要塞攻略のすゝめ 機動力編
「というわけで要塞城イヴに行きます」
「どういうわけか説明をしてくれるかサー・レヒト」
え? 必要なの?ビクテロなら二つ返事でオッケーしてくれると思ってたのに。
「実はこの鐘の本来の持ち主に用があります」
「持ち主を知っているのか?」
「ええまあ、鐘の持ち主幽閉されたユーホ姫です」
「それでは助けに行くというわけだな?」
「違います、ユーホがキレて城を吹き飛ばすのを止めに行きます」
「はぁ!?」
「たぶん遅かれ早かれ我慢の限界が来て爆発しますね」
そのせいであいつは伽藍城の主になったわけだし?
「物騒な話してるねえ? ちゃんと戻ってくるんだろうね?」
「大丈夫だよ母さん、俺は絶対に戻ってくるから」
「孫の顔を見せてくれるって信じてるからね」
それは……その……まあおいおいってことで。
「で、内乱中のイヴを突破したいんですが今はちょっと厳しいと思っています」
「何故だ? 力は十分すぎるほどだと思うが……」
「いえ、足りないのは移動速度なので。流石にシルバータンカーでも今の人数を運び切るのは骨が折れます」
「確かに……だが馬車という手もあるのではないか?」
「馬車はちょっと……」
馬車に乗ってると一定確率で盗賊に襲われるようになるんだよな……流石にめんどくさい。
「そうか……サー・レヒトのことだからきっと深い考えがあるのだろう」
「すみません、ですのでもう一匹UMAを捕まえようと思いまして」
「もう一匹!? あのような名馬がまだいると言うのか!?」
うん結構いるよUMA。
「今回狙うUMAの名前はクワイエット・ベルディアです」
「なんだそのカッコいい名前は……!!」
「ええ、名前に劣らず素晴らしいUMAですよ。クワイエット・ベルディアは」
なんせ最高速度は他の追随を許さず、トップスピードに乗るまでも一番早い。スピードの一点において最強のUMAだと言える。
「かなり虚弱ですが」
「どういうことだ?」
「シルバータンカーと違ってタフさは無いんです。ケガをしやすいと言いかえても良いです。繊細なUMAですから」
「そう……なのか」
その代わりと言っちゃなんだが、クワイエット・ベルディアは走るだけで攻撃判定が出るから近寄れる奴もあんまりいない。
「それで、どうやって捕まえるんだそんな名馬」
「シルバータンカーを囮にします」
「おとり?」
基本的UMAは競走が大好きだ、それが同じUMAともなればなおさら……これぞ鮎の友釣りならぬUMAの競走狩りだ。
「……」
ダサいな、やめよう。
「さあ!! ここで左回りにずっと走っていてください!!」
「わ。分かった」
「げひひん!!」
クワイエット・ベルディアは何故か左回りでずっと走っていると現れやすいという謎の習性がある、これが意味することはちょっと分からないがまあそういう仕様があるのだから利用させてもらうとしよう。
「変な音が聞こえてくるまでずっとですからね」
「変な音?」
「ええ、ヒュンヒュン音がしたら成功です」
「一体それはなんの音なんだ?」
「まあ見れば分かりますから」
まあ見れば一目瞭然だからなマジで。
「行くぞ!!」
「げひん!!」
「そんでティーアとプラチナは俺の近くで待機しててくれ、タイミングが来たら指示を出す」
「分かったよ」
「コン!!」
ぐるぐると走り続けるシルバータンカーとビクテロ。何度も何度も回り続けている。
「……来ないな」
おかしいな、結構早めに来ると思ってたんだけど……
「サー・レヒト!! まだか!?」
「もう少しお願いしまーす!!」
左回りの上にシルバータンカーだぞ? なんで来ないんだ……?
「コンコン!」
「来たかっ!?」
ああ、来やがったな。「生きた斬撃」「緑マスクの切り裂き魔」「走ってる間は無敵」の異名を持つUMAが。
「シュフィーン!!」
緑がかった体毛が顔から耳にかけてあるせいでマスクをかぶっているように見える姿は見間違えようはずもない。
「待ってたぜクワイエット・ベルディア!!」
「フィーン!!」
こいつは早すぎてまず捉えられないからスピードが乗る前に速攻で勝負を決めるしかない!!
「プラチナ!!」
「コン!!」
まず足場を悪くして。
「ティーア!!」
「うん、もう始めてるよ」
毒毛糸を持っても大丈夫なティーアにはクワイエット・ベルディアの移動ルートを制限するように糸を配置してもらった。
「あとは俺の所に来るだけだよな!!」
「シュフィーン!!!!」
正面からクワイエット・ベルディアが走ってくる、このまま轢かれたら俺は死ぬが……俺の方に近づいてる蹄はもう一個あるんだ。
「逆十字!!」
「待ってました!!」
一気に景色がスローモーションになったように見える、この状態ならいけるぞ!!
「うおらああああああああああああ!!!」
「フィーン!?」
こいつは一度乗ってしまえば一発で大人しくなる、その分乗るまでが大変だからな。
「シュフィ……ブルルル……」
「よし!! 捕まえた!!」
『野生の名馬クワイエット・ベルディアが大人しくなりました』
「これで機動力は確保できたな……」




