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1ポイントを笑う者は1ポイントで死ぬ

「はぁっ……はぁっ……見たか……これが俺の力だ……!!」


 犬を叩きのめしてどうにか倒したとき、俺の体身体もかなりボロボロだった……血もかなり流れてしまっている……やべえ……マジで死ぬかもしれねえ……


「でも……相討ちってわけじゃねえな……イベント通りだとすると俺はもう死んでいるはずなんだけどな……なんでだ?」


 一応ステータスとかも確認する。【流血】【打撲】【骨折】【擦過傷】【挫傷】とかのダメージ表記がずらりだ……まじで満身創痍だな……


「マジかよ」


 そして生命線の体力の数値を見ると残り1ポイントだった。


「……1ポイント弱いとか言ってごめんな、これが無かったら死んでたわ」


 そして無視できないことが一つ。それは流血の状態異常の効果がまだあることだ、これは一定時間ごとに体力が減る。つまりこのままだと俺は……死ぬ。


「血止めねえと……本気で死ぬぞ……何か縛るものとか……ないか……」


 あたりを見ても雑草とかばかりで長い草とかロープ的なものは見当たらない、まずいぞ……なんかフラフラしてきた……血が足りねえ……


「あ」


 地面が浮き上がって? いや違うな……俺が倒れているのか……意識も朦朧としてきた……死ぬのか……俺……駄目だ……ぼんやりしてきた……


「おい!! 居たぞ!! 早く治療を!!」


 ああ、助けか……遅えよ……俺が英雄になっちまうじゃねえか……


「……ん……生きてるか」


 目を覚ませたってことは生きてるってことか……死ななくて良かった……あっぶねえ……マジで危なかった……でもまあギリギリでも生き残ったのが重要なんだ。


「あ? 誰だこいつ……?」


 なんか俺のベッドに突っ伏して寝てる奴いる……ティーアじゃないな……え? マジで誰……金髪の女なんて居たか……?


「……全然思い当たる節がない、こんなキャラ見たこともねえ……いったい誰なんだ」

「ん……あれ……寝ちゃって……」


 起きやがった……誰なんだこいつ……


「あ、起きてる……!!」

「……おはよう」

「――!!」

「ぬわああ!?」


 飛び込んで来やがった!? まだ傷は塞がってねえの殺す気かこいつ!?


「ありがとう!! ありがとう!! 君がいなかったらテナがどうなってたか!!」

「お、おう?」


 テナって誰だよ……テナ? ああ、主人公の弟がそんな名前だったような……


「ん? てことは……お前ニケか」

「そう!! もうなんてお礼を言ったらいいか!!」

「は?」


 待て待て……確かにまともに会ったことはなかったが……主人公の位置に居る奴が女? いやいやまさかそんなことが……


「どうかした?」

「いや……なんでもない……で、なんで俺の部屋に?」

「少しでもできることをしようと思って……それで看病を……」

「してて寝たと?」

「う……うん、えへへ……」


 正当派ヒロインみたいなことをしやがって……


「ああ、そういえばティーアには会ったか?」

「え? ああ、いきなり訪ねてきて驚いたけど普通におしゃべりして終わったよ。なんでティーアちゃんを私のところに?」

「……なにかおかしなところはなかったか?」

「全然」

「そうか……ならいい」


 社会性に問題が出るくらいおかしくなってる訳じゃないな……普通におしゃべりができるならまだ引き返せるか……


「それでお礼をしたいんだけど……何をしたら良いかな」

「え? 良いよ別に。もう十分だからお前はお前がするべきことをしてくれ」

「そ、そんな!?」


 いやぶっちゃけ主人公が寄り道しちゃうと世界がやばいっていうか……早めに強くなってもらった方が良いから俺に構わないで欲しい。早くイベントを進めて使命に目覚めて欲しいっていうのが本音だ。俺は俺のやり方で冒険するからこいつの道とはたぶん交わらないし、というかこいつと同じ戦い方なんて無理だし。


「恩人になにもしないなんてそんなこと……!!」

「あー、そうだなあ……それじゃあ俺をお前とお前の弟の恩人って立場で居させてくれよ。礼をされたらそこで俺とお前の貸し借りはチャラになるだろ? それだともったいないから貸し1つってことで終わりにしてくれ」

「えっと……どういうこと?」

「とりあえず礼はいらない、感謝だけで今は十分ってことだよ」

「でも!?」

「でもはない、この話はこれで終わりだ。良いな?」

「う、うん……」


 よーし、勇者に貸し1つ……作ってやったぜ……これはでかいカードになるぞ……将来困ったら助けて貰おう。手札は多い方が良いしな。


「あ、それとこれ」

「……棒?」

「君が犬を倒した棒だよ、なんか勝手に君のところに戻って来ちゃうみたいで……」

「なにそれ怖い……」


 赤黒く変色した棒、もちろん犬の血ですけど。それになんでそんな曰く付きの効果があるんだ……あれ? もしかして……


「持たせてくれるか」

「うん、はいどうぞ」


 棒を受け取ると頭の片隅で音楽が聞こえた。おどろおどろしい曲だ……これが流れるときっていうのは……


「確認するか……」


 『血塗られた木の棒』 

― 運命に打ち勝った者が使ったなんの変哲もない木の棒。死の定めを運ぶものの返り血で赤黒く染まっている。本当にありふれたものであるが、運命を打ち砕くものは大抵平凡だ ―


「なんかかっこいい説明文ついてる……!!」


 え? あの犬そんな大層なものだったの? 確かに死にかけたけど……文章見る限り死神的なサムシングだったってこと? あれ? まだ説明があるな……


【狂犬の呪い】【犬の敵対心アップ(反転)】【追跡】【致命傷確率増加(反転)】


「……うん、そんなのあったわ」


 禊ぎイベント……倒した相手に装備が呪われたから浄化をかけてもらいましょうっていうイベントだ。特定のタイミングで1回しか起こらないからすっかり忘れてた。もしかして一定確率で呪われるようになってるのか……


「まあ……解く気はないけど」


 なんならじゃんじゃん呪って欲しいくらいだ。













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