

「そうでもないよ、お姫様なら分かるでしょ」

「ええ、あれは光魔法の応用に過ぎません。それにあれは放った時には当たる類の攻撃です、もし跳ね返されたら撃った側もタダではすまないもの。であれば跳ね返せば良い」


 反射? 魔法を? そんなことできんのか? 少なくとも俺は知らないぞ。


「さあ、次が来るよ。次は全員の頭に狙いがつけられているからお姫様が失敗したらみんなの頭が果実のように弾けるね」

「何度も言っているでしょう、タネの割れた魔法など恐るるに足らないと」

「準備は良い? 3,2、1」

「鏡面生成、展開」


 チュンって言う音が聞こえるのと爆発音が聞こえるのが同時だった。俺は死んでないし、これは上手くいったってことで良いんじゃないか。


「見事、と言いたい所じゃが。注意を疎かにしてはならんぞ?」

「レヒト君、捕まっちゃった。ごめんね」

「コン……」

「ユーちゃんの足手まといになるなんて」


 おいおい王様、なんで三人を人質に取ってるんだ。蜘蛛は倒しただろう。


「話が違うぞ」

「おや、戦うのはこっちじゃと言っただけでワシが参戦しないとは言ってないはずじゃが?」

「この……」


 金で作られた糸のようなもので三人は縛られている、それに金色の刃がそれぞれの首に当てられていた。完全に生殺与奪は握られている。


「良いか、神は平気でこういうことをするんじゃ。正義の名の下に、運命という免罪符の下に、こんな時お前はどうする? 命乞いをするか? それとも見捨ててワシに攻撃するか? さあ選べ」

「選ばねえよ、選択肢を狭めるのが神の常套手段なんだろ? じゃあ第三の答えを出すしかねえだろ」


 切り札になるっぽいから切りたくなかったけどやるしかないな。ここで切らない切り札なんて要らねえだろ。


「後悔しろよジジイ」






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