表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/126

オリハル狐の山

「山動かすってのか」


 あれを動かすなんて能力持ってる奴なんていねえぞ。どうすんだよあんなの、物理的な意味じゃないことだけを祈る。だがまあただの山じゃねのは分かる、なんせあの山だけ存在感が桁違いだからな。見えてなくても分かるくらいだから半端ねえぞ。


「コン(違います)」


 良かったー、できればなんか簡単な感じでお願いします。俺に労働力を期待されても厳しいからな? あんまり重労働はできないぞ?


「コンコンコン(用があるのは山というよりは鉱脈なので)」

「んん!? 鉱脈?」

「できれば私にも通訳して欲しいのだけれど? 鉱脈をどうすると?」

「プラチナに聞いてくれ……」


 鉱脈見つけてやることなんて一つだと思うけどな、それすなわち炭鉱夫の仕事が待っているということに他ならないだろ。


「一応聞くけどプラチナは鉱脈で何をする気かな」

「コン(殺生石を掘り出します)」

「あー、そうだよねー、そうなるよねー、ちなみに魔王城にあるって言ってなかった?」

「コンコン(貴重なものなのできっとお城にあると思ってたけどあっちにあるみたいです)」

「そうすか……で殺生石ってなに?」


 なんか普通に知ってたからなんとなく受け止めたけど、この世界の殺生石っていったいなんなんだ。聞いてなかった。


「コン(コアです)」

「コアって、なんのだよ」

「コンコーン(オリハル狐のです、オリハル狐は基本的に希少な金属が結晶化して魔物化したものですが大本の鉱脈はあそこみたいです)」

「でもコアなしでも問題なさそうだけどな……」


 今までも特になんの支障もでてなかったように思えるが、そんなに重要なものならもっと早めに取りにくるべきだったな。


「コーン(あると便利なのです)」

「まあブレインも良い感じになったし、後はほっといても何とかなる気がする。ここらでいっちょ炭鉱夫をやるのも良いか……」


 掘り当てることができるかどうかは分かんねえけど、プラチナなら見つけられるんだろうきっと。そうでないとゴールドラッシュに参加するようなもんだから時間とか絶対に足りないし。できれば明日までに見つけたいとこなんだが。


「移動はユーホに任せるとして、何か道具が要るか?」

「コンコン(要りません、そのあたりの雑魚金属ではあて達の鉱脈には全く歯が立ちません。掘るのはあてがやります)」

「じゃあ移動するか、ユーホ頼む」

「嫌よ、こんな人の目のあるところで禁忌を破ったらそれこそ世界中の魔法使いと商人から殺される」

「さいですか……」


 てなると、移動手段は歩きか……あーあ、シルバータンカーかクワイエットベルディアがいればすぐに着くだろうにな。あいつら一体どこに行ったんだよ。もしかして神のところに捕まってんじゃねえだろうな。帰巣本能的なもので戻って来てくれねえかな。


「げひひん」

「そうそう、こんな感じの腹立つ鳴き声が……っておいおい嘘だろ」


 なんでシルバータンカーがこんなところに、待てよ、シルバータンカーに乗ってたのは誰だ。あいつが単体で来るなんてありえねえ。なら、ここに居るのは。


「見つけた……サー・レヒト、ようやく」

「ビク……テロだよな」


 あまりにも薄い、あまりにも存在感がない、今の俺にはギリギリしか認識できない、見えない、分からない、あんなにやかましかったはずなのに、何故だ


「あなた……!! その傷でなんで生きていられるの……!!?」

「ユーホ、今のビクテロはどんな風に見える……今傷を負っているのか?」


 気配がなければ耳を使え、何が聞こえる。軋む音だ、人の音ではない音が混ざっているが酷く傷ついた音がする。鼻はどうだ、鉄の匂い、血だそれと微かに腐臭、そして内蔵の匂い、致命傷の匂いだ。なんでだ、ビクテロは聖人の仲間だろ、なんでそんなに傷を負うことがある。


「酷い傷……どこもかしこも傷だらけで、本当になんで生きていられるのかが分からない」

「ビクテロ!! どうしたんだ!!」

「しくじったんだ、オレは、奇跡が持ち帰ってきたものは聖人の命を吸っている。聖人もセフィロトも見境なしにだ……その代わりに奇跡は馬鹿げた力を手に入れた。オレは、なんとか抵抗したがこの様だ、十字も奪われた、それでも、オレは、謝りたくて、サー・レヒトを裏切ったことを、それ、だけが、心残りで、ここまで、来た、すごいだろ、シルバータンカーはサー・レヒトを覚えていたんだ」

「良いからもう喋るな!! 俺はもう知ってるよ、お前が聖人側の情報を得るためのスパイだって。裏切ってなんかいなかったんだろ!! お前の親にも会ってきた、ツァラトゥストラのゴールだろ!! お前に話すことは山ほどあるんだ。だから死ぬな!!」

「ああ、そこまで知っていたのか。参ったなあそんなこと言われたら、未練になっちゃうじゃないか」

「うるせえ!! ユーホ治療頼む!!」


 ビクテロを死なせてたまるか!! 俺はそんなのが見たくなくてここまでやってきたのに!!


「無理よ、今生きてるのだって異常なの。それこそ死を否定するくらいの力がないと。私にはその力はない」

「そ、んな」


 死を否定する、俺はそれをしたはずだ。何でだ、何で俺は蘇生した。ああそうか、俺は呪いで、願いで蘇生したんだ。なら、同じことをすればいい。それで俺から何かが失われるとしても、なんの後悔もねえよ。


『スキルツリーを代償に蘇生を行使しますか、今回失われるのは一本目のスキルツリーです。項目【金剛】【聖水】【アドラメレク】【エロヒム】となります』


 持っていけや、それでビクテロが救えるならな。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ