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爆発した球

「なんだこれは……僕の研究室を花まみれにするとは良い度胸だな……」

「……フラメル、この球なんなんだ……」


 爆発の瞬間に材質が花? になったおかげでダメージはなかったが部屋が花まみれになった……


「ああ、それを見つけたのか。それは『不確定の球体(クァンタム)』と呼ばれる出土品だ。興味深い性質を持っていたのでなんとなく持っていたが……気に入ったか?」

「いや気に入ってはいないけど」

「そうかそうか気に入ったか、ではそれを僕からの餞別としようじゃないか」

「いらねえって言ってんだよ!! こんな危ねえもん!!」

「良いから受け取れよ!! 僕も正直困ってたんだよ、不安定すぎてちょっと扱いきれないなくてな」

「それを押しつけるとか正気か?」

「正気さ、僕はお前ならそれをきっと使いこなせると信じてる」

「薄っぺらい信頼どうもありがとう、でもいらねえからな」


 こんな爆弾持ってられるか……これならマジモンの爆弾持ってた方がまだマシだわ……いつなに起こるか分からねえもんを武器になんてできるわけねえだろ……


「ふふふ……本当に良いのかな? それは未知の物質で出来ている……上手く手綱を握ればお前は最強になれるかもしれないのに」

「俺は別の方法で最強になるんで良いです」

「まあ待て……僕の話を聞いてからでも遅くはないだろう。それが取れた場所を聞いたら驚くぞ……その球の出土場所は古代遺跡の中にある都市の地盤だ……何かの遺物アーティファクトである可能性が高いということだ。この価値が分かるな」


 遺物……ねえ、それただのランダム武器なんだよなあ……その古代遺跡の中の都市って遺跡街アンテークのことだろ? そこから取れる武器は確かに物によってはものすごい個性をもった武器になるけどナチュラルに呪われてるから使いにくいうえに呪い解けないっていう迷惑加減だったな。ん? 呪い?


「……この球呪われてるよな?」

「……」

「捨てようと思ってもここに戻ってきちゃうんだろどうせ」

「……」

「その沈黙は肯定になるからな?」

「……そうだよ、捨てても捨てても戻ってくるんだよそれ」


 しかし、しかしだ、アンテークの遺物となるとその呪いの強度はなかなかに得がたいものがあるぞ……呪いの種類によっては俺にとって本気で最強武器になる可能性すらある。


「引き取って欲しいんだよな?」

「まあな……でも断るだろ」

「引き取ってやっても良い、その代わりに手伝ってもらうことがあるけどな」

「なんだ……今度は何を要求するんだ」

「ちょっと呪い発動させんの手伝ってくれ」

「は?」


 だって俺じゃあその球持てないし、呪い発動前の球とか要らないし。


「場所はそうだなあ……パラケルススの中にダンジョンあったよな?」

「ダンジョンというか実験用空間だがな……そこに呪いを発動させるものなどないぞ……?」

「あれ? お前関係者だろ? 地下に生えてるセフィロトはシーザー派の管轄じゃないのか?」


 確かセフィロトに行くまで道にあるモンスターが大量発生するポイントがあったはずだ、呪いを発動させるにはちょうど良い。


「……お前本気で消されるかもな」

「なんでだよ!?」

「お前は知りすぎている、機密も機密の最奥を知ってる部外者なんて危険因子でしかない。俺以外のシーザー派に知られたらまず暗殺されると思えよ。あらゆる手段で毒を盛るか、事故に見せかけた殺意がお前を襲うだろうな」

「うわあ……」


 これは俺のミスだな……情報の価値を見誤っていた……もっと慎重に話さないとマジで取り返しの付かないことになるぞ……


「今更なんで知ってるかなんてことは聞かないが……そうなるとお前のターゲットはポイズンシルキーか」

「そうだ、あの毒蚕を鏖殺することで俺は呪いを発動させる」


 呪いの種類はちょっと分かんないけど、虫の呪いでしかも飛ぶ虫だから軽くなって扱いやすくなるんじゃないかっていう希望的観測と俺の身体に毒なんてもう効かないから殴りやすいっていうのがある。


「確かに倒しやすいだろうが……あれの毒は個体ごとに微妙に異なるから解毒に時間がかかるぞ……致死毒ではないが十分危険だ」

「あれ? 俺が毒に免疫あるの言ってなかったっけ?」

「はあ!? 人間が毒に自力で抗体持つわけないだろ。お前毒沼で産まれたのか?」

「散々な言いぐさだな……じゃあ調べてみろよ」


 花をかきわけて魔方陣の中心に立つ。


「……嘘だろ、お前どんな食生活してたらその年でそんな量の毒を摂取できるんだよ……しかも種類もかなり多い……暗殺者の家系かお前」

「違うわ、幼なじみが毒料理に詳しいだけだ」

「……末恐ろしい者がいるのだな」

「あれは俺が育てた」


 フラメルが青ざめてるな、そんなやばい身体にされてたのか……


「そういえば反転体質は何か分かるのか?」

「ん? ああそれは簡単だ。お前の身体がマイナスの性質を持っているだけだ、強制的にプラスをマイナスに変えてマイナスをプラスに変えるのは加護のベクトルを逆転させているに過ぎない。解決は難しいがそこまで興味深い現象でもない。オリハル狐のほうが百倍面白い」

「はいそうですかー」


 うんまあ仕方ない、どうにかなるとは思ってなかったよ。


「それじゃあ俺をあの蚕のとこまで連れてってくれ、あとは球を転がす準備をするだけだ」





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