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駆けよ狼、定めに追いつかれぬように


『お前に恨みはない、だが消えろ。我の定めに干渉したのが間違いだったのだ』

「うおっ!?」


 地震のような震動を起こしながらウンターが巨人に向かって行った。あいつなら大丈夫だろ、今の感じだとラストダンジョンを超えて裏ダンジョンレベルの強さだろうし。


『笑止!! 弱すぎる……弱すぎるぞ!! お前如きが執行者を名乗るのは烏滸がましい!! ふはははははははははははは!!!!』

「ええ……なにあれ……次はあれが俺を殺しに来るの……勝てる気がまるでしないな……」

『ふふふはははははははは!!!!! 露と消えよ!!!』


 想像を遙かに超えて強いなこいつ……どうすんだよ……倒せるビジョンがまるで見えねえ……ボス以上に理不尽な強さだぞ……


『雑魚が……二度と現れぬように食らってくれるわ』

「は? 巨人を……食ってる……?」


 うっそだろ……捕食スキルなんて持ってんのこいつ……敵キャラ限定のパワーアップスキルだから持っててもおかしくないけどよ……これ以上強くなられたら手がつけられなくなるぞ……もう手が付けられないとかいうツッコミは禁止だ……


『んぐっ……んぐっ……ぷはぁ……不味い肉だ……堅いし血も出ていない……無機物など食うものではないな……げふっ……人型だからと言って美味いとは限らないと学んだぞ……」

「あー……もしもし、ウンターさん?」

「なんだ……気安く話しかけるな……次に会うときは貴様を食い殺すのだからな……」

「ああ……やっぱりウンターだったんだ……」

「何を言っている? ずっと見ていただろうに……頭が湧いたか?」

「……今の姿を見てみてくださいな、そんなこと言えますかね……」


 目の前にいる巨大な獣人に問いかけた、身体のサイズそのままで人型になるかね……確かに捕食スキルは食った相手の力を取り込む能力だけどな。人型のやつ食ったからってそのまま人型になりますかね普通、変形できるスライムじゃねえんだから……


「うおああああああああああああ!!? なんだこの身体は!? 美しさの欠片もない!!?」

「どうどう……落ち着け落ち着け、お前は今巨人を食ったな?」

「それがどうした!? 今の我の醜い姿を見るな!!」

「まあまあ……食っちまったもんは仕方ねえだろ。お前の捕食スキルのせいで今の姿になったのは疑いようもないんだが……治したいか?」

「当たり前だ!! こんな姿ではまともに走ることもできん!!」


 よしよし好都合だ、今のこいつは人狼の状態にある。そんでもって人狼の血液は完全回復薬の材料の一つになったはずだ……今の姿を解く代わりに血を差し出させてまずはビクテロの傷を治そう。直で飲んで効果が出るのかは未知数だが……まあ大丈夫だろう……たぶん……


「オーケー分かった、それを治してやろう。だからまずお前の血が欲しい。そんなに大量じゃなくていいからな」

「くっ……屈辱だ……だが……背に腹は代えられないか……」


 ウンターが指を噛んで傷をつけた、そこから流れる血を手で受けて口に含む。ビクテロは気を失っているから自分では飲めない……救命行為だからノーカンとしてもらおう。


「あうい……(まずい……)」

「何をしている……それで本当に我は戻るのだろうな……」


 ぶっちゃけこいつを戻す方法には見当がついているからそこまで難しいことじゃない、これからやることとその方法の因果関係を説明する方が面倒だな。


「ん……」

「どうして我を治すためにお前らが口を合わせねばならんのだ……全く分からん……」


 すまんなウンター、これはビクテロを救う以外の意味はない。それを言ったら今の状態のまま潰されそうだから言わないけどな。


「ぷはぁ……これで良いだろう……生きろよビクテロ」

「で? 今のには何の意味があったか教えてもらおうか」

「お前の今の状態は巨人とお前が半々になってるから起こってるというのは分かるな? それでこいつと俺がお前の因子を含むことでその状態が薄まる。これはお前を元に戻す準備なんだ」

「そうか……難しいことはよく分からんが……我が戻るために必要なことならば良い。疾く戻せ」


 よーし誤魔化せたぞ、喋るようになっても単純な頭のようで助かったぜ……!!


「早くしろ、さもないと今ここでお前を食らっても良いのだぞ」

「言っておくが……今ここでは治せないぞ?」

「謀ったな……!!」

「待てよ、今ここでは無理ってだけだ。然るべき場所で然るべき手順を踏めば戻せる」

「くそっ……罪人の言うことなど信じたのが間違いだった……ぐ……ぐあああああああああああ!!!」


 しゅるしゅるという音が聞こえてくるかのようにウンターが縮んでいった。あんなにでかかったのに……今じゃあ俺よりも小さい子どもじゃないか。


「くっ……これが狙いだったのか……我が力を使い果たすのを待っていたというわけか……!!」

「いや全くそんなことないんだけど……」

「すんすん……嘘……ではないか……聞かせろ……手順とはなんだ……」


 うん……言ったら怒るかな? 怒るだろうなあ……でも仕方ない……このゲームにはテイムしたモンスターに対するイベントしかないからな。だから当然こういう手順を踏むことになる。


「俺の飼い犬になれ」











 


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