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紅羽妖録  作者: みお。
第1章
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第2話 非日常への入口

もう一度連投


 「よし、本日の朝練はここまで!片付けをした後は、各自ホームルームに遅れないようにしろよ」


 「「「ありがとうございました!」」」


 私たちの目の前にいる、道着を纏ったやや白髪混じりの男性。

 剣道部顧問、鈴木陽一先生に部員全員で一礼をして本日の朝練は終了となった。

 うちの剣道部は男女混合で構成されているため、女子でも男子部員と全く同じ練習をこなさなくてはならない。

 まぁ、何が言いたいのかって


 「疲れた……。」


 もちろん強くなるための練習だから、しんどいのは当たり前なのだけれども。それに男子でも音を上げる練習をこなせるようになれば、試合当日の長丁場でスタミナ切れになることもない。

 ……が、理解はすれど、納得はしていない。

 多分日本中の運動部に所属している学生みんなが思ってることだとは思うけど。ごめん先生。


 「那央、早く着替えに行こう!」

 「美希!うん、すぐ行く!」


 高校に入って同じクラス、そして同じ部活にも所属している友人、園田美希に声をかけられ駆け足で彼女の元へ向かう。

 運動部らしく短く切りそろえられたショートカットと、女子にしては高めの170cmある身長が特徴の子だ。

 私も165cmあるから女子の中では結構大きい部類だけど、やっぱり160cm台と170cm台の差って大きい。威圧感が違う。

 ニコッと笑うと、思わず女の私でもドキドキするような整った顔なのだが。


 「今日も朝練キツかったわね……あ、そういえば今日那央の誕生日だったよね?おめでとう」

 「えっ、美希私の誕生日覚えてたの?わーっ、嬉しい!ありがとう!」

 「いや、割と前からしつこいくらい『私の誕生日、5月なんだ〜』的な話してたじゃない。嫌でも覚えるわ」

 「…そうでしたっけ?」


 うわぁ…これは恥ずかしい。

 自分では「誕生日?まぁそんなに浮かれなくても大丈夫ですよ?」くらいの態度でいたつもりだったのに、思いの外浮かれていたらしい。

 「まぁいいんじゃない?年に一度の記念日なんだし。」なんてフォローなんだかそうじゃないんだかわからないコメントも美希から頂き、羞恥心に悶えながら一緒に更衣室へ向かう。


 練習をしていた学校の道場から出て、更衣室へと続いている外の渡り廊下を美希と一緒に歩いていると…


 「……ん?」


 ふと、渡り廊下から見える中庭の方を見てみると藤色の着物を着た上品そうなおばあさんが立っていた。

 見た目は……70代くらいだろうか?こちらではなく、どうやら校舎の様子を伺っているようだが……孫の様子を見に来たとか?

 いや、それだったらあんなところにいないで客員用の入口から入って直接先生に孫を呼んでもらうか、堂々とそこから孫に会いに来るはずだ。


 「美希、あの人なんであんなところにいるんだろう?」

 「?あの人って?」

 「ほら、あそこの中庭に立ってるー……あれ?」

 「……中(庭)に誰もいませんよ?」


 あ、そのセリフ聞いたことある……じゃなくて!美希の方を向いている間に別の場所へ移動したのか、中庭にいたはずのおばあさんはいなくなっていた……まるで最初からそんな人なんていなかったかのように。


 「おっかしいなぁ……?藤色の着物を着た、上品そうなおばあさんが中庭から校舎の中を覗いてたんだよ」

 「それなら生徒の関係者じゃないの?……あ、でもそれなら客員用の入り口から入るから中庭には行き着かないよね?」

 「うん。だから私も変だなぁって思って美希にも見てもらおうとしたら、いつの間にかいなくなってて……」


 「「……」」


 そのまま二人で早足でその場から離れていく。

 こんなところで油を売っていたらホームルームに間に合わなくなってしまう。

 うん、私は何も見なかった!


 「那央……16歳の誕生日を迎えると共に幽霊を見ることができるようになるなんて……恐ろしい子!」

 「やめてよー!!見なかったことにしようとしてたのに!!」


 ギャーギャー二人が騒ぎながら更衣室へ向かった後、"誰もいなかった"はずの中庭には、那央が見かけた藤色の着物を召した老婦人がある校舎の一点を見つめていた。そして……


 「……見つけた。」


 ニィッと、およそ人間らしくない笑みを浮かべたその老婆は、文字通り霧のように中庭から消えた。


次回の投稿は未定ですが、頑張って続けたいです。

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