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二枚舌野郎の落とし前


「僕、いや、私はこの国のあらゆる理不尽に立ち向かうと約束する!!」


 大歓声と拍手の雨あられ。それを一心に浴びるブレインも立派なもんだ。一時間でよくもまあここまで仕込んだな。


「いかがでですか閣下、これで小生の有能さを証明できましたでしょうか」

「どの口で言ってやがる、俺がお前を信用する事は永劫ないと思え」

「ご無体なー!?」


 んで、俺の横でゴマをすってるのが元ゼツだ。なんでこいつが死なずにここで働いているのかというとそれは結構簡単な理由だ。


「死ぬくらいなら奴隷として生きると申しましたので連れて参りました。煮るなり焼くなり殺すなり好きにしてください。ゼツは処刑されましたのでアンダとでも呼ぶのが良いでしょう」

「え? ちょ、いきなりすぎない」

「閣下のためならば例えば火の中水の中にでも死なない限りで参ります。小生をどうかお使いください」

「マジか」


 という経緯があった。なのでせっかくだからとブレインの演説の指導をさせてみた。そしたら今の感じに仕上がったってわけだ。取り繕うことにかけてこいつは最強だからな。まあ適材だったわけだ。


「しかし驚きましたぞ、あのような政策で民の心を掴むとは」

「は、見様見真似だよ」


 俺が今回の魔王選に持ち込んだ政策はある意味この国には画期的だったろうな。


「なんで民主的なのに保証はなかったんだか」


 ブレインがさっき〆で言ってたあらゆる理不尽って言うのは平たく言えば貧困とかに立ち向かうって事だ。ここでは社会問題にあたるものを三体の龍に例えて演説をした。


「あの方は誠に頭の良いお方、覚えが良すぎて震えが来ました」

「だろ? ブレインはそれだけで魔王になれるさ」


 俺のぼそっと呟いた情報だけでほぼ全部自分で考えて原稿作りやがったからな、マジで頭脳のステが狂ってるとしか思えねえ。それに加えて二枚舌お得意の求心術だ。あれよあれよと言う間に人が集まりやがった。ゼツがいきなり処刑されて浮いてた分をがっちり掴んだ形だな。


「てかお前随分と余裕だな、もっとみっともなく足掻いて死ぬのかと」

「何をおっしゃいます。小生の命よりも貴重なものなどありますまい。アームズ殿に見つかった時点で観念しておりました」

「殊勝なこって」


 ゲームだとアームズに一通り攻撃して全部効かなくて絶望してから首が落ちるんだがな。まだ比較的マシな段階だったのか?


「正直申しますと疲れていたのですよ、どこまで目指せば良いのやらと思うくらいで。ですから小生は今のくらいがちょうどいい。閣下についていればきっと面白きものが見れましょう」

「嘘だな」

「あひぃ!? 何故バレたんですか!?」

「嘘つくときお前唇舐めるんだよ」

「な、なんと!? これからは気をつけましょう」

「嘘だよ、本当は勘だ」

「ぬぐぐ、閣下は小生以上の嘘つきのようですな」


 ぶっちゃけた話をすると決め手は音だった。何故かは知らんがこいつが深く息をしてる時は嘘なんだと分かった。つーか、目の見えてない俺が唇舐めてるとかで気付くわけねえだろ。


「や、やりました。大成功です」

「おう、凄かったぞ。見たかあの群衆の顔。希望に満ち溢れてた。お前の力だ」

「いえいえ、先生達のおかげです」


 なんか知らんが先生と呼ばれることになっちまったな、まあ良いけど。


「明日の昼までが期限だって言ってたな、休んでる場合じゃねえぞ」

「はい先生!!」


 よし行ったな。


「アンダはブレインについててくれ、俺は少し席を外す」

「はっ、承りました閣下」


 アンダもいなくなったと、これでいい。ようやく始められる。


「で、見つかったか?」

「コン!!(見つからなかったですご主人様)」

「探知しようにも無理よ、色んな反応が混ざりすぎてる」

「おっかしいなあ、ここにもセフィロトはあるはずなんだけどな」


 プラチナとユーホに任せていたのはセフィロトの捜索だった。ブレインの仕込みと並行してなんとか俺の強化もやっとかねえとな。


「目立つものなんかあの魔王城くらいだしな、まさかあれがセフィロトなわけあるめえし」


 でもなー、五獣の塔みたいな例もあるしなー。一応可能性として考えておこうか。


「それで? あの魔王候補は仕上がったのセンセイ」

「やめろって、先生呼びはブレインが勝手にしただけの事だ。それはともかくとして仕上がりは上々だ。あれならグレーゴリの聖騎士を迎え撃てる」

「それにしても自分の都合で国を引っ掻き回すなんて恐ろしい事をよくもまあ平然とできるものね」

「必要に迫られたら人はなんでもできるんだよ、それに遅かれ早かれブレインは王になってたさ」

「コンコン!!(でもでも別のものは見つけました!!)」


 別のもの?


「何を見つけたんだ?」

「コン!!(かかさまの殺生石です)」

「それって宝物庫とかにあるんじゃ……」

「コーン!!(あっちでーす!!)」


 プラチナが見た先には山があった。え? あれ? あれが殺生石? 山サイズ? マジで?


「あっちって……山だよな」

「コンコンコーン(はい、あれがかかさまの殺生石です。あれを取りに来たんです)」


 持ち帰る気なの? 山を?






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