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ビクトリアの目覚め


「あー、なるほど。これはあれです、起きたくないから起きてないというか……夢に囚われているというか……とりあえず傷はありませんので身体は大丈夫ですね」

「そうですか……どうやったらビクテロは起きるでしょうか……」

「こればっかりはなんとも……時間に任せてみるしかないでしょうな」

「分かりました……ありがとうございます」


治療院を後にした、身体に別状がないのなら問題はない。


「夢イベントってこいつにもあったんだな……うわー行きたくねーなー」


昏睡状態の仲間がたまに起こす夢イベントは相手の夢に入り込んで叩き起こすっていうもので相手の知られざる過去とかが見えるんだが……こいつのは大体知ってるしなあ……正直どんな風になってるか想像もできないから怖い。


「でもまあ……逆十字は必要だし、起こすしかねえな……」


夢イベントのやり方は割と簡単だ。寝てる仲間を枕代わりにして俺も寝ればいい。


「装備品が硬えな……まあ良いやなんとか寝よう。ウンターは警戒をお願いする」

「なんで我がそんなことを」

「肉を倍にしよう」

「仕方ないな!!」


なんか扱い方分かってきた、所詮は獣……食欲には勝てないということか。


「さあ行くぞ……」


案外すんなり眠れそうだ……意識が遠くなって……きた……


「あーっはっはっはっは!!! なんて素晴らしい!! これが力だ!!」

「スティグマを背負いし堕天の王……それがオレだ!!」

「万地融解!! 天空楽土!! 最強とはこういう事だ!!」


うーわー、なんかもう予想どおりー、いっぱいビクテロがいてなんか中二病的なセリフを吐き続けているなあ……あのテンションのビクテロに話しかけたくねえなあ……


「あの……あなたは……誰ですか?」

「へ?」


おかしいな、なんでビクテロの夢の中に俺とビクテロ以外の奴がいるんだ……誰だこいつ……?


「俺はレヒト……君は?」

「私ビクトリア、あなたはここに何しにきたの」

「うーん、なんて言うかな。ちょっと用事があって」


ビクトリア……そんな名前の奴知らないぞ? ゲーム中でも聞いたことすらねえ……バクとか夢魔とかの類なのか


「ここはどこだか知ってる?」

「どこって……そんなの私の中に決まってるじゃない」

「んん? 今なんて?」

「だからここは私の中よ」

「お前の?」

「私の」

「じゃあお前はビクテロなのか……?」

「ううん、それは仮の名前なの。本名はビクトリア、ビクトリア・サバトグラン」

「は?」


サバトグラン? サバトグランって言ったか!? 名前だけ登場する亡国だぞ……そんな設定……


「設定かぁ……!! お前まともそうだから油断してたぞ……マジかと思ったじゃねえか……お前もビクテロならそんなこと言ってもおかしくねえしな」

「何言ってるの? 設定? 私は正真正銘ビクトリアなのに!!」

「ああはいはい、オッケーでーす。お前はビクトリアなんだな」

「分かってもらえた?」

「うん、分かった分かった」


お前がビクテロのうちの一人ってことがようく分かった。


「んで……どうやったらビクテロは起きるんだ」

「私を起こしたいの? それならあれを何とかしなければいけないわ」

「あれ?」


ビクトリアが指差した方向を見る。


「何だあれ」

「今私の中で一番力を持った個体よ」


そこには巨大なビクテロが血だらけで横たわっていた。いやあれ最後の生贄賛歌とか言ってた時のビクテロだろ。


「何でも最高のシチュエーションだったんですって、これができたらもう目覚めなくても良いって思うくらい最高だったらしいわ」

「それで起きないとかマジでただのビクテロだな」


夢に浸ってるところ悪いが叩き起こさせてもらうぞ、とりあえずあれをどうにかすれば良いんだろ? なら簡単だここは夢の中だから何でもできる。


「俺も一回やってみたいことがあったんだ」


とりあえず用意するのはみんな大好き日本刀、長さはまあ普通に。


「すぅ……はぁ……」


この呼吸に意味はない、雰囲気だけだ。


「行くぞ……」


イメージは神速の居合、ただただ早く斬ることを突き詰めたような絶技。


「ふしゅううう……」


刀を収める、ちょうど鞘に収まるタイミングで技名をボソッと言うのがコツだ。


「抜刀術【閃】」

「ぐわああああああああああああ!!? なんてかっこいい技だぁあああああ!!?」

「どうせそうだろうと思ったよ!! お前の基準かっこよさしかねえもんな!!」


多分普通に殴っても効果なくて、技名叫んで殴ったらダメージが入るシステムだこれ。


「くそおおおおお!!! このオレが倒れても第二第三のオレが「うるせー!! さっさと消えろ!! えっと……天元斬!!」 ぐわああああああ!?」


はあ……これで良いだろ。


「ぷっ……あなた面白いのね……起きた私の名前を呼んであげてね。そうしたら起きると思うわ」

「 そうか、ありがとな」


ゆっくりと身体が浮上する感覚がする。これで終わったってことだな。


「ふわぁ〜あ……さっさと起こしてやるか」


確か名前を呼べば良いんだな、それじゃあせっかくだから別の名前で呼んでやろうか……黒歴史を食らえ!!


「ビクトリア・サバトグラン、起きてください」








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