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ほこたて

「コンコン」

「ゴォオン」


 オリハル狐同士のやりとりは全然わかんねえな、ただ鳴きあってるのを見てるだけだわ。話がまとまってるのかどうかもよく分からん。きっと上手くいっていると信じよう。


「コン!!(やりましたご主人様、許可をいただきました。しかもこの場で直接持っていって良いそうです)」

「おお、やったな!!」


 しかしだ、ただでさえ硬すぎるオリハル狐の巨大版をどうやって削るってんだ。


「では失礼します」

「ん? なんで人型に……うおっ!?」


 噛みやがった、ていうか噛むなら狐の時の方が良かっただろ。なんでわざわざ。


「だってこれ以上目立つのはやめた方が良いですよね」

「……そりゃそうだな。でかい狐が二体もいたら流石にな」


 パワーアップのために血を飲むと巨大化しちまうから仕方ないか。でも前もって言っといて欲しかったな。ん? でも待てよ、今の俺の血ってどうなってんだ。血も呪いの塊だと思うんだがそんなもん取り込んで大丈夫なのかよ。


「うっ!?」

「大丈夫かプラチナ!?」


 駄目か!?


「今すぐ吐き出せ!!」

「うまーい!!」

「そうすか……なら良いんだが」

「えへへ〜、驚いてもらえたかの?」


 いやコテコテだったな今、心配して損した気分だわ。耐性完璧のオリハル狐がそんな簡単にどうにかなるはずもなかったな。ん? なんかさっきおかしかったような。


「まこと妾にふさわしい甘露じゃ」

「プラチナ、じゃねえな。ダッキか?」

「さすがにご主人様にそう呼ばれるのは嫌じゃのう、変わらずプラチナと呼んで欲しいんじゃが」

「でも今のお前はあまりにも……その」

「あまりにも、醜いかの」

「いや、ちょっと受け止めきれない」


 視覚以外のところで感じてるからなのかは分からないが、まず匂いがエロい。何を言ってるか自分でもよく分からないがとにかくエロい。衣ずれの音から色気を感じるとかいうわけのわからない状態でもある。


「なぜじゃ? 妾は醜いかの? 童の姿の方が好きか?」

「そうじゃない、その、見た目は分からないが、匂いとかがその扇情的すぎて」

「こん? つまりどういうことじゃ?」

「なんかドキドキするんで、プラチナだと思えない」

「ふふ、愛いのう。やっぱりご主人様は妾を虜にする。言っておくが妾もご主人様以上に胸が高鳴っているのじゃぞ?」

「うぐっ!?」


 なんだ、柔らかい、温かい、そして香りが一層強くなる。抱き抱えられたのか?


「聞こえるじゃろう?」


 確かに心臓の音が聞こえる、ドクドクと鼓動を刻む心臓は確かに今にも張り裂けそうなほどに早く脈打っていた。


「ああ、食べてしまいたいのう。妾の中にご主人様が入ってくるのはそれはそれは気持ち良いじゃろうなあ。じゅるり」

「食われるのは勘弁だな、それに今の俺なんて食ったら腹壊すぞ?」

「それで死んだとしても本望じゃよ」

「そんなんで死なれてたまるか」


 プラチナが死ぬ姿とか想像もできねえ、したくもねえが。


「さて、これくらいにしないとあそこの娘らに邪魔されそうじゃのう。妾は殺生石を取りに行くとしよう」


 少し名残惜しく思ってしまったのは内緒だ、あの空間は居住性と依存性が高すぎる。むしろこれですんでよかったと思うべきか。


「かかさまよ、少し手荒になるんじゃが辛抱してもらえるかの」

「ゴン」

「変わらぬなぁ、かかさまは」


 そう言ってプラチナは勢い良く巨大オリハル狐に向かって手を差し込んだ。その際にメギッという聞いたことのない音がしたが骨が折れたとかではなくきっちりとプラチナの腕は巨大オリハル狐の中にあった。


「ふんっ!!」


 引き抜いた手の中には何かが入っているように見える。あれが殺生石なのか、結構あっさりだったな。


「ゴンゴーン!!」

「分かっておるよかかさま。ご主人様、今より妾はこれを飲む。しばし暴れることになるから後は頼んだのじゃ」


 え? 暴れる?


「ごくっ」


 本当に飲みやがった、暴れるの? 今のプラチナが? マジで? そうなると懐かしのダッキ戦をもう一度ってことか!?


「ユーホ!! ビクテロ!! 最大限の戦闘準備をしろ!! 今から戦う相手は世界最硬の狐だぞ!!」

「いつもいつも急だなサー・レヒト」

「いちゃついてると思ったらなんです全く」


 「防御は最大の攻撃」「こいつの前では棒切れも名剣も等価」「地面全てが敵と思え」「傾国の狐、ただし物理」ダッキを表す渾名は数あれどやっぱり一番当てはまってるのはこれだよな。


「矛盾の盾」


「何者も貫けない盾だ、攻撃を通そうと思うな。回避と防御に専念するんだ。後申し訳ないが俺のフォロー頼む」

「グゥオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 巨大オリハル狐が消えるのと同時にプラチナは完全に俺の知ってるボスとしてのダッキになっていた。


「しばしって、どれくらいだ? それによっちゃ詰むぞこれ……」














 

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