初めの挨拶
「さて、と。これからどうするかね」
「レヒト君の行く場所について行くよ?」
「いやそうじゃなくてな、お前が気絶させた仲間と聖人の死体をどうするかって事だ」
玉座を失った今となっては前みたいに吸収するってこともできないだろうし。いや待てよ? 全身呪いみたいな状態だから無理やり取り込むことも出来ないわけじゃないのか?
「試してみるか」
胸に剣が刺さった洗礼に近づいて行く、運が悪かったなニケが来なかったらこんな風に死ぬこともなかっただろうに。
「よいしょっと」
洗礼の身体に触れ、呪いの操作で取り込めないか確認する。あっという間にとはいかなそうだがなんとかなりそうな感じがする。
「食えばいいのか?」
なんとなくウンターの呪いを出して食わせてみる事にした。他の人型のやつが食ってる様子を想像できなかったのもある。
「一口かよ、どんな顎してんだ」
変形した一口で洗礼の身体は飲み込まれた、跡形もなくなったが確かにその存在が俺の腹の中にぶち込まれたようだ。となると、翼の野郎と同じことが起きるかもしれねえな。
「ニケ、俺がなんか変になったら意識を刈るか異常な部位を切り落としてくれ」
「え? レヒト君に攻撃できないけど? 奴隷だから」
「へ?」
「契約で、主人には攻撃できないよ?」
「マジかよ、って、来たか……!!」
身体から光が溢れ出す、忌々しい、この、光は、神の浄化か、
「誰か、起こせ、ぐあああああ!?」
全身が焼けてやがる、解呪が得意とかぬかしてやがったのは嘘じゃなかったみたいだな、焼きつくされる、前に、抑えこまねえ、と。
「全員起こしたよ」
仕事が早いのは、いいことだ、それで、この状態をどう打開する、べきか、
「な、にか、変なもの生えてねえか……?」
「さっきのやつと同じ膜みたいなのが出てる。もしかしてそれを壊せば楽になる?」
「たぶん、な、すまねえが、やってくれるか」
「分かった、私が指示を出す」
叩き起こされてそうそう変な作業に巻き込んじまって申し訳ねえが、このままだと結構早めに死にそうな気がするんでな、ちょっと無理してもらうしかねえ。
「ティーアちゃん、正面から少し左側に薄い場所があるからそこにこれを」
「ニケちゃん!? 何でここに!?」
「驚くのは後今は従って、さあ」
「う、うん」
ニケが手渡したナイフが俺に向かってる投げられた、それは見えない壁に弾かれてティーアの元に帰って行く。その時微かに何かヒビが入るような音がしたような気がする。
「思った通り、繰り返すよ。さっきナイフが当たった場所に攻撃して。他の人は遠距離攻撃手段があるよね。同じタイミングで当てないと意味がない。呼吸を合わせて、これはレヒト君を救うためだよ」
ここでニケが一呼吸開けた。
「3」
「2」
「1」
「今だ!!」
一斉に攻撃が飛んでくる、寸分違わず同じ場所にだ。それは確かに見えない壁に阻まれたが反射は起こらずその場で落ちた。同時に俺を焼く忌々しい光も収まった。
【八番目の聖痕】
ー 他とは違う、そう言い続けた。そして這いずり回った先に待っていたのは特別ではなく差別だけだった。違う、違うんだ、選ばれし人間なんだ、そうじゃなきゃここまでの受難なんてありえない、そうでもなきゃこんな理不尽に説明がつかない、なんでなんでなんで、なんで目の前のあいつじゃなくて、自分なんだ。だけど手に入れた、特別を。目に映る全ての有象無象とは違うものになったんだ。だけどどうしてだろう、ひどく空っぽだ、手に入れた特別は、こんなものだったのか、底の空いた器は外側をいくら飾っても中身なんてないのか。何もかも飽いてしまった、特別なんてものは必要なかったのか。ただ、隣に誰かがいればそれで良かったのに ー
『聖痕を入手いたしました、スキルツリー参の解放素材となります。スキルポイントを1ポイント入手いたします』
1ポイントじゃ何にもならねえな、保留だ保留。ていうかスキルツリーは残ってんだな、あの玉と一緒になくなったと思ってたわ。
『スキルツリーはすでに貴方様のシステムでございます。拡張、開放には問題ありません』
なんか他にスキルとか覚えてねえのか、流石にこれだけだと割に合わねえぞ。
『固有スキル【洗礼】の解放にはスキルツリー参の解放とポイントの割り振りが必要です』
左様ですか、結局できねえってこったな。分かった分かったもういい。
「助かったありがとう。じゃあ早速だが紹介だ、さっき指示を出してたのが新しい仲間のニケだ。いろいろあって俺の奴隷になった」
「レヒト君、いや、旦那様の奴隷になったニケです。よろしくお願いします。それじゃあちょっとだけ戦おうね。皆がどれくらい弱いか知ってもらう事にするよ」
ううん? 今なんて?




