9 白黒乱舞
初の戦闘です。拙いかもしれませんがどうかよろしくお願いします。
ボクは現在、学有第三アリーナの控え室にいる。
控え室と言ってもアトラスを起動させられる程に天井が高く作られている。
「出よ『凍華』っ!」
そう言ったらネックレスが光の粒となってボクの周りを回り始めた。その光がボクを包み込むと、一際強く発光た。それと同時に体に収束が始まり首から下を装甲が覆い背中には、機械で作られた翼が広がっている。
光に包まれてから失われていた体の感覚が少しずつ戻ってきて、視界の中に幾つものホログラムウィンドウが浮かんできた。
「ん?第一次形態変化?ってなに?」
そう言ったら新しいホログラムウィンドウが出てきた。
第一次形態変化は、カイゼリン・アトラスのみが可能なその人の体に合わせた無駄のない形状に変化させる事。と書かれている。
ボクは、説明を読みながら控え室からアリーナへと向かった。
「さすがですわね。もう既に第一次形態変化を終えているとは。」
そう言ったのは、黒を基調として所々に赤や金色を使った機体を体に纏ったエフィー・ブルームフィールドだった。
<展開可能装備:天羽々斬>
「展開!『天羽々斬』」
ボクの目の前に光の粒子が収束していって一本の刀となった。刀身や柄が白を中心として使われている刀だ。
「それがあなたの武装ですか。では、わたくしも!展開『フェイルノート』」
エフィーの装備は、狙撃銃のような形状の銃だった。
「いきますわよ。」
「うん!」
エフィーが動き初めたのを皮切りに、ボクは背中に展開された翼に使われている反重力機構によって空へと舞い上がった。
周囲のスタンドでボクたちの戦いを見ていた生徒達がオオーと盛り上げている。
ボクは、限界まで高度を上げてから急降下によって機体の限界速度にさらに重力を重ねて速度を上げエフィーの操る『フェンリル』の直上から切り掛かる。
全てのアトラスには、完全防御機構と呼ばれるものが存在し絶対に相手の攻撃を受け止めるシステムで、パイロットに被害が及ぶ場合のみ発動しパイロットを守ってくれるのだ。そのかわり、どんな攻撃でも耐えられる様に途轍もない量のエネルギーを消費してしまうため完全防御機構の及ぶ範囲に攻撃の意図を持って少しでも触れさえすれば一瞬にして相手を戦闘不能に出来る。しかし、そこにたどり着く前に防御シールドが展開されておりそれを貫通する威力がないと完全防御機構に触れる事も出来ない。
だから、ボクは防御シールドを貫通出来る威力を乗せるために急降下で威力を伸ばしたのだ。
音を置き去りにしてしまうような速度で、彼女の防御フィールドを貫かんとした一撃はアトラスと感覚を同期したパイロットには、木の葉の様に降ってくるにも等しく感じられる程にゆっくりと感じられた。
そのため、エフィーはすぐに横に避けてこちらに銃口を向けていた。
銃口が火を噴く瞬間にボクは、横っ飛びに回避しすぐに高空へと舞い上がった。今回は、エフィーのカイゼリン・アトラスの『フェンリル』もボクの『凍華』に続いて舞い上がる。今回は、空中で停止し『フェンリル』と向かい合う。
今度は、重力ではなくて反重力機構と脚部と背中に搭載されたスラスターを用いて加速した。このスラスターの出力は、並みのジェット機の数倍の速度を瞬間的にもたらす事が出来るのだ。さらに、腹部や足の裏などの至る所に付いた他のスラスターによって急停止や急上昇などの変則的な飛行を可能としている。しかし、『フェンリル』は、銃器をモデルとした武装であるため『フェイルノート』の一発ずつの威力を低下させて連射を開始した。
「くっ!」
ボクは、感覚を同期した『凍華』の機体を所々かすっていく高純度のエネルギーで作られた弾丸が痛みをもたらしている。ボクの視界の隅に映る『凍華』のエネルギー残量が少しずつ減少していた。
「こうなったら!」
ボクは、反重力機構と足の裏のスラスターを使用して高空へと舞い上がり自分の後方に設置されているスラスターを全て限界まで使って加速させた。重力によってさらに加速した『凍華』は、音と残像を残して轟音とともに『フェンリル』に向かった。
その刹那に聞こえた声にボクは、急激に制動を掛けた。
「展開『ベガルタ』」
そう言った彼女は、右手を上空に掲げた。先ほどまで『フェイルノート』を持っていた右手には、新たにベガルタと呼ばれた漆黒の片手直剣に変わっていたその剣先は先ほどボクが急制動をしなければ首が通過するであろう地点に立てられていた。
「さすがですわね。」
「そっちこそ。」
「ではっ!まいります。」
ボクの刀が描く白い残像とエフィーの剣が描く黒い残像が途轍もないスピードでぶつかり弾きせめぎ合い、ボクたちが戦っているアリーナに剣戟の奏でる協奏曲が響き。剣舞の様に優雅に白と黒の残像が舞うこの戦闘が後に白黒乱舞としてこの学園の歴史に語り継がれる事をボクらは知る由もなく数日後にこの恥ずかしい決闘の名前に悶えるのはまた別の話。
数分間に渡る決闘は、同時に両者のエネルギーが尽きた事により引き分けとなった。
停止した二機のカイゼリン・アトラスは、光の粒子となって小型化すると。勝負が終わった事に漸く気づいた観客は、アリーナどころかこのサントルをも揺らす大歓声に包まれた。サッカーでブラジルの街が揺れるって言う事を理解出来た気がする。
観客もいつの間にかほぼ全校生徒が集まっていそうな程だった。まさかの学園長や生徒会長等の学園のトップまで来ていた。
その時、先ほどの戦闘で体を酷使しすぎたためか、意識がテレビの電源を切ったかの様にプツンと切れた。
読んでいただきありがとうございました。
次回は、閑話を挟んでその後にしたいと思います。
大樹君の出番が無い気がするので大樹君視点で書きたいと思います。