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3度目の犬


「はぁっ……はぁっ……くそ……ティーア……生きてるか……」

「何とか……」

「ニケは……」

「大丈夫……まだ戦える……」


勘違いしてた……まさかこんなに早く事態が進行するなんて。正直舐めてたのは否定できないけどな……だからってこんなことになるか!?


「クソ犬がああああああ!!!」

「ガアアアアアアアアア!!!」


異変は突然だった、ニケが逃げ出していくのを見てたと思ったらいきなり視界が変わった。そしたら目の前で馬鹿でかい犬が唸りを上げていたんだ。


「今までとは比べもんにならねえ……強すぎんぞお前……ここはラストダンジョンかよ……」

「グルルルル……!!」


見た目はそんなに変わってねえ気がするが早くて重くて力が強い。ただ単純に強い、それがこんなに厄介だとは……


「シンプルイズベストとはよく言ったもんだな……」

「ガアアアアアアアアアア!!」


一瞬だけ見えた、標的はニケか!?


「食らいやがれ!!」


不安定なティーアのデバフの効果が高いうちに攻撃しねえと当てることすらできやしないなんてな……2段階目よりも強くなりすぎだろ……


「ギャウ!?」


当たった!! そして棒は俺の元に戻る。 こうやって少しずつ削っていけばいつかは倒せるか?


「ギャルルル……!!」

「あー、標的変更ね。というか俺が目的なんだから目移りしてんじゃねえよ」

「グガアアアアアアア!!!」


何となく分かってきたティーアのデバフの周期、今は最低クラスだけど……もうすぐ超強化が来る!!


「見えた!! 終わりだ!!」

「ッ!?」


止まりやがった!? まさか俺の狙いに気づいて理解したとでも言うのか!?


「くそっ!?」

「ギャフフフ……」


笑ってやがる、俺の狙いに気づいてんな……一瞬の強化のうちに殴れば俺はこいつを殺せる。でもそれ以外では致命傷は無理だ。


「……お前馬鹿だろ」

「ガッ……!?」


お前が止まってくれるなら俺は超強化中に棒を投げるだけで良いのによ。


「投げる間もない攻撃と回避で速攻されたら終わりだったな。あばよ犬、もう来んなよ」


俺が投げた棒は犬を正面からぶち抜いた、だがそれだけじゃ終わらねえ。なんかさっきので気づいたがこの棒ある程度自由に動かせるみたいだ。


「自爆もできねえようにしてやるよ……肉片になれ」


 全身砕いてやれば流石にできねえだろ? いくらでも分割してやるよ。


「全く……驚かせやがって……これが何回もあるってなったら流石に厳しいな。いつかティーアだけのデバフだと倒せなくなるかもしれねえぞ……」


 実際かなり危なかった、中途半端に賢しくなってたおかげで殴れたけど本気で殺しに来られてたら肉片になってたのは俺だったな。次の仲間のことを考え始めた方がいいかもな。


「そんで、棒はどうなった?」


今までの経験上犬倒すと棒に変化があるからな、できるだけ強力になってくれると助かるが……


「まじかよ……なんだこれ」


なんか持ち手の近くまで裂けて牙みたいになってるんだが……それに赤黒くコーティングされて刃みたいになってるわ……何この悪魔みたいな武器。


『叛逆の牙』

ー 3度目、それは偶然の否定にして叛逆の狼煙。運命は脆くも崩れ去り、盤石の玉座は砂上の楼閣であると露呈した。牙は定めを噛み砕き明日をもぎ取るかそれとも…… ー


「強くなったんだよな……?」


強くなったと信じよう、説明文を過信すると良いことはないから盲信はしないが。


「問題は呪いの方か……」


【狂狼の獲物】【不倶戴天・犬(反転)】【致命傷化 小 (反転)】 【縦横無尽】


「なんかもう分かんねえよ……なんとなく予想はつくけどな」


 とりあえず今回を乗り越えたことを喜ぶか……


「ニケ、ティーア、悪かったな。これは俺のせいだ……巻き込んでごめんな……」

「レヒト君……そんな……」

「もっと私が強ければ……そうすれば……こんなことには……私は足手まといだった……!! 何が化け物だ……弱いじゃないか私は……!!」


 まさか俺以外も巻き込んで特殊な空間に放り込んでくるなんて思わなかった……せめて次に犬が来るタイミングが分かれば巻き込まずに済んだんだけどな……あの感じだと次は裏ダンジョンレベルになってるかもしれねえからな……万が一俺が死ぬとしても巻き込むわけにはいかないだろ。


「次はないようにするから」

「……もっと頼ってよ」

「ティーア……?」

「私が必要だって言ってよ……そうしたらもっと……もっと強くなれるから……」

「いや……お前に強さは求めてないぞ?」

「そう……だよね……レヒト君はあんなに強いのを倒せるもんね……」

「そうじゃない。もう十分なんだ、お前が作ったものを食べなきゃ俺はまともに戦えない……だから良いんだ……お前を失うことはできない。身勝手かもしれないが……俺はお前がいないと駄目だ、前線になんて出ないで欲しいんだ」


 ヒーラーが前線に出ようものなら即蒸発するのがゲーム後半のレベルだからな、中途半端な戦闘能力をつけて隣に居られても困る。


「だから……お前はそのままでいい。そのままで良いんだよ」

「……レヒト君のばかあああああああああああああああああああ!!!」

「ええっ!?」


 あっぶねえ!? えげつない突きを打つな!?


「なんで!?」

「分かってよ!!」

「ええ!?」


 まずいまずい!? ラッシュが速いぞ……!? 避けきれねえ!?


「違う……俺のデバフが切れかけてるのか……」

「聞いてるの!?」

「うおっ!?」

「ねえ!!」


 やっべえ……目が霞み始めた……疲労が限界か……あーあ……言葉を間違えたのが運の尽きか……


「なんだっ!?」

「きゃっ!?」


 空間が光に包まれた……そう思った瞬間には既に事は終わっていた。


「……嘘だろ」


 目の前に広がるのは広大な湿地、そして馬鹿でかい木。それが意味するのは一つだった。


「グララ・ガラ大湿原……最初のダンジョンじゃねえか……」
















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