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飛んで飛んで飛んで

「感動的な場面のところ悪いんだが……約束を守ってもらおうか」

「……分かってます、プラチナと私の身体を調べるんですよね」

「ああ、分かってるなら良い。問題はそのような精密かつ正確な検査を行うためにはこんな雑な研究室では無理だということだ」

「つまり移動したいってことですか」

「その通りだ、お前には僕の研究室まで来てもらうぞ」

「教授の研究室ってことは……パラケルススですか」

「ああ、光栄だろう? 普通ならお前が入れるような場所ではないんだからな」


 パラケルススの内部に関しては俺も全く情報がない、というかゲームではフラメルの研究室近辺以外は行くことすらできなかった。未知の場所過ぎて怖いな。


「行くのは別にいいんですが、サー・ビクテロも一緒にでも良いですか? 少し不安で」


 せめて仲間がいれば対処できることも増えるはずだ……できればこれは了承してほしいが……基本的に堅物のこいつが認めるかどうか……


「ふむ……別に良いが、そっちのが行けるのは門の前までだぞ。いくら僕でも二人も連れ込むことはできないからな」

「待ってくれ!! サー・レヒトはまだ子供だぞ!! それを一人だけで研究者の巣窟に入れさせるわけにはいかない!!」

「安心しろ、手荒な真似はしないさ。僕は常に全体の利益の為に動いている、そうとも勝手に犠牲にしたりなんかしないさ」


 胡散臭いセリフだがこいつはこれを本気で言っている、だからまあ本気の命の危機とかは本当にないとは思うが……


「だが……」

「サー・ビクテロ、教授はこんな感じの人ですけど約束は守りますし言ってることは本気です。信用してほしいとは言えませんが……」

「知った風な口をきくな……お前僕のことを誰から聞いた」

「えっと……噂は方々から聞こえてきますし、少し特別な耳を持っているもので……」

「特別な耳……か、お前の出自に興味はないがその情報源は気になるな……」


 とっさに特別な耳とか言ったらなんか勘違いされた感があるぞ……諜報員を使える立場の人間とか思われると非常に困るぞ……マジでただの村人の息子だからな……変な権力あると思われて襲われたりしたら目も当てられない。


「いやあれですよ、本当に少し耳がいいだけですからね!?」

「ああ分かった分かった、そういうことにしておいてやる」


駄目だ、これ後に何を言ってもアカンやつ。


「ほら、早く行くぞ。ここからだとパラケルススは遠いんだ」

「あれ? 移動魔法は使わないんですか?」

「……聞かなかった事にしてやるから二度とそれについて言及するな。死にたくなかったらな」

「え?」


移動魔法の扱いってそんなだっけ……ただ街から街へ移動する類の魔法だったはずだが?


「良いか、分かっていないようだからもう一度だけ言ってやるがな……そんな魔法は存在しない。ない魔法のことを話すな、分かったな?」

「はい……分かりました」


なんかのタブーに引っかかったのか? 移動魔法が? なんでだ? なんかあったのか?


「サー・レヒト、そんな魔法があったら流通がめちゃくちゃになってしまう。魔法だってなんでもできるわけじゃないんだ」

「はあ……そう……ですか」


あー……なんか分かった。移動魔法は秘匿されていなければならない理由が。そっか、そりゃそうだな……どこでもいつでも移動ができるなんてそんなの取り締まれるもんじゃないし暗殺だってやり放題、盗みもやり放題だもんな。そりゃ禁忌になりますわ。


「そうですね、勘違いしてました。そんなものあるはずないですね」

「それで良い、その発言は僕でも庇いきれないかもしれないんだ。気をつけろ」

「はい、ありがとうございます」


それじゃあパラケルススに向かいますか……でも陸路でも結構あるぞ……長旅になるな……


「まあそれでも3時間もあれば着く、迎えを呼んでおいたからな」

「え?」


どう考えても無理だ、瀕死のシルバータンカーでもそこまでの速さはない。


「不思議そうだな? これを見ればその疑問は吹き飛ぶぞ」


大きな何かが羽ばたく音、鳥? いいやもっと大きい。


飛竜(ワイバーン)……」

「そう、飛竜だ。これに乗っていく、馬はこいつが掴んでいくから安心しろ」

「そんなものが……」

「見るのは初めてだろう? なにせ使用に耐えうる初めての飛竜がこいつだからな」


明らかな差異だ、ワイバーンに乗るなんてのはゲームにはなかった……そんなものがあるなんて俺は知らない。ここからどこまで俺の知識が通用するのか疑問になってきたな……


「さあ乗れ、乗り心地は及第点だが速いぞ」

「はい」

竜騎士(ドラッヘリッター)……オレの夢がまた一つ……!!」


ビクテロ……お前が楽しそうで何よりだよ。


「とと……」

「ちゃんとベルトを巻け、落ちたら死ぬぞ」


飛竜の背中には革らしきものでできた鞍が乗っかっていた。ギリギリ三人まで乗れるようだ。うおお……これが飛竜の背中か……なんか感慨深いな……まさか乗れる日が来るとは……


「さあ行くぞ……」


教授が何かを唱えると飛竜は羽ばたき始めた。


「衝撃に耐えろよ!!」

「え?」

「は?」


次の瞬間に襲ってきたGに俺はぶん殴られた。






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