第2話 最悪と誕生日
遅くなりました!
はくです!少しずつ直していきますので暖かく見守って下さい。
「守らなくては」と強く感じた。
武術の心得などない。昔、学生時代、友人に「出来る男はカッコイイぞ」などと騙されて、ダンスを練習した事があった程度だった。
喧嘩などもした事のない、俺に一体何が出来るのか。
頭の片隅で冷静に分析している自分が居た。
そして、当然の様に獣の注意は、突然現れた俺に集中している。
「君たち逃げなさい!」
更に大きな声で子どもたちに向かって言い放つ。
そして、その群れの中でも他よりも僅かに大きい、リーダーらしき脅威が俺に向かって咆哮を上げる。
来る!
素早く後ろに下がりながら距離を取っていた。自分の前に二頭の獣が飛びかかってくる。
俺は無条件反射という本能に従う様にして、右腕を振り抜いていた。
グニャリと、嫌な感覚だけが腕を伝ってくる。
俺の握ってた拳は獣の頭を的確に捉えていた。
「よし、行ける」と思いながら、そのまま終わらせると、もう一頭へと振り返る刹那だった。左側からすでに、もう一頭が自分の前に大きく口を開きながら、飛びかかって来ていた。
なっ!? そして左腕に激痛が走る。
噛まれたのだ。すぐに振り払おうとするが、噛まれている所を見てもかなり深く噛み付かれている。
すぐに左足で獣の腹を蹴り上げた。普段の俺なら、絶対に出せないスピードで獣を蹴り飛ばす。
獣は苦しくなったのか、もういいと判断したのかは分からないが、俺の腕から口を離した。
不慣れな行動により体勢が崩れ倒れ込む。それでも、自分の視界の端には二頭の獣を見続けていた。
右足を付き痛みを堪える為に、ぐっと歯に力を込める。強く噛み締めながら正面を見ると、二頭の獣がこちらを敵視しながら見ていた。
俺はここまで良くやった、と素直に自分の行動を褒める。
左腕はしばらくは動かす事など出来ないだろう、と冷静に判断する。いや、このままだと俺はすぐにでも、この獣の腹の中に収まる事だろうと確信していた。
「...お姉ちゃん...そろそろ、いいよね?」
背後から幼く、そして、恐ろしく可愛いい声でそう聞こえた。俺はすぐに背後を振り返る!
「なん…で…!?」
命を張って作った、たった数十秒間でも、君たちが逃げる為にと…
(はっ…。犬死じゃないか。)
俺はすぐに無駄だったことを悟る。
「そうだね!私たちも遊ぼ!」
この場に似合わない、天真爛漫な可愛らしい声とセリフが聞こえた。
何を言っているのか、何が起こっているのか、全てを理解する為には時間が必要だった。
「じゃあ、いこ?よーい…ドンッ!」
可愛い声とは裏腹に、目にも止まらぬ速さで駆け抜けて行く。
「あーずるいよ!」とまるで鬼ごっこでも始めるかの様な気楽さで走り出した2人はすぐに獣を捉えていた。
ドゴッという鈍い音が響く、木や土に出来る大量の血の後そして、キャンキャン悲痛に鳴く犬の声が森の奥にまで木霊していく。
そこに似合わない幼い子達の笑い声を聞き、俺は力が抜け地面に腰を落としてしまった。