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神の如き者

「後はあの巨大聖騎士が壊されていくのを見てれば良いってことだな」

「あの戦力なら大丈夫でしょうね、見る見るうちに減っていきますよ」


 確かにこのペースなら三十五体はすぐだろうな、ビクテロも帰って来てるし。聖騎士の野郎もこのままなら片付く。これはもうそろそろグレーゴリに殴り込んで神をしばいてもいい頃合いじゃねえの?


「本当なら玉座の完成を待つ必要があったが、それも無理だからな。今回みたいになんか面倒なことされる前にさっさと叩いちまったら良いんだ」


 【奇跡】の奴をどうにかできるビジョンが見えてるとは言いにくいが前回とか今回みたいにいきなり出てきて致命傷を与えられる可能性があり続けるのは流石にキツくなってきたぞ。でもなあ、【奇跡】かあ、あいつを下すには理不尽をひっくり返す力がいるな。


「ブレイン、頼みがある」

「分かってますよ先生、【奇跡】を倒す方法ですよね」

「マジかよ、察しが良すぎて怖いわ」

「まず僕が実際に見て思ったことですが、あれはもう別の生き物です。人間の延長線上だと思ってはいけません。そして力とか早さとかそういう土俵で戦うことは恐らくできないでしょう。言うなれば運命力とでも表現される力です」

「運命力ってお前……なんだそれ」


 それってあれだろ、いわゆる主人公補正とかだろ。運命が勝たせるとかそういう奴なのかよ。


「そうですね、さっき【奇跡】は隠れていたと思いますか?」

「え? 見つけられなかったんだからそうだろ」

「ちがいます、宝物での干渉で分かりましたがあれは何もしていません。ただそこに居るだけで標的に気づかれないのが運命力です。僕が気づいたのは宝物の干渉と直接の標的ではなかったというだけですね」

「おいおいおいズルにも程があるだろ」

「ええそうです、世界から贔屓される力と言うことができるでしょう」

「どうすんだよそんなの、少なくとも俺にはその贔屓をぶち抜く方法は思いつかねえ」


 運命力とやらで張り合えるのは主人公のニケくらいだと思うが、あいつはもう主人公降りてるから運命力に賭けるのはちょっと難しいんじゃねえのか。となると、誰だ、ビクテロ……は無理そうだしな。他の仲間で運命をねじ伏せられそうなのは……


「あれ、無理ゲーかな? 詰んでね?」

「何言ってるんですか先生、先生ですよ。先生が【奇跡】を倒すんです」

「ちょっと何言ってるか分からない」

「良いですか、運命力とはすなわち存在そのものが世界から受ける影響です。それは多かれ少なかれ皆が受けるものです【奇跡】はそれを最大限受けていると言えるでしょうが先生も負けていないんですよ」

「えっと、俺の身体のこと気づいてない?」

「それは見れば分かります。あらゆる祝福を受け付けない逆行の身体ですよね? それだから良いんです、全部を区別なく反転させるそれは全てを受け入れる【奇跡】の真逆。その運命力は逆位置であっても【奇跡】に比肩する強度だと僕は確信しています」

「正気か?」

「正気ですよ」


 その断言度合いには感服するが、流石にちょっと物言いさせてもらうぜ。ニケならまだしも俺が【奇跡】と殴り合いをする訳にはいかないだろ。すぐ死ぬわそんなん。


「先生ならできます。だって、そのための準備をしてきたんですよね?」

「……何を言っているか分からんのだが」

「あれ? おかしいですね。先生は自分の呪いを使って戦うと思ってましたけど。より強い呪い、より強い負債を抱えてきたのではないのですか? それこそ【奇跡】と渡り合うほどの」

「強い呪いねえ……」


 デバフのことならまあ、ある程度はどうにかできるくらいのデバフを得たと思ってはいるけどな。本当【奇跡】とやり合えるのかは甚だ疑問と言わざるを得ない。


「そんな不安でしたら、獅子心隊の皆様と戦ってみれば良いですよ。僕の見立てでは先生の力を最大に使って戦えば全員を相手取れるはずです」

「冗談も休み休み言ってくれ……無理だそれは」

「いえいえ、本当ですよ?」


 いくらなんでも荒唐無稽が過ぎる、でも、それでもだ。こいつはブレイン。最強の頭脳を持つ魔王だ。こいつが言うのならあるいは。


「本当だな?」

「ええ恐らく」

「少し待っていてくれ、聖騎士が駆逐されたら仲間を呼ぶ」

「はい、待ちましょう」


 んでもって、一時間ほどで巨大聖騎士が駆逐されたんでユーホにお願いしてみんなを連れてきてもらった。


「色々説明しなかきゃいけないのは分かってるけど今はとりあえず俺が言うとおりにしてくれ」


 ティーアのデバフ飯、ビクテロの逆十字、シラヌイの踊りデバフ、ユーホとユーイーによる全能力ダウンを積んだ。これが今の段階で考えられるフルデバフだよな。


「旦那様、私は?」

「ご主人様。あては?」

「あー、一応聞くけど俺の能力下げるようなスキルってあるか?」


 主人公はデバフ覚えねえし、オリハル狐もやらなかった筈だから期待はできないな。


「これでいい?」

「コーン!!」

「あるのか……!?」


 ニケからは恐らく威圧系の全体ダウン、プラチナは魔法に近いけど呪いによるHPデバフだな。


「なんか重なりすぎてえらいことになってないか? 俺は今ちょっと視覚的にものを見れないんだが見た目どんな感じになってる」

「先生、魔王より魔王らしい姿ですよ。呪いを纏って力を増すその威容はまさしく【奇跡】の正反対」

「お、おう。そうか」

「それじゃ、やってみましょうか」

「ああ」


 今から始まるのは獅子心隊全員を相手に回す模擬戦闘、はっきり言ってクソ難易度にも程があるが。ブレインの言葉を信じれば余裕で相手できるとか。流石にブレインが盛りすぎてると思うが……


「嘘だろ……本当にお前ら獅子心隊だよな……?」

「どうですか先生」

「いやいや、手加減しすぎじゃないのか。だって攻撃も防御も全然……」

「今の先生と比べたら誰でもそうなります。先生ももうそんな領域なんです、分かっていただけましたか」

「マジかよ……」


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