6 アンブレーム学園
「大樹さん握手してください。」「お願いします。」「付き合ってください。」「大好きです。」
ボクは今モノレールに乗ってアンブレーム学園へと向かっている。
しかし、隣に座る大樹の周囲だけは、どこかのアイドルの握手回か!と突っ込みたくなるような光景だった。
「大樹君と握手出来る券三百円だよ〜。」
おい君、何ちゃっかり稼いでいるんだ。
そんな感じで、大樹の周りには、大勢の女子たちが密集している。モノレールは、この車両だけ満席で他の車両はがらがらだった。
ボクは、あまりの熱気に蒸し暑さを覚えた。エアコンなんてただの風を出す箱と化している。
「じゃあ、大樹ボク前の車両に行くね。」
「ちょ、待ってくれ〜熱くて死ぬ。」
「頑張って。」
この車両から逃げようとするボクを止めようとした大樹にグッ!とサムズアップしてから進んでいった。
ボクが前の車両に行くと、後ろから数人、いや、数十人の女子がぞろぞろと付いてきた。
ボクが席に座ると皆がボクを見ながら各々がいろんなところに座った。
一人の女子はボクを抱えて下に座ってボクを膝の上に座らせた。
子供扱いされて恥ずかしい。多分ボクの顔は、リンゴになっている事だろう。
すると、周囲の人がバッとボク、否、僕を膝に乗せている少女に話しかけた。と言うより叫んだ。
「抜け駆けはんた〜い。」
「早い者勝ちよ。」
そう言って僕を膝に乗せた少女は、ボクの腰まで届く長い髪を手で梳いた。
「ひゃっ!」
髪を突然触られてびっくりしたボクは、思わず変な声を上げてしまった。
「か、」
「か?」
『可愛い〜!』
全員が、同時に叫んだ。
その時一番前の車両からぬっ、と梵先生が現れた。
「お前ら、五月蝿い。」
先生は、静かに口を笑みにゆがめて言った。
その姿に全員が冷や汗を滝の様に流していた。
だって、先生目が笑ってなくて額に青筋が浮かんでいるんだもん。
『ご、ごめんなさい。』
「サントルに来て浮かれているのは解るが、交通マナーは守れ。」
『は、はい』
全員が、しゅん、となりながら返事をした。
ちょうどその時モノレールが停車した。
「着いたか。降りるぞ。」
そういって、先生は降りていった。
モノレールから降りて最初に思ったのは...
「暑い。まだ、春なのに〜。」
その声を聞いた東雲先生は、苦笑いを浮かべて言った。
「赤道上にこの都市はあるからずっと夏なのよ〜。さあ、少し歩いたらアンブレーム学園ですよ。」
◇
「うわ〜。」
ボクたちは、アンブレーム学園の校門前に来ていた。
アンブレーム学園は、アトラスを運用するからものすっごい巨大なグラウンドが沢山あるのだ。
正面には、四階建ての巨大な校舎があり、その後ろにはどこかの高級ホテルです。といっても納得してしまいそうな寮が三棟もあった。
「今日は、寮の部屋に案内しますね。認証カードは、後日になるので今日は普通の鍵を使ってくださいね。じゃあ、この紙の中の部屋番号の横に書かれている名前を見てからこっちに来て鍵を貰ってね。」
そこには、○-○○と書かれている横に名前が二人ずつ記入されている。どうやら、二人で一部屋のようだ。
ボクの部屋はっと。あった、ちゃんと春夏冬 愛留の名前があった。もう一人はえーと立花 梨里奈さんだ。だれだろう?
「あ!愛留ちゃんと一緒だ!」
ああ、僕を膝に乗せた人だ。なんか快活で元気そうな感じの娘だ。
あれ、なんか一部の人、と言うより大半の人ががっくりと膝をついている。なんで?
「よろしく、立花さん。」
「う、うん。」
あれ?さっきまでの明るい立花さんはどこに消えた?まさか偽物か?なんか、顔を赤くして下を向いてる。
「ど、どうしたの、かぜ?」
ボクは、彼女の顔を覗き込んで言った。
そしたら、バッと顔を上げた。
「な、なんでもないよ!うん、なんでもない!」
「そ、そう。よかった。」
あまりの剣幕に言葉を詰まらせながらも、何もなかったんだ、と胸を撫で下ろした。
「......鈍感美少女...」
「合法ロリ...」
うん?誰かなんか言ってたけど何?何でみんな頷いているの?
あっロリって言ったロリって!絶対違う!
「は〜い」
東雲先生が手を叩きながら言った。
「じゃあ、今日は此処で解散。夕食は、寮の一階の食堂ね。お風呂は、部屋か一階の大浴場にいってね。」
そこで、大樹が手を挙げた。
「せんせー。俺はどうしたらいいんですか〜。」
「う〜ん。京くんは、男の子だもんねぇ一人部屋には、小ちゃいけどお風呂があるしトイレもあるかな。じゃあ、部屋を一人部屋に変更しますね。」
「は〜い。」
「じゃあ、今度こそかいさーん。」
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