馬は早い方が良い……ただし乗れればな
「暴れ馬が出るから駆除して欲しいというわけですね?」
「そうなんだ。うちの馬も何頭もやられててな……なんでも走ってると後ろから追いかけてきて追い抜くと同時に蹴っていくんだそうだ。そいつを倒してくれるんなら馬を譲っても良い」
この湿原を走り回る暴れ馬か……まさかとは思うがランダムイベントの野生の名馬じゃないだろうな。あれで出てくる馬は確かに高性能だけど……馬というよりUMAだぞあれ……
「ちなみにその暴れ馬はどのような特徴がありますか?」
「そうだなあ……白馬で物凄い形相をしながら走ってくるとしか」
「……鳴き声に特徴はありますか?」
「何でも笑い声に近い鳴き声を聞いたという話だが」
爆笑しながら走ってくる白いUMAとかもう一体しかいない……よりによってあいつかよ……
「シルバータンカーか……厄介だなあ……」
「白銀の不沈艦」「煩さとウザさのハイブリッド」「UMAの中の問題馬」その他色々な呼ばれ方をしていたな。
「あいつを倒すのは不可能に近い……捕まえて大人しくさせるのが一番良いか……」
不沈艦と呼ばれているのは伊達じゃない、自動回復能力に加えて体力が減るほど素早さが上がる【神風】スキルも持ってやがる。何より逃げるのを選ぶのがUMAの中で一番早い。攻撃しようものならすぐ逃げるから即死させる火力がいるがそんな火力はない。
「サー・ビクテロ、馬には乗れますね?」
「え? 乗れないぞ」
「は? なんでですか?」
「なんでって……馬に乗る訓練なんて受けてない。何より不運で馬が痛むから乗るのが忍びない」
「さいですか……」
馬に乗れる奴がいないことが判明した。まずいな、UMAの出現条件には乗馬状態であることが含まれてるから馬に乗れないと話にならない。
「……ウンター」
「なんだ罪人」
「乗っけてくれない?」
「噛み殺すぞ?」
「冗談とかじゃないんだ。ここで馬が手に入らないと予定が大幅に遅れることになる。ここでお前が手を貸せばお前が元に戻るのも早くなる」
「う……駄目だ……罪人を乗せるなど……!!」
まあ実際こいつに俺が乗るのも無理がある話だしな、一応聴いただけだからまあ良いや。
「ですよねー、じゃあ誰かに囮を頼まないといけないか……」
「……諦めるのが早すぎるのではないか……平身低頭で頼み込めば考えてやらんでもないぞ……」
「いや、いいです。乗りづらそうなんで」
「なにおう!?」
なんだ……俺を乗せたいように聞こえるぞ……そんなことはありえない筈だ……何を企んでいる……? 殺そうとするのは今の所ないとしても……分かんねえな……
「見るが良い!!」
「え?」
わー……身体がメキメキって……人狼から狼に……?
「え? おま……戻れる……の?」
『戯けが!! こんなもの身体の構造を少しばかり弄ったにすぎん……我の本来の姿とはほど遠い』
「……乗れって言うのか?」
『お前がどうしてもと言うなら乗せてやらんでもないが?』
「……お願いします乗せてください」
『良かろう、二度とない幸運にむせび泣け!!』
え……狼に乗れるなんてシステムなかったぞ……どういう扱いになるんだ……乗馬と同じ扱いならシルバータンカーの出現条件に合致するけど……まあなんとかなるだろ。
「ではサー・ビクテロ少し待っていてくださいね。ちょっとアホUMAをシメてきますから」
「狼騎士か……それがサー・レヒトの正体……素晴らしくかっこいいじゃないか!! 成し遂げて帰ってくることを信じているぞ!!!」
「あ、はい」
狼騎士とか……やだ……ちょっとかっこいいじゃない……ビクテロのくせに良いネーミングセンスしてんな……それ後で使おう……
「走れウンター!! 風のように!!」
『我に指図をするな……!! 風など我の尾を追うことすらできぬことを知れ!!』
「うおっ!?」
早っ!? ちょっとまって……!? めっちゃ揺れるしめっちゃ早い!?
「うおう!? うおう!? ぐおう!?」
『うるさいぞ罪人、舌を噛む前に口を閉じろ』
「もっと、安定した、走りは、できないのか!?」
『はん? 乗せてやっている我に文句を言うのか? お前が合わせるのが道理であろうが』
「くそ……が……やってやるよ……!!」
慣れないうちにシルバータンカーが来たら困る……早く慣れねえと……!!
「げひひひひ~ん!!!」
「嘘だろ……来やがったか……」
巨体のわりに薄いフォルム……光沢を持った白銀の毛……そしてなにより……耳障りな鳴き声……間違いねえ……シルバータンカーだ……!!
「げひゃひゃひゃひゃ!!」
『なんだあれは!? あれが馬か!?』
「UMAだって言ってんだろ……!! あれが俺たちの敵だ……攻撃はするなよ……逃げられるからな……!!」
そりゃウンターも驚くよな、シルバータンカーは種類こそ馬扱いだけど中身はほぼ別物のモンスターだからな……
「最初に言っておくぞ……絶対にあのUMAに追い抜かれるな……それがシルバータンカーを大人しくさせる条件の一つだ!!」




