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2年前という事

「肉片にしたと思ってもまだ駄目か……今度は危険な場所に送り込む能力かよ」


あの犬が作った空間が光ってここに居るって事はそういう事だろうな。


「……でもおかしいなここの大樹は折れてるはずだろ」


少なくともゲームだとそうだった……でも今は違う……てことは……


「もしかして間に合うのか?」


本来なら救えずに目の前で死んでしまう命がある。それを早めに動くことで救えるかもしれない……それができるならきっとそれは良いことだ。


「問題は俺の弱さか……」


デバフが切れた今は最初のダンジョンの雑魚に余裕で殺されるだろう、頼みの綱は知識とこの棒だけか。


「とりあえずそこにいる沼ウナギに投げてみっか……」


倒せれば良し、倒せなければ……まあそん時だ。


「おらあああああああ!!」


おっそ……それにヘロヘロだ……これじゃまともに当たるかどうか……


「動け……」


一応操作はできるみたいだ、軌道を調整して棒の尖ったところが頭に刺さるように……


「ぬきゅう!?」

「やったか?」


しまった……これはフラグか。こういう時は大体敵を倒せない


「ヌバァアアアアアアア!!!」

「沼ウナギじゃねえ!?」


なんだあのチョウチンアンコウみたいなの!? データだけあったっていう沼の主か!?


「逃げろおおおおおおおお!?」

「ヌウウウバアアアアアア!!!」


あんなのいるなんて聞いてねえぞ!? いやゲームにはいなかっただけだけど!?


「やっべ……」


足が……もつれて……


「ヌバアアアアアア!!!」

「ここまでか……」


あのでかい口で一息に食われるのか……くそっ……ここにティーアがいれば……


「なんだガキ、死にたいならもっと楽な方法があるぞ」

「え?」


俺の目の前を大きな影が横切った。


「マッド・クワイエットか……ここまででかいのは珍しいな。まあ……大きさも強さも関係ないけどな……オレの不運に巻き込まれて死ね」


目の前の人影は大きい十字架のような形の武器を取り出した。おいおい、嘘だろ。それに不運に巻き込まれて死ねって……


「はぁあああああああああ!!!!」


十字架を地面に突き立てた……俺の記憶が正しければここにいるのは少しまずいぞ!?


「ん? 勘のいいガキだ。長生きするぞあいつ」

「ヌバアアアアアア!!」

「ああ、待たせたな。時間だ……生贄賛歌(サクリファイス)!!」


閃光、轟音


「あーっはっはっは!! 気持ちいいだろう!! これが神の息吹ってやつだぜ!!」


雷が落ちたはずの人はそれを意にも介さず、マッド・クワイエットと呼ばれたチョウチンアンコウは黒焦げになっている。少し美味しそうな匂いがしてるな……食えるのかあいつ。


「おいガキ、次があるとは思うなよ。今回は運が良いだけだ、分かったら消えろ」

「消えません」

「あ? 死にてえのか? それなら雷に巻き込まれれば良かっただろうが」

「ビクテロ・サッドさんですよね」

「お前……何者だ……その名前で呼ぶ奴はもういねえ。みんな死んだからな……なんで知ってる……オレの何を知ってるんだお前は!!」


うーん分かりやすい反応で助かる。ビクテロ・サッド、鎖と楔で固めた身体を黒いローブで隠した格好で白い髪を一つにまとめた隻眼の元聖職者。


「いいえ、何をではなく。なにもかもを知っていると言いましょう」

「なんだと……?」


生まれながらの不幸体質で幾多の場所を不幸の渦に巻き込んだ。そのせいでやっと得た仲間も失い自暴自棄になり死に場所を探している。


「サー・ビクテロ……とお呼びすれば分かりますか?」

「お前……まさか組織の……!!」

「ええ……あなたと同じ組織のものです……あなたは私の仲間になるのです」

「な……なんだと……それならこれが分かるはずだ……」


という設定を背負った中二病キャラだ。ぶっちゃけ本当なのは不幸体質のところだけで特に暗い過去を背負ってるわけではない。実際のところ不運に任せた攻撃以外は駆け出しの冒険者と変わらないくらいだったはずだ。


「グ・ライカ・ヘルオ・ラジ」

「ラーラ・ヘルフォ・ブーハ」


これはビクテロがよく言う謎の呪文、これを教えてくれるようになると仲間にできるフラグなんだが……それはスキップしよう。だってもう知ってるから。


「まさか……同士が……本当にいるなんて……」

「ずっと探していました……あなたのことを」

「オレを……!? やはりオレは選ばれし者だったのか……」


こいつは「歩く災害」「一手でパーティ全員が落ちる落とし穴」「二回に一回爆発する時限爆弾」なんて呼ばれて厄ネタ扱いされていた。その理由は簡単こいつの固有パッシブスキル【不運の采配】のせいだ。簡単に言うと、こいつの行動毎に判定を行なって失敗すると局所的な天災が起きて巻き込まれればもちろんダメージを食らう。そしてその確率は50%でその効果は様々だが一番嫌われたのは逆十字だった。


「まさかここで会えるなんて……まさに……」

「運命だな姉弟!!」


逆十字は恐ろしい効果で前衛のステータスを一気に下げる代わりにビクテロの性能を強化するというものだ。ぶっちゃけビクテロ1人強くなっても全員で殴った方が強かったから全くの無意味な効果だった。だが今は違う。俺にデバフをかけられる貴重な存在の1人なんだ、絶対に仲間にしなければ……!


「ん? 姉弟?」

「どうした? 不満か?」


ビクテロの性別は不明だった……女でもおかしくないが……まさか……?


「……ビクテロ姉さん?」

「はうんっ!」

「姐さん」

「きゅうんっ!?」

「お姉ちゃん」

「あうう……!!」


こいつ……反応してやがる……確かこいつ大家族の末っ子で長男長女に憧れがあったんだったか……それで喜ぶならそう呼んでやろう。


「お姉ちゃんに手伝って欲しいことがあるんだけど……良い?」

「うんうん!! お姉ちゃんになーんでも言ってごらん!!」


チョロいなこいつ……















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