里帰り
「はー、ようやく着いた」
ゲームにはないルートの道がありすぎてめっちゃ迷った。その代わりにできた時間でビクテロとプラチナが打ち解けたのは僥倖だったな。
「ここがサー・レヒトの故郷か……」
「ご主人様の……ふふ」
そして聖弩ステフの性能も試してみた、そしたら矢が本当に爆発しやがって矢の消費がマッハだということに気づいた。一回だけプラチナの矢を使ってみたら想像をはるかに超える大爆発を起こしやがって死にかけたんで封印を決意した。
「まあ悪いことばっかでもない」
威力は確かに段違いになった、なんなら本人やってた爆発に近いくらいだ。毒も適応されるみたいで毒爆発になってえげつない毒ガス地帯を作り出しやがった。
「さて……とりあえずは家に行こうかな」
行方不明になってから結構経ってるから心配されてるだろうな……されてなかったらそれはそれでキツいが……
「ただいまーってあれ?」
誰も居やしねえ……そんなことあるか? 親父かお袋が居ると思ってたんだけどな
「あ? 待てよ……今は……」
最悪……いや最高のタイミングで戻ってきたな俺……これで悲劇を一つ減らせるぞ。旅に出る前のイベントで村を一回捨てて避難するって奴がこれだけど、スキップできればニケはもっと強い状態で旅に出れるはずだ、それにここには思い入れもあるしな。
「サー・ビクテロ、プラチナ、近いうちにここをモンスターの大群が襲います。それを倒したいと思いますが……どうでしょうか」
「サー・レヒトの故郷を守るのならオレはいくらでも手を貸そう」
「いずれあての故郷になる場所ですからね」
断られるとは思ってなかったけど良かった……これでもうほとんど勝ったようなもんだな。
「じゃあ落とし穴掘りましょうか」
「え?」
「へ?」
「落とし穴ですよ」
そう、今回のイベントの必勝法は落とし穴にモンスター全部落として毒と爆破で殺し尽くす。それが多分一番早い。
「サー・レヒトはどこからどれくらいのモンスターが来るか分かるのか?」
「分かります。あっちから百体ほどが一気に走ってきます、牛系と猪系のモンスターの混成ですね」
「もう驚かないぞ……しかし百体ともなると相当大きな落とし穴が必要になる。それを三人でできるとは……」
「できますよ、必要なのはサー・ビクテロの逆十字とプラチナの鉱石操作だけですから」
「そ、そうか……それなら良いのだが」
「手順はこうです、走行ルートに深い溝をつくります。奴らは一定以上のジャンプはできないうえに方向転換をしないので溝に次々と落ちていきますね」
「溝はどうやって作るんだ? レディ・プラチナが出来るのは鉱石の操作であって土の操作ではないぞ?」
「鉱石で蓋をして下方向に爆発の威力を向けます、溝の形に鉱石で型を作ってそこの土を吹き飛ばす形ですね」
「なるほど……?」
「やってみれば分かります……とはいえプラチナの鉱石の硬度次第なので不安はありますが」
「あてに任せて!!」
不安なので実際にやってみた。
「撃ち込むぞー!!」
「はーい」
少なくなってきた矢はティーアの家にあったものを拝借した、このままでも全部踏みつぶされるし有効活用しなくちゃな。
「どうだ?」
「良い感じ!! 穴ができてるよ!!」
「よっし!!」
これを繰り返せば真横の深い溝ができる。そんでだ。
「サー・ビクテロにお願いしたいのは逆十字を使って逃れたモンスターを溝にたたき落として欲しいってことです」
「落とすだけで良いのか? 仕留めることもできると思うが」
「良いんです、落ちた奴らはもう死ぬだけなので」
一番重要なのは俺のステータスが上がって矢の連射速度が上がることだからな。
「そうか、ならいい。それで来るのはいつになる?」
「分かりません、それは明日かもしれないし、三日後かもしれません」
「できれば準備は長い方が良いな……」
うんうん、それは俺もそう思う。
「ご主人様!! 足音がするよ!!」
「え?」
今!? まさかとは思うけど今なの!?
「うっそだろ!?」
「ほんとだよ!! あての耳を疑うの!?」
「信じる!! サー・ビクテロ!! 状況が変わりました今すぐ逆十字を発動してください!!」
「分かった!!」
発動を確認したら……
「プラチナ!! 音はあっちで合ってるか!?」
「うん!! でも違うよ!!」
「何が!?」
「百じゃないよ!! もっともーっとたくさん来てるの!!」
「マジかよ!?」
視線を向けた先にはものすごい量の土煙が上がっているのが見えた、確かに百体じゃあそこまでにはならないか……地平線が土煙で見えないもんな……
「出し惜しみはなしだ!! プラチナは鉱石の棘をできるだけ展開してくれ!! サー・ビクテロは思う存分攻撃を!! 私の矢に巻き込まれないように気をつけてください!!」
「分かった!! やるだけやろう!!」
「いっくよ!!」
ビクテロの隕石とプラチナの棘で足どめはできるはずだ……後は矢を全部ぶち込む。
「こいやああああああああああ!!!!」




