狐狩り、ただし狩られるのはこっち
「うおおおおおおおおお!!!」
「砕けなさい!!」
「ちょっ、攻撃するだけ無駄だぞ」
ビクテロとユーホが早速攻撃したようだが意味はねえだろうな、オリハル狐に効く攻撃なんかクリティカル出すか継続ダメージを無理矢理与えるかの二択みたいなところあるからな。ゲームの中だとダッキが攻撃に使った岩欠片を使ってダメージを与えてたが。
「グォオオオオン!!」
「くっ!? 攻撃した方に傷がつくなんてデタラメな硬さだな」
「ここまで意にも介されないと少しだけ傷つくわね
そうなんだよな、こいつ防御力高すぎてまともに殴るとこっちがダメージをくらうとかいう理不尽な性能してやがるんだ。
「だから言っただろ!! 攻撃なんて注意を引く以外の意味はねえ!! 時間稼ぎに徹しないとこっちが先に息切れするぞ」
「サー・レヒトの言うとおりだ、これではこっちが先に攻め疲れる」
「魔法も無限に使えるわけじゃないもの、癪だけど従ってあげましょう」
ようやく分かってくれたか、今回の目的はダッキの討伐じゃない。あくまでプラチナが帰ってくるまでの時間稼ぎが目的なんだ。だからまあ適当に注意引きながら逃げ回るのがベストだろう。
「ゴン!!」
「あ、やっべ。上に逃げろ!! どっちでも良いから俺も頼む」
特徴的な短い鳴き声、詠唱代わりのこれが出たってことはつまり魔法が飛んでくるってことだ。しかもダッキが使う魔法はプレイヤー側とは規模が違う。文字通りフィールド全体に効果がある極大範囲の魔法を気軽に使いやがる。
「世話が焼ける!!」
「すまん!」
ビクテロはどうしたかな、跳躍するような音が聞こえたから逃げられたとは思うが。少しの揺れが継続している、地響きが収まった瞬間が攻撃が始まるときだ。
「何も起こらないけど?」
「今からだ」
地面が軋む。そして、一気に広範囲の岩盤が牙を剥いた。地面の上に立っていたら岩にかみ砕かれてもうぐちゃぐちゃになってたろうな。
「こんな規模の魔法を割と頻繁に使う相手だ、攻めてる場合じゃねえだろ?」
「確かにね……獣の使う魔法はちょっと判別がつかないわ。感知もできずにこんなことされたら死ぬわ」
「な?」
「それはそれとしてその訳知り顔がムカつくから後で一発しばくことにします」
「ひでえ!!」
なんてこった、これから助けられるたびにしばかれるのか。次からはビクテロを指名することにしようかな……
「一時的飛んでいるけど、降りる場所もないわね」
「岩盤砕くしかないな」
「そう、それじゃあ」
爆発音が聞こえたからとりあえず降りるスペースはできたようだ。ゲームだと一定時間で消えてたが実際に起こされるとそうはいかないもんだな。
「ん? てことは。今動ける範囲は酷く限定されてるってことだな」
「ええ、まあそうなるわ」
「今すぐここから離れろ!! 俺たちにとっては障害物でもあいつにとってはただの紙くずと変わらねえんだ。全部無視して突進してくるぞ!!」
「何を言って……」
地鳴りがする、これはさっきの魔法とは違う。定期的にドスドスという音がしてるんだよ、これはダッキが走ってきてる音だ。このまま岩盤ごと砕かれるのはまずい。下手すりゃ即死するぞ。
「良いからまた飛べ!!」
「仕方ないわね」
飛び立ったすぐ後にさっきまで居た場所をダッキが通過した、あっぶねえ。あんなの食らってたらいくつ命があっても足りねえよ。
「本当に突進してきてたのね」
「信じてなかったのか……あんなに足音してたのに」
「全然聞こえなかったもの」
マジかよ、聞こえないレベルの音しか立ててなかったのか。となるとビクテロの方は回避が間に合わないかもしれんな。ちゃんと避けられてると良いが。
「グオッ!?」
「フハハハハハハ!! 大いなるオリハル狐よ、貴様の突進は見切っていたぞ!!」
ん? 何かビクテロが前のテンションに戻っているような……中二成分がマシマシになっているような。
心なしか暗黒面のオーラが発生しているような気がするぞ。ドス黒いオーラの気配がする、なんだ、今度は暗黒卿にでもなるんか。
「漆黒の力の前にひれ伏すが良い!! 墜ちし聖人を止める者あらず!!」
ほらもうダークサイドに墜ちたような感じになった、光墜ちから取り戻した形になってるからこれで正しいような気もするが……
「待て、ビクテロ今何してる?」
「あの方ならオリハル狐の突進を受け止めていますが」
「はぁ!? そんなことできるわけ……今してるのか」
逆十字状態でも無理だろそんなの、ダークフォースとやらにその秘密があるのか? 聖人の中にジェ○イマスターでもいたのか。
「凄まじい力が仇となったな!! 貴様が強ければ強いほど我が力は増すのだああああ!!」
もしかしてダッキからもステータス奪ってやがるな……えげつねえことしやがる。もしや敵からだけ奪う形の逆十字状態なのか? そうすると俺のデバフが減って困るんだが……
「そしてええええええ!!! これがオレの最大攻撃!! 生贄賛歌・最後の審判」
「グゥオオオオオオ!?」
うわー、なんかもう、なんだこれ、何かが降り注いだり地面が割れたりもう災害のオンパレードでしかない。どっちが敵か分かんねえぞこんなの。見えてないのがむしろ良かったと思うレベル。
「あーっはっはっはっはっは!! 解放されし我が不運を受けてなお立てるか?」
なんだかんだとストレス溜まってたのか、聖人も大変だったんだな。そういう鬱憤が爆発しているのを感じる。
「でも、たぶんノーダメージだろうな」
「あれ?」
「グォン!!」
あー、飲み込まれる音。噛まれてないのが救いだな。
「くそっ!! ビクテロがやられた。吐き出させるぞ!!」
「ええ……あの人なら勝手に出てくるでしょう?」
「無理だ!! やるぞ!!」




