民主主義魔王と武闘派家臣
「何言ってるんだ!? 僕を支持してくれる人なんていないよ!!」
支持?
「支持ってお前、やるのは決闘だよな?」
「何年前の話をしてるんだ!! 魔王を決めるのは選挙に決まってるよ!!」
「やだ、魔王デモクラシーが始まってる」
俺が思っている以上に魔王の統治は民主的らしい、でもそうなると俺の持ってる幹部の弱点情報には意味がなくなるな。
「選挙かよ……お前被選挙権持ってんのか?」
「一応はあるけど……出たところでなんの意味もない。もう次の魔王様は決まったようなものだから」
「お前以外の魔王……誰だそいつ」
「そんなのゼツ様以外にいるわけないじゃないか、あの方はきっと良い魔王国を作ってくれるんだ」
「二枚舌クソ野郎じゃねえか、あいつに国なんか任せたら三秒で滅ぶわ」
「なっ、なんてことを言うんだ!!」
ゼツ、またの名をターンという魔王側のキャラクターを表す言葉は一言だ「自己中のコウモリ」これが一番奴を的確に評している。そこそこ強くてイケメンで、恐ろしく口がうまい奴だ。それだけならただの嫌な奴で済んだが、こいつは基本的裏切りを躊躇無く行ううえに自分の地位にしか興味がない。本編では裏切り行為がバレてアームズに首を落とされてたっけな。
「悪い事は言わねえ、お前が王になるんだよ」
「そ、そんな事する理由がない。どんな得があって僕を王にするんだ!!」
「教えてやる、今から5日後にグレーゴリが攻めてくる。三万五千の聖騎士の軍団だ。お前なら倒せる、だがそうでなけりゃここは滅ぶんだ。俺はそれを止めに来た」
「グレーゴリが!?」
これはまあ、本当のことは言ってる。だって俺のいるところに聖騎士は送られてくるし。元凶が俺って事を隠してる以外は本当だ。ブレインじゃなきゃ流石にこれには対抗できないだろうしな。
「それを信じる理由がない、根拠はなんだ」
「これだ」
久々に登場しましたナックルの呪い付きハンカチ、魔王側の奴らにこれは効果抜群だからな。
「その気配は、先代様の」
「これを代行証代わりと託された、良いか。滅びから国を救えるのはお前だけなんだよブレイン」
「そ、そんな……」
あと少しで落ちるな、なんか他にファクターはないか、決断を後押しする何かが。
「侵入者と思って来てみれば、あなた様でしたか。良い折に参られましたな」
「い、一席様!?」
「畏まらずとも良い、私もお前も魔王様に仕える一人。同じ立場だ」
「は、ははぁ!!」
久しぶりに会ったなアームズ、こいつはを最後の一押しとしよう。この感じだとアームズから言われた言葉なら無条件で信じ込むまであるぞ。
「お久しぶりでございます、ますます磨きをかけられましたな。隠しきれぬ禍々しさは先代様の依代にふさわしい。次代の魔王が決まるのを見にこられたのですかな?」
「実はナックルから言伝があったんだ、来たる災厄のためにこのブレインを王にしろってな」
「なんと……先代様の……しかし、それはできぬ相談です。この国は選挙によって王が決まります、今からでは支持を得ることは難しいでしょう」
「やはりゼツが有力か」
「ご存知でしたか、小物ではありますがその求心力は侮れませぬ。此度の王は奴でしょうな」
「あいつの裏切りは知っているか」
「今、なんと」
確かゼツがターンとしてスパイやってるのはかなり長い期間だったはず。今の段階でも断罪に十分なくらいの証拠やら罪状はあるはずだ。
「確か奴の五番目の別荘の地下にある魔法陣からあいつの秘密の部屋に行ける。そこには許しがたい行動があるはずだ」
「直ちに行って参ります、ゼツが居なくなるとすれば混乱に乗じることも可能でしょう。あなた様の身分の保証はやっておきますのでご準備を」
「分かった、ナックルの意思を全うする」
「では」
すげえ勢いで移動したな、たぶんありゃ薄々勘付いていたけど決め手がなかった感じの態度だ。そうじゃなきゃあそこまで迅速に動いたりしねえ。
「ていうかアームズ優秀だな、やっぱり一席は違うわあ」
「一席様と対等に、しかも先代様の依代、まままま、まさかとっても偉い方なんでございますでしょうか……?」
「ん? 別に偉くはない。ただ立場が特殊なだけだ。で、十中八九ゼツは処刑されると思うが。お前は俺についてきて王になる気はないか?」
「先代様もそう言ってくれているのならもう迷う必要はありません、僕は魔王になります」
はい落ちたー、これでブレインを王にしてグレーゴリと戦う構図のできあがりだ。なんだかんだとイレギュラーだったがまあなんとかなったな。
「あなた詐欺師になった方が良いと思いますけど?」
「人聞きの悪い事を言うなユーホ、俺は別に私腹を肥やそうとしてやってるわけじゃない。やるべき事をやるために手段をあんまり選んでないだけだよ」
さて、次は選挙対策か。どんな感じでアピールするのが良いかな。




