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オリハル狐・ザ・リバース

「ひっく……えぐ……ぐすっ……すんすん……」

「お前が悪いわけじゃないだろ? だからそんなにへこむなよ……な?」

「だっでえ……あてがごじゅじんざまを……パクって……また死んじゃったらどうしようって……」

「ほら見ろって、どこも怪我してないだろ?」

「うぅううう……」


 俺とビクテロを吐き出した後にプラチナはすぐに小さくなった。殺生石を飼い慣らすことに成功したようだがいかんせんメンタルがブレイク状態になってしまった。ずっと泣いてるしひしってくっついて離れないし。どうしたもんかな。


「ちょっと溶けてるもん」

「うええ!? マジで!?」

「腕のとこ黒くなってるし……」

「これは呪いの影響だからノーカンだ。身体は大丈夫か? たぶん毒が入ったと思うが」

「どく? なかったよ?」

「……そうすか」


 できればティーアのトキシック・スイートを再現できるくらいになれば良いなと思ってるが難しそうだな。そうなるといよいよもって俺の技は劣化コピーの生産が能力ってことになっちまうな。それでもまあ使い道は今回みたいにあるってこった。


「きらいにならないでごしゅじんさまぁ……やくにたつから……!!」

「何言ってんだよ、俺がお前を嫌いになることなんてない。さっきの暴走状態から戻れなくなっても嫌いにはならない」

「ごじゅ、ごじゅびばばばぁあああ!!!」

「おーい、泣きすぎだ。何言ってるか分かんねえぞ」

「こぉおおおおおおおおん!!!」

「人型で鳴き声出してもただこんとしか聞こえないからな?」

「うえええええええええん!!」


 大号泣じゃねえか……これはもう時間が納めてくれるのを待つしかねえか。幸いここには大規模な破壊痕とボロボロのユーホとベタベタのビクテロしかいねえし。


「私になにか言うことはないのかしら?」

「え?」

「な、に、か、言うことは?」

「あ、ありがとなユーホ。お前がいなかったら俺は最初の段階で串刺しになってたか地面の染みになってた」


 これで合ってるか? なんか怒ってるっぽいからとりあえず礼を言ってみたが、何か間違ってるような気もする。ユーホは今何を求めているんだ……?


「ビンタ」

「へぶっ!?」


 なに!? ビンタ魔法だと!? そんな使い道のない魔法が存在して良いのかよ。ていうかなんで今俺はビンタされたんだ。めちゃくちゃ機嫌悪いじゃねえか、やべえ俺の身体が残っているうちに正解をださねえと。


「ご、ごめん?」

「はぁ……何も分かっていないのね。今回の貴方が食べられたのは私の責任よ、何か私に対して罵詈雑言の一つでも言いなさい」

「……なんで俺ビンタされたの」

「それはそれとしてイラッとしたから」

「めちゃくちゃだよこの人」

「良いから、早く」


 罵詈雑言って言ってもなあ……何を言っていいやら、これも言葉選び間違えたらそれはそれで困ったことになる予感しかしない。慎重になるんだレヒト、やればできる、やればできるぞう。一番効く言葉を探し出すんだ、それでいて傷にはならないようなものを選べ。一応ユーホなりの罪滅ぼしなんだろうからな、え~っと……


「それじゃあこの失敗をユーイーに言う」

「誠に申しわけありませんでした、以後このようなことがないよう粉骨砕身努力して参りますので何卒、何卒そのようなことはしないでいただけると非常に有り難くおもいます、というかそんなことをしたらあなたを巻き込んで自爆しますのでそのようにご理解いただけると何よりです」

「脅しと謝罪を同時にやるなよ……」


 すげえな、なんて綺麗な土下座。これも姫の嗜みの一つになっているのか? つーかどんだけ言われたくないんだよ。俺もこれが一番効くと確信して言ったけどあのユーホが土下座してやめてくれって言うほどとはな……


「イー姉様にだけは何卒……!!」

「言わねえって絶対、だからもうやめてくれ。これで終わりだ」

「くぅ……まさか最大の弱点を一撃で抉ってくるなんて、ただ者じゃないとは思っていたけどここまでだなんて」

「ちなみにユーイーが人質に取られたりしたらどうすんの? さっきみたいになるのか?」

「なりません。あなたならともかく他の下賤がイー姉様に触れようものなら即爆破、即滅殺ですが? 当たり前でしょう」

「俺は良いのか?」

「だってあなたイー姉様の騎士でしょう? なら許します」

「さいですか」


 これも信頼の顕れだと思って良いのか? 俺が騎士だっていう認識はユーホとユーイーの共通認識らしいが俺は騎士らしいことなんて一つもやってない。それで騎士だと言われるのにもなんか違和感があるな、聞いてみるか。


「騎士らしいことなんもしてないが良いのか?」

「何を言っているのか、イー姉様の望みを叶えるのが騎士の務め。ならば今の状況を作り出したあなたは立派に騎士をやっているでしょう」

「それで良いのか」

「良いのです、もとより籠の鳥だったのが大空を飛べるのです。これ以上のものがあると?」

「お前らがそれでいいなら俺が言うことはねえよ、なんせ俺は騎士らしいからな」

「よろしい」


 うーん、まあなんとなく分かった……ような?






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