シナリオブレイク
「元気だったか?」
「あんまり、だって声はうるさいし変な力ばっかり覚えるんだもん」
まだ洗脳はされてないのか? 預言者ではないみたいだが、それでも洗礼を殺して俺以外の意識刈り取ってるんだよな。 まあ、敵と味方の区別ができなかったから明確に俺に殺意ある奴だけ殺して後は気絶って感じだろうがな。
「どうして分かったんだ?」
「場所のこと? それならいっつも把握してるよ」
「探知魔法ってことか」
「んーん」
首を横に振る? 魔法をでもなければそんなことはできないはずだ。それ以外で俺の位置を把握する方法なんてスパイくらいしか。
「勘だよ、なんとなくこっちだなーって分かる」
「本気か?」
「だってそうなんだから仕方ないよね」
こいつならそれもありえそうだと思ってしまうのが悔しい。何せこいつは極めればナックルを単独で討伐できるくらいまでいくからな。
「どうやってここまで来たんだ?」
「ぴょーんって」
擬音と一緒に足をぺちぺち叩きやがった、文字通り徒歩で来たってか。ここまで村からどれくらい離れてるか分かってんのかよ。
「足でか?」
「うん、山とか結構越えたけどやっぱり走るより跳んだ方がいいね」
山をひとっ飛びとかもう大分人間やめてんな。こりゃあ思ったより仕上がりは早そうだな。世界最強に限りなく近いんじゃねえか。まだストーリーが始まってもいないのによ。
「何であいつを殺した? ニケの力なら他の奴みたいに意識だけ刈り取れただろ」
「ああ、それはね。レヒト君を殺そうとしてたから。さっきだって戻ってきたから良かったけど危なかったんだからね」
「お前なんで知ってんだ?」
「だってレヒト君の状態は大体分かるから」
おいおいどうなってんだ、ストーカーとかってレベルじゃねえぞ。何でこんなに分かられてんだ。移動してからニケには会ってもいねえのに。
「千里眼、か?」
「違うよ、さっきと同じ」
「勘か」
こいつの勘はいったいどうなってやがる、それでも実際ここまで来てるからそれも馬鹿にできねえ。困ったな。
「それと、何でこいつに剣を刺せた? こいつに攻撃したら反射されてしまうはずだったんだが?」
「え? そうだったの? 普通に刺せたから全然気がつかなかったよ」
「おいおいマジかよ」
「だって、あの人の周りにあった薄い膜には切れ目があったし」
薄い膜? そんなもんなかったような気がするんだが。こいつには見えてたって言うのかよ。つくづく強えなこいつ。前回勝てたのマジで奇跡だったんじゃねえのか?
「意識の切れ目っていうか、視界の切れ目で区別してたみたいだったよ?」
「そこまで分かんのか、随分鍛え上げたんだな」
訓練とかそんなもんで身につく力かどうかは分からねえが。少なくとも今のニケは未知すぎた奇跡を除く誰よりも強いのは今のところ確定か。
「やっぱりいざという時助けられないと困っちゃうからね、それにそろそろ限界が来そうだから」
「限界ってなんのだ?」
「うん、最近は、特に酷くて、何かに塗りつぶされる感覚が、くっ、あってね、その前に一回会っておこうとは思ってたんだけど、なんとか、間に合ったみたい」
辛そうだ、塗りつぶされる感覚ってのはそのまま預言者になってしまうことを意味していると見ていい。今の異常な成長もその影響なんだろう。やっぱりニケは旅立つ運命にある、しかもそれは神の傀儡としての魔王を殺す旅だ。待てよ、ストーリーをなぞることに意味がなくなった今なら。
「ニケ、お前に首輪をつける」
「え?」
これでおそらくストーリーとの乖離は決定的になる。このせいで予想もしなかった災厄が引き起こされるかもしれない。それでも俺はみすみすニケを引き渡す何てことはしねえ。できることはやっておく、救えるものは救う。そういう思いでやってきた。
「だったら、救うために始まる前に終わらせても良いよな。お前なら持ってるだろ?」
「え? あ、うん。いつも携帯してる、けど、え?」
お前はそういう奴だよ。だから今ここでお前を神の鎖から切り離す、俺の呪い塗れの鎖になっちまうのは勘弁してくれよ。
「俺はお前を今から隷属させる、異論はないか?」
「ない、けど。どうしていきなり」
「契約成立だ」
ごめんな、話してる時間も惜しい。いつ妨害が入るか分かったもんじゃねえからな。
「えへへ、嬉しい」
首輪がついて契約書が光を放つ、おそらくこれで良いはずだ。これでニケは堕落した事になるだろう、とてもとても神からの預言なんざ受けられる身分じゃなくなった。
「ざまあみやがれ、全部思い通りになると思ったら大間違いだぜ」
これでようやく神に一矢報いた事になるだろ、こっからニケも加えたパーティで超速で攻略してやるよ。




