1 プロローグ
出来れば早めに更新していきたいと思います。
ボクは、中学生までこの日本で生活していた...
そう、生活していたのだ。
ボクは、男にしては小柄で中性的な顔立ちをしていた。
そのため、からかわれる事はあっても、心から話せる友人は一人しかいなかった。
彼は、ボクの小学校からの友人でよくゲーセンに行ったりしていた。
今日も家から十分程のゲーセンに行こうとしていた。
ゲーセンまでの道程は、目を瞑っても行ける程に頻繁に通っていた。
今日も友人と合流し大きな十字路に向かって信号待ちを雑談しながら過ごして、青になった瞬間に友人が駆け出した。
ボクが後を追いかけると、彼のもとに一台のトラックとそれを追う数台のパトカーの姿があった。
どうやら、トラックの運転手は薬物中毒者らしく、猛スピードで信号を無視しながら突っ走っていた。
なぜ、薬中か分かったかって?
お巡りさんが叫んでいたからなのだ。
トラックは、速度を緩める事なくこちらに走ってきた。トラックの進む先には、美少女がっ、て事もなく誰もいない所を通過するコースだった。
ボクの前を走る友人がトラックの逃走劇に驚いて足を止めた。彼の立ち止まった所は、トラックの車線から外れていた。
ボクは、思わず胸を撫で下ろした。
友人に追いついてから、息を整えていると、トラックの前輪が突如としてパンクを起こした。
後輪だけが回り続けてボクらの目の前にトラックの側面がやってきた。ボクは、このままでは、二人ともトマトケチャップをまき散らしながら死ぬと思って、せめて彼だけでも守りたい、と正面で茫然自失とする友人とトラックの間に入ろうと走った。馬鹿にされてきた忌々しかった小柄な体躯が功を奏してなんとか彼とトラックの間に割り込む事ができた。
その結果、友人はボクの体がクッションになってなんとか一命を取り留めたらしい。
らしい、と言うのはボクは頭を爆散させて即死したからだ。
即死したボクは、暗転した視界の中で浮遊感を感じながらぼー、っとしていた。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
ふと、暗闇が開け白く眩しい自然豊かな公園が現れた。
其処には、一人の金髪の美少女がブランコに乗っていた。
あまりの美しさに見入っていると、突如、彼女に話しかけられた。
「ありがとう。」
「えっ?」
彼女は、突如としてボクに感謝の言葉を贈ってきた。
あまりにも驚いたボクは、思わず素っ頓狂な声を上げた。
「あ、あのぅ。ボク何かしましたか?」
おそるおそる、彼女に質問した。
彼女は、頭に無数の疑問符を浮かべているのを幻視するような表情で首を傾げた。
その後、納得する様に頷いた。
「そうか、説明してなかったね。私は、神界連合世界管理部の地球支部を務めているキューよ。今回は、地球の未来を守ってくれてありがとう。」
「えっと...キューさん。ボクそんな大した人物じゃないですよ。地球の未来とかそんな大仰な。」
そう言ったら、彼女は首を大きく横に振って否定した。
「あなたが先ほど命を救った少年は、将来二つの大国の核戦争を仲裁する事になる英雄なの。今はただの一般人だけど。だから、お礼をさせて?」
彼女はそう言って上目使いでボクを見てきた。
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきますね。」
「本当?嬉しい!じゃあ、あなたが好きな物はなに?ああ、もちろん、空想の話でもオッケー。」
「ロボット。」
ボクは、即答した。実は、ボクは生粋のロボット好きでなのだ。ガ○ダムやエヴァ○ゲリオンは、アニメを何十周もする程なのだ。
そんなボクは、迷わずに答えたのだ。
「そうかぁ。ロボットか〜。じゃあ、この世界に最適化させて......」
彼女は、何か小さな声で呟きながら考え事をしている。
「よしっ!じゃあこの世界にきーめた。この世界には、アトラスと呼ばれるロボットを使って戦う競技があるからね。適合し易いように処置しておくから、後は、自力で頑張ってねー。」
ボクの足下に幾何学模様の円が浮かび上がった。その円が、一際強く発光すると、ボクの意識は深い闇に誘われた。
◇
暗闇に沈んだボクの意識は、突如起こった激しい痛みによって強制的に覚醒させられた。
記憶の濁流が、激しい痛みを発しながら脳内を駆け巡り続けていた。
チカチカと白く明滅する視界の中、ボクは、必死に耐えた。
痛みは、自然と引いて早鐘を打っていた心臓の鼓動も落ち着いてきた。
次第に鮮明になる意識の中で、顔を上げると、不可思議な二つの小山が視界に入った。
「んぅ。なんだったの?」
自分の声に違和感を感じた。
声音が高いのだ。今までも男にしては、高かったがもう少し低めな声だった。
ボクは、視線を天井に向けた。
「知らない天井だ。」
そう言っては見たものの、この天井に強い既視感を感じるのだ。
周囲を見渡しても見慣れた風景だった。
ふと、姿見にモデルも裸足で逃げ出す程の美貌を備えた黒い瞳をした茶髪の美少女が映ったのだ。
身長150程の小柄な少女だった。
ボクが、右手を掲げると少女も右手を上げた。手を振ると向こうも手を振り返した。
これは、もしかして。
「お、女になってるー!」
そう叫んだ声もやっぱり女性そのものだ。
何故自分が女性になっているのだろうか?
そう考えていたら、廊下を走ってくる音が聞こえてきた。ぱたぱたぱた、どんっ!あっ、こけた。
暫くして、扉がバーン、って大きな音を立てて開いた。
「愛留、体調良くなったの?どうしたの?大声出して。まさか泥棒っ?この世界で女性二人の家に入るとは命知らずねぇ。さぁ、出てきなさい!」
「お、お母さんやめてよ。違うから!」
そう、走ってきたのはボクのお母さんの、春夏冬 夕 だ。
ちなみに、ボクの名前は、春夏冬 愛留 で、十五歳だ。
女性二人の家に入るとなぜ命知らずかと言うと、この世界は、女性のみが人型戦闘機 アトラスに乗る事が出来るからである。アトラスは、使用者を選ぶと言われており、適合率によってその人相応のアトラスが選ばれる。男性は、すべてのアトラスの適合率がゼロなのだ。なので、この世界では、女尊男卑が常識となっている。何故こんなにこの事がすらすらとでてきたか不明だが、愛留として生きてきた十五年間の出来事を自分の事の様に、いや、文字どうり自分の事なんだけど、思い出せるんだ。
そして、この世界は、アトラスの存在以外は、地球と殆ど変わらない。ボクがいるのは、日本だ。今は、三月で中学校を卒業してまだ数日だ。
四月からは、アトラスに乗るために太平洋上に建設された国際人工島 学園都市サントルに行く予定なのだ。
学園都市サントルは、五つの学園によって構成された直径1000キロにも及ぶ超巨大人工島なのだ。
此処では、世界最大の催しであるアトラスの世界大会ギッフェル・カップが行われる。
其処で優勝する事を夢見て、全世界の少年少女...否、少女達が集まるのだ。
「さぁ、体調良くなったならご飯にしましょう。」
「うん。」
ボクは、さっきの剣幕はどこに行ったのか、おっとりした表情をしたお母さんの後に続いた。
お母さんの変わり身の早さに、ボクは戦慄した。女性、怖い。
ゆっくりと、ベッドから立ち上がると、今までと違う視線の高さに少しふらふらしながらも部屋を出た。
読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字ありましたら、教えてください。