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虫殺しの力


【虐殺の烙印・虫(反転)】

ー 虫を大量に殺したものに絡みついた呪い。虫から受けるダメージを大幅にアップ虫に与えるダメージを大幅に軽減。虫を殺した武器の重さを加算。

虫と雖も軽んずるなかれ、命を奪った罪には変わりがない。心せよ、お前の所業は決して許されるものではない。報いは必ず受けることになる ー


「……これかあ」


 謎だった呪いの正体が分かってスッキリしたのと、結構ヤバい感じの呪いだったので引いたのが混同してちょっとテンションが迷子になってる。


「どんな手段を使ったのかは分からんがお前が倒したのは確実だな、これでお前にも試練を受ける資格があると認められたわけだ」

「……試練?」

「いわゆる受難って奴だ、試練を課されて乗り越えた分だけ祝福を受けられる」

「え゛?」


 それただの罰ゲームなんですけど……!?


「今回は俺と半分ずつって言ったところか」

「辞退とかって……」

「できないぞ、神は理不尽だ。死ぬまで続く」

「……ガッデム」


 なんてこった……神からの祝福とかそんなの永続バフに類に違いない、絶対に受け取りたくない……なんなら神から呪われたい。


「見ろ、光が差してくる」

「うわ……本当だ」


 と思ったらステフだけを照らして俺は普通にスルーされた。


「……」

「私には資格がなかったということですかね」

「良かったな、なんとかなったみたいだぞ」


 ありがてえ……また制約が増えるのかと思った……


「そういえばそのボウガン……なんか変じゃないか? 聖人としての感覚が鈍ってるからよく分からないんだが呪われてないか?」

「まさかそんな……」


『ありふれたボウガン』

ー 安価なボウガンであるがその性能は決して侮ってはいけない、普通の武器こそがもっとも多くの命を奪うものなのだ ー


「なんともないですって、青い体液のせいでへんな感じに見えるだけですよ。これは近くの街で買ったものですよ?」」

「そうか……気のせいか……」


『使徒の血』

ー 聖職者のみが戴くことを許された聖なる血、それはある種の奇跡を孕む触媒である。しかし、万が一聖職者以外がこれを手に入れることがあったならそれは神に弓引くことと同義である ー


「……ステフさん、これ気味悪いのであげます」

「得体の知れない虫の体液が付いた武器なんか持ってられねえか……じゃあ浄化してやるよ。俺の祈りは無駄でもこっちの聖油なら大丈夫だろ」

「え、ちょ」


 あの爆発してた油だよな? それってほぼほぼニトログリセリンなのでは!?


「遠慮するな、俺たちはもう戦友だ」

「爆発されると困りますから!!」

「しねえよ、あれは俺の祈りありきだ」

「あ」


 うわあ……油と体液でどろっどろに……


「これであとは水で洗えば大丈夫だろ」

「はぁ……ありがとうございます」


 ステフが腰の水筒から水をかける、すると確かに血と油の混合物はボウガンから滑り落ちた。


「驚きの洗浄力……」

「ま、こんなもんだろうな」


 ああ良かった……これで使徒の血とかいう意味の分からないものは俺から消え去ったわけだな


『聖弩ステフ』

ー 聖人により祝福を受けた弩、水、使徒の血、聖油を使って行われた最も古き儀式により完全なる聖別を成し遂げた。ちなみにこの弩より撃ち出された矢は爆発する ー


「……ありがとうございます」

「礼なんか言うな、俺が勝手にやったことだ」

 

 マジでそうだけどな……やっぱ爆発すんじゃねえか……


「俺はこの死体を処理しなくきゃならん、寝てるやつら起こしてさっさと行け」

「分かりました、お達者で」


 こんな濃いキャラが本編に登場しないなんてのはもったいなかったな……出てたら絶対人気出てたと思うんだが……それとも出られない理由でもあったのか……? 今から死ぬとか……まさかな?


「いやいや……どうやったら死ぬんだよあいつ」


 グレンデルを正面から爆殺するような奴が死ぬ姿とか全然想像できないし。


「起きろプラチナ」

「はっ! ご主人様!?」


 まずプラチナ。


「サー・ビクテロ、そろそろハルマゲドンの時間ですよ」

「なんだって!?」


 次にビクテロ。


「さあ行きましょう、そろそろ私の故郷に一回帰還したいんです」


 本格的に動くんだったら流石にティーアがいないと厳しくなってくるだろうし、一回帰るのは絶対に必要だ。


「はっ! ご両親に挨拶……!!」

「そ、そういうのはちょっとオレ達には早いんじゃ……」

「違います、生存報告を兼ねて仲間を迎えに行くだけですからね?」


 変なフラグを立てると後でめんどくさいことになる、それはニケで思い知ったことだからな。


「シルバータンカーに乗れば2日くらいで着きますから」

「結構な距離だな……」

「これでもすごく早いんですからね。街で準備を整えたら行きますから」


 ティーアが加入したら逆十字と合わせて俺の戦闘力が上がりまくるぞ……ふふふ……楽しみだ……!!


※※※


「行ったか……げほっ……」


 ステフの口から血が吐き出される、腹に空いた穴は確実にステフの命を蝕んでいた。


「まだ……だよなあ? 知ってるぜ……お前は前座だってなあ……なんせこれは三回目だからな……前回は二回殺さなきゃいけなかった……今度は三回だろ……?」」


 グレンデルの亡骸の上に光が差す。


「この光は……目標だ、これに差された奴は標的になる。あいつは大丈夫で良かった……こんなことに巻き込んじまったら死んでも死に切れねえ……一応聖別した武器は渡しておいたが……せめてその旅に幸あれと祈るほかねえな……何に祈ればいいかはもう分からねえがな……」


 天上から降りてきたのは人型の異形、ねじくれた鎧とでも形容すべき歪な姿に純白の羽を持ったアンバランスな存在だった。


「はっ……三番かよ」


 その異形の胸には三の数字が刻まれていた。


「ぐらんど……くろす」

「良いぜ!! やってやるよ!! これが最後の爆裂十字だ!!」


 数日後に焼け焦げた十字架がここで見つかることになるが、そこに死体はなかった。























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