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勝利の女神

 流石にこれ以上近くにいられるとまずいな、浄化されたら最悪即死もありうる。


「っ!?」


 なんでティーアがそんな必死に洗礼止めに来てんだ、攻撃は駄目だ。まだ攻撃が何で跳ね返ってきてるのかも分からねえんだぞ。確かにピンチだが本気で即死するとは思ってねえ。


「やめ」

「もう二度とあんなレヒト君は見たくない!!」


 くそ、そういう事かなんだかんだ言って俺の死体がトラウマになってんのか。冷静じゃねえ、そんな状態で殴りかかったら。


「邪魔は駄目です、妨げは悪です」

「きゃあああああ!?」


 反射されるまでもなく反撃をくらうのは当然だろうに、だがこれでよく分かった。俺はきっとこれからダメージを受けちゃ駄目なんだな。俺が攻撃をくらうとそれだけで連携が崩れる。


「これでよし、排除完了」

「まだだ」


 シラヌイが復活してたのか、体力が減った分動きに鋭さは増しているが今はそれに意味はないはず。何か策でもあるのか?


「はっ!!」

「無駄、無意味、分からぬ蒙昧ですか?」


 扇を振ったと思った瞬間小袋のようなものが洗礼の目の前に放られていた。何だ、あれが策の正体なのか?


「思う存分吸い込むが良い」

「っ!?」


 扇で裂かれた袋からなんとも言えない毒々しさの粉末が溢れ出た、毒々しいっていうか毒だろ絶対あんなの、めっちゃ変な匂いすんぞ。


「ティーア殿から託され申した、細かいものまで全て跳ね返せるか!!」

「ごほっ、油断、慢心、よくないです」

「うぐっ!?」


 効いている、と思ったのも束の間でシラヌイの身体は吹き飛ばされていた。触れずに吹き飛ばすとかサイコキネシスの類じゃねえだろうな。


「厄介、最悪、吸ってしまいました」


 粉の毒は吸い込んだのか? やっぱり全部無差別に跳ね返すわけじゃねえんだな。あとは気温が下がった理由だけ分かればこいつの能力は掴めそうなんだが。


「あらあら吸ってしまいましたのね、であれば干渉も容易いでしょうねえ」

「なに、を、した、不調、目眩、お前か」

「いえ、わたくしはすこうしだけ巡りを良くしただけでしてよ?」

「目障り、不快、お前を先に殺す」


 動いた、ユーイーが危ねえか。だけどまあ、あっちには最強クラスの護衛がいる。心配よりも分析を優先しなきゃならねえ。デバフを盛れない今は俺に攻撃手段は呪軍団しかねえが、あれを万が一浄化でもされようものなら死活問題だ。


「おいでませ、じゃあユーちゃん手筈通りに」

「ええイー姉様。加害ではなく過失、もしくは与える攻撃ですね」


 なんて言った今、加害じゃなくて過失? 与える攻撃? なんだそれ。


「あー、間違って暴発してしまったー」

「なん、だ、不可解、無理解、なぜ当たる!?」


 棒読みの後の爆発は確かに洗礼を捉えていた、まともに攻撃が当たったのは初めてだ。ユーイーはいったい何に気づいたんだ。


「わたくしが見るにその能力は相手と自分を分ける能力ですわ。自分とそれ以外の区別を殊更強くするような。だから攻撃が跳ね返された、厳密には当たるはずだった行き場のない力が自分に帰ってきたということでしょうね」

「だとしたら、何だ、それがどうした」

「ですから無差別な攻撃をさせていただきました。ミスで生まれた意思のない力はただの現象、区別しようにもできないですわよね?」


 あれ? 謎解き終わってね? 俺が考えてる間にユーイーがやっちゃった。


「くく、それは一側面に過ぎません。賢しさ、聡明さ、は時に残酷です」

「え?」

「イー姉様!?」


 ユーイーにダメージがあったようだ、もしや自分のダメージを他者に押し付ける事ができるのか?


「てめえ……何をしたか分かってんのか?」

「それが本性、本音、ですか。卑しいですね」


 キレたユーホが魔法をぶち当ててもまったく効いてねえ、何だこいつ、。さっきユーイーが言ってたこと以外に何かあるってこったな。


「もういいです、終わりです。脅威になりえません。標的を殺します」

「待てコラァ!!」


 こっち向きやがったな、一か八か呪軍団で対抗してみるか? 無駄だな、オリジナルが勝てねえのにコピーみたいな奴らが一矢報いれるとも思えねえ。


「いてっ」


 手に走る痛み、これは洗礼じゃねえ。プラチナが俺の手に噛み付いたらしい。


「血をもらいます、そして倒します」

「プラチナ、無闇に殴っても駄目だ。何か策があるのか?」

「ないです」


 ないんかい!?


「だから、ご主人様が使ってください。あてはその通り動きます」

「そういうことか、分かった。やるだけやってみようじゃねえか」


 今のところ解決の糸口は粉を吸ったところと無差別攻撃は効いたところだ。そこから洗礼に効くパターンを炙り出すぞ。


「さあ、死になさっ」


 目の前で起こった出来事はあまりに唐突だった。こっちを向いていた洗礼の胸に剣が刺さっている。剣らしきものが深々と突き立てられている。今の今までなかったものが突如として出現したようだ。鉄の匂いが立ち込める。


「がぼっ……な、ぜ」


 聞きたいのはこっちの方だ、何がどうなったらこんな事になるんだ。


「なんでって当たり前でしょ? レヒト君が二回も死んだら耐えられない」

「おいおいマジかよ、お前とは最後に会うもんだと思ってたぜニケ」

「久しぶりだねレヒト君」



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