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~結末A~

『―――――――――ッ!!』


鳴り響く乾いた破裂音。

腕を突き抜ける衝撃。

胸元に倒れ込んでくる重さ。

その全てが、俺に〝終わり〟を感じさせた。


そんな俺の周りをゾンビが取り囲み距離を詰めてくる。

だが、そのような事は どうでも良かった。

俺の胸にあるのは、ただ明菜を苦しめずに逝かせてやれた事への安堵だけだった。


「大丈夫……一人にはせないから……」


そう言いながら、俺は自分の頭に銃口を突き付ける。

恐怖も後悔もない……ただ穏やかな敗北感があるだけだった。


「叶うなら、もう一度だけ お前の傍に…………」


ささやかながらも何より強い思い。

その願いが果たされることを夢見ながら、俺は最後に一度だけ明菜の唇に口付ける。


これで、もう思い残すこともない。

俺は小さく静かに微笑むと、そのままトリガーを―――




『―――――――――ッ!!』



 ~~~3日後・とある研究所~~~



「―――彼が報告書にあった遺体か?」

「はい。例の西側の防衛拠点で見付けたそうです」

「ふむ……確かに、どこにも襲われた形跡はないな」


そう呟く男の目には〝彼〟の亡骸。

しかし、不思議なことに命を落とした後にゾンビ達の襲撃を受けた形跡が無かった。


「左右の腕に噛まれた痕はあるが……紫斑が浮き出ているところを見ると数日前のものだろうしな」

「はい……しかし、他の外見的特徴から見るに、感染者ではありますがゾンビ化はしていないように見受けられます」

「うむ、それは間違いないだろう」

「では、何故なのでしょう? 例え感染者でもゾンビ化していなければ確実に襲われるのに……」

「詳しくは調べてみないと分からん。だが、推測するに彼は人間として己を留めながらも、ゾンビ達に敵として認識されない〝何か〟が備わっていたのだろう」

「では、それが解明できれば……」

「ああ、我々がゾンビに怯える日々は消え失せることになる」


そう語る男の瞳には希望に輝く光が宿っていた。

そして、その願いが叶うかのように、この後、彼の上着から〝例の薬〟が発見されることになる。


最新鋭の抑制剤と彼の身体の中で起こった不可思議な化学反応。

そこに焦点を当てた研究は数ヶ月の時を要したものの身を結ぶことになる。


だが、彼等が取り戻される人間の日常を見る事はない。

死すれば全てが終わり―――それは変えられない事実だからだ。


だが、その事実を誰も知る事なく、後の人々は安寧とした日々を得ることになる。

それを誰よりも強く望んだ二人の命を顧みることもなく―――

これで完結となります。

最後まで お付き合い頂きまして、ありがとうございました!

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