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死すべき定めの砕けし牙

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「うおらああああああああああああああ!!!」


 でかい狼に戻ったウンターは自分で言っていたとおりにすぐに襲いかかってきた、約束通りに俺にデバフをかけてからだ。


「グルルル……!!」

「腕痛え……」


 一撃撃ち合っても死ななかったからなんとか勝負になるレベルにまでは能力が向上しているらしいな……この感じだとそう何発も撃ち合ってたらどっちにしろ死ぬが。


「ツミ……ビト……サラ……バダ」

「な……!?」


 は? 消え……


「ぐぼぁ……!!?」

「ガルゥ……」


 何をされた!? いきなり居なくなったと思ったら俺にダメージが……!? 吐血したってことは内臓に傷が付いたか……その割には痛みはあまりない……それが逆に怖いな。


「なに……しやがった……」

「シネ……ワレトトモニ」

「いやいや……そんな簡単に殺されてたまるかよ……」

「シナネバナラヌノダ」


 死の運命なんてもんに殺されてたらそこでゲームは終わっちまうだろうが……そんなんじゃ駄目なんだよ……これを乗り越えることから俺の冒険は始まるんだ……


「ムダダ、ワレハトラエラレヌ」

「てめえのスキルは知らねえけどな……心当たりはあるんだよ……【神風】の類似スキル【神速】だろ?」

「ショウシ、シンソクナド……ワレハサダメノハコビテ……モトヨリトラエラレヌ」

「うごぉ……!?」


 くっそ……全然分かんねえ……ユニークスキルの類なのか……しかもゲームには存在しないやつ……見当もつかねえ……骨が砕かれた……動けねえ……


「なんで……俺の首を噛みきらねえ……好きにできる筈だろ……」

「ワレハ……トモニシナネバナラヌ……オマエダケヲコロスコトハデキヌ……ソシテオマエハ……ワレニフレラレヌ……ユエニ……ワレハコウスルシカナイ」


 自分の前足を咥えて……噛み……切った……だと……!?


「ヌゥウウウウ……コレデ……ワレニジカンノカセガ……ハメラレタ……トキガクレバワレハシヌ……ソノトキガオマエノサイゴダ……ソレマデソコデハイツクバッテイロ」

「てめえ……そこまでするのか……自殺まがいのことしてまで……そうまでして守らなきゃいけないのかよ……運命ってのは……!!」

「ソレガ……サダメナノダ……ワレハソレニサカラウコトガデキヌ……ワラエ……ツミビトヨ……ワレハカリソメノチカラヲフルイ……ソシテ……サダメノクサリニコロサレルノダ……」

「くそ……一つだけ聞かせてくれよウンター。お前はこれで満足か?」

「マンゾクダ……ワレハコノタメニウマレタノダカラ」

「俺は駄目だ……未練がありすぎる……なぁ……本当に良いのかよ……お前は……これ以上やることがないって言うのかよ……」

「フフ……ソレハウラヤマシイコトダ……ワレニハ……ソノヨウニカンガエルキノウガナイ……クミコマレテオラヌ……アルノハタダ……オマエトワレヲメッセヨトイウコトバノミダ……」

「言葉……?」

「ソウ……ソノコトバガワレヲシバル……ワレヲキテイスル……アズケラレシコトバノミニヨッテ……ワレハソンザイシテイル」


 その物言い……言葉に縛られる生き様……俺はそれを知っている……神の言葉を預けられた化け物染みた存在を……


「預言者……お前がそうなのか……そんな生き方しかできないのが預言者なのか……」

「アワレムナ……ワレハ……マンゾクダトイッタゾ……ズイブントイキナガラエテシマッタ……アマツサエナマエマデ……ワレニハスギタジカンダッタ……コノヨウナケツマツニシカナラヌトワカッテハイタガ」

「ウンター……お前……」

「ソロソロダ……ユイゴンヲキコウ……ダレニモツタエラレヌガナ」

「もっと……生きたかったな……ここで」

「……オワリダ……レヒト」

「ちくしょう……みんな救えると思ったんだけどな……」


 ああ、牙が迫ってくる。あれが閉じられた時に俺は終わる……もっと上手く立ち回れたような気もするが……それももう過ぎたことだ……せめて……仲間がもう一人……ティーアか他の仲間候補が居れば変わったかもしれないのに……


「諦めるのはまだ早いわ」

「……は? なんで……ここに……ジンがいるんだ……!?」

「ふふーんあたし呪いの効果を発揮する時が来たようね!!」


 ちょ、牙……は止まってる……というかウンターが止まってる?


「預言者如きの創った空間にあたしが干渉できないわけ訳がないでしょう、時空間ごと掌握してやったわ!!」

「えー……もっと早く出て来いよ……」

「うるさいわね!! 言っとくけどこれって一回限りのズルみたいなもんだからこんなに早く使うとは思ってなかったのよ!!!」

「あー……うんそれは……もったいなかったかもしれない」

「でも仕方ないわね、今ここ以外の機会はもう永劫ないわ。それで? このジンに何か言うことがあるんじゃないの?」


 ジン……それは精霊種の頂天の一角……そして公式チート能力を持っていた存在だ。だからこそ序盤で殺されたんだが……


「ランプはあるのか?」

「もちろんここにね」


 ランプをこすって願いを言う、それによって行われる一生に一度の契約。


「お願いだ……ジン。可哀想な狼と俺を死の定めから解放してくれ」

「仰せのままにご主人様」


 なんでも好きな願い事を一つだけ叶えてくれる。それがジンの能力。


「対価の説明は要らないわね?」

「ああ……知ってる。一生かかっても絶対に対価は払う、それに払えない対価は要求しないんだろ?」

「そりゃあね?」


 一度の願いの対価は願いと等価の要求だ。バランスが取れない願いはそもそも叶わない、受諾されたってことは俺にもそれ相応の要求があるってことだ。


「それでも……生きられるならそれでいい……ウンターも救えるならもっと良い……殺伐としてたけどお前のいる冒険も悪くなかったんだ……」







 









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